『傑作ミステリートリック23』
著者:推理作家点心会
永岡書店 コスモ文庫
発売:1994年3月10日初版
定価:500円(初版時 税込み)
事件発生!
しかも、とびきりの難事件です。すぐに、現場に急行し、トリックを暴き、犯人を逮捕して下さい。
あなたの、パートナーとなるのは、警視庁の若手、芥川隆之介刑事と、与謝野亜紀子刑事です。
芥川は長身の好青年ですが、ちょっとドジなところがあり、推理も多少、的を外しがち。“名刑事”というよりも、“迷刑事”の言葉の方が合っているかもしれません。亜紀子は警視庁内でも評判の美人で、事件を追う執念はなかなかのもの。
二人とともに、事件現場の状況を詳細に調べ、関係者の証言をよく吟味して行けば、どこかに、きっと、事件を説き明かす鍵が隠されていることに、気づくでしょう。
そして、捜査結果を、上司の江戸川蘭報警部に報告して下さい。
彼は、“警視庁の知恵袋”の異名を取る博識の警部で、どんな難事件でも、たちどころに解決してしまいます。
はたして、江戸川警部の推理は、あなたの推理と一致するでしょうか……。
あなたは、名刑事になれるでしょうか……。
事件には、それぞれ、A、B、Cの難易度表示がついています。AよりもB、さらにCの方が難解になっています。
事件を解くコツは、刑事がよく使う“現場百遍”という言葉にもある通り、事件現場をよく見ること――、要するに、本文をよく読むことです。
著者の『推理作家点心会』は、巻末の紹介にもある通り、現役バリバリの若手推理作家の集まりです。
どの謎にも工夫が凝らしてありますから、よく読めば、事件の背後に秘められた謎が見えてくるはずです。
さて……、のんびりしてはいられません。こうしている間にも、犯人はどんどん遠くへ逃げて行ってしまいます。
早く、あなたの力で、真犯人を捕まえて下さい!
【目 次】
ステージ1 犯人はだれだ!
ステージ2 この謎が解けるか!
ステージ3 奇想天外殺人事件に挑戦!
ステージ4 世紀末の犯罪はどこまで?
執筆者は秋月達郎、いちかわ・さとし、加納一朗、夏野百合、牧南恭子、瑞納みほ、若桜木虔の7名。
クイズというよりは、ミステリー・トリック集という言葉の方がピッタリ来るだろう。一応読者がトリックを見破り犯人を推理する形にはなっているが、明確に“問題””解答”という言葉が出てくるわけでもなく、ページが別れるわけでもない。クイズというには手がかりが少なすぎるものもある。やはりトリック集である。
クイズにこだわっていないせいか、文章がわりとのびのびと書かれており、クイズ形式によく見られるようなぎこちなさが消えている。特に考えず、時間つぶしに読むにはちょうどいいだろう。若桜木の問題のように、物理学・科学的トリックを用いているようなものなどは、知識が必要となり、解く楽しみが失われる。
しかし、中堅・ベテランが半分を占めているのに、“現役バリバリの若手推理作家の集まり”はないだろう。それに、加納一朗ほどの作家がなぜこの点心会に入ったのか、疑問である。
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