『名探偵法務須の謎解き推理事件簿』
著者:矢島誠
1954年東京都生まれ。出版社勤務を経て1988年デビュー。第29回江戸川乱歩賞候補、第8回横溝正史賞候補。ノベルスミステリーを中心に執筆。
廣済堂文庫
発売:1998年5月1日初版
定価:524円(初版時)
「よう、せいろく。元気か?」
「おいおい。その“せいろく”というのはやめてくれないか。そんな呼び方されたとあっては、偉大なる曾祖父シャーロック・ホームズに申し訳ない」
「分かった、分かった。
「おや、ずいぶん素直だな。さては、また、難事件を抱え込んできたな。警視庁捜査一課の名捜査員・江戸川小五郎殿が音を上げるほどとの難事件とは、さて、いかなる事件か?」
「いや、いや。べつに、音を上げたわけじゃないさ。新宿の超高層ビルを眺めながら暇にしている名探偵に、話のネタを提供してやろうと思っただけだ」
「なかなか強気じゃないか。しかし、この法務須探偵事務所は、おかげさまで依頼も多くて、ボクも決して暇にしているわけじゃない。今も、ちょうど、出かけようと……」
「ちょ、ちょっと待て。もう少し話を聞いてくれ。非常に難解な事件なんだ。せいろく、いや、シャーロックも、きっと興味をそそられるはずだ」
「よし、そうまで言うのなら、相談に乗ろうじゃないか。どんな事件なんだい。早く、話してくれ!」
【目次】
春の殺意
夏の惨劇
秋の疑惑
冬の死角
序文にもあるとおり、警視庁捜査一課の江戸川小五郎が抱えた難事件を、名探偵法務須が解決するという設定の、ショートミステリーパズル30問を収録。その他の登場人物に、小五郎の甥である耕介、耕介のライバルである森亜貞司などがいる。。ここまで登場人物の名前がべただと、呆れるのを通り越して笑ってしまう。
クイズは、過去のトリックを借用したりアレンジしたりしたものと、オリジナルと思われるトリックを利用したものが混合している。ただオリジナルと思われるものは、あまりにも単純すぎるか、もしくは問題文からはなかなか創造できないような物理トリックが中心で、クイズを解こうという気にはならないものが多い。
時間つぶしにはなるだろうか。まあ、その程度だろう。
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