『怪奇推理ミステリー事件ファイル』
10のホラー・トリックを見破れ!!
著者:芦川淳一、加瀬正二、柴野直子、夏野百合、矢島誠、矢矧零士
芦川淳一:1953年東京都生まれ。早稲田大学卒業。出版社勤務後、ジュニア小説、ホラーおよびミステリー漫画原作、児童図書などを執筆。
加瀬正二:1962年三重県生まれ。早稲田大学卒業。出版社に勤務しながら、ライター兼作家として雑誌、文庫本等に執筆。
柴野直子:神戸市生まれ。大阪外国語大学卒業。1985年、星新一ショートショートコンテストで優秀賞を受賞。
夏野百合:栃木県生まれ。杏林短期大学卒業。臨床検査技師のかたわら執筆活動をスタートし、主に短編推理の世界で活躍している。1995年、TBS主催トリック公募で最優秀賞を受賞。
矢島誠:1954年東京都生まれ。出版社勤務を経て1988年デビュー。第29回江戸川乱歩賞候補、第8回横溝正史賞候補。ノベルスミステリーを中心に執筆。
矢矧零士:1961年生まれ。秋月達郎との共著で、戦記シリーズを中心に執筆。
永岡書店 コスモ文庫
発売:2000年7月10日初版
定価:486円(初版時)
謎と恐怖……。
それは、ときには表裏一体のものに見えます。
たとえば、夜中に玄関の呼び出しチャイムが鳴ったのに、ドアを開けてみたら誰もいなかった、というような場合……。
どうしてそんなことが起こったのか。原因が分からなければ、その謎は、私たちの心の中で恐怖という形となってふくらんでいくことでしょう。
仲間に引き込もうとして幽霊が呼びにきたのか。それとも、得体の知れない怪物が侵入しようとしているのか……。
ひとたび灯った恐怖の炎は、どんどん大きくなっていき、やがて、夜を迎えることさえ怖くなってしまうかもしれません。
けれども、謎が解けてしまえば、恐怖も消えてしまいます。
チャイムが鳴ったのは、回路で結露が発生して電流が流れ、スイッチを押したのと同じ状態になったためだった、ということが分かれば、幽霊も怪物もあっさりといなくなってしまいます。
ところが、ときには、謎の解明が逆に新たな恐怖の触媒になることもあります。
たとえば、夜中の呼び出しチャイムが、実は、こちらに悪意を抱いている隣人の仕業だったと判明した場合……。
今度は、現実的な恐怖が襲ってくるのです。
本書は、謎解きの部分を袋とじにした、画期的なミステリー作品集です。しかも、謎と恐怖をとくに増幅させてあります。
「ダイイング・メッセージ」、「密室」、「アリバイ」、「殺害方法」といった謎が、恐怖をともなって読者のみなさんの前に現れるのです。
謎をとく手がかりは、本文中のどこかに、必ず隠されているはずです。恐怖に耐えながら、本文を注意深く読んで、その手がかりを見つけだしてください。
でも、見つけだしただけでは、手がかりはあくまでも手がかりでしかありません。
(中略)
このように、発見した手がかりに、ちょっとした推理を働かせて、事件の真相を見抜いてほしいのです。
うまく謎が解明できたと思ったら、袋とじの部分を、カッターナイフなどを使って開封してください。すべての謎は、そこで解き明かしてあります。
あなたの推理は正しかったでしょうか。
もし正しければ、あなたの推理力は、かなりのレベルです。自信を持って、別の作品にチャレンジしてください。
ただし、謎は解けても、恐怖がともに消えてしまうかどうかは、分かりません。謎が解けたとともに、今度はより現実的な恐怖があなたを襲ってくるかもしれないのです。
その点を心して読んでください。
短編10本を収録した推理クイズ集。この頃はホラーがブームだったのか、ホラー仕立ての推理クイズに挑戦という珍しい形をとっている。とはいえ、あくまで物語仕様がホラーになっているというだけで、クイズ部分は通常と変わらない。しかもホラー部分との整合性を取ろうと努力(しているのか?)しているためか、クイズ部分は肩すかしを食うものやとても推理できないような独りよがりのものもあるので、クイズとしては面白くない。試みは買うが、成果は今ひとつといったところだろうか。
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