推理作家点心会『あなたに挑戦』


推理作家点心会『あなたに挑戦』
(廣済堂文庫)




『あなたに挑戦』 『あなたに挑戦』

 著者:推理作家点心会

 廣済堂文庫

 発売:1993年11月1日初版

 定価:500円(税込み、初版時)





 いかがでしたか。密室、ダイイングメッセージなど、各テーマから選りすぐった三十のオリジナル・トリック。
 きっと、お楽しみいただけたことと思います。
 最終ページにもあるとおり、『推理作家点心会』のメンバーのうちの七人で、この本を書き上げました。
 事件を追うキャラクターは統一してありますが、表現や描写に微妙な違いが出ているかもしれません。
 各トリックの解答欄の末尾に、作者名の一文字を付加しておきましたから、個性を比較する、というような読み方もできるかと思います。
 さて、『推理作家点心会』について、ここで、少し説明させていただきます。
 この会は、『ミステリー劇場』という類書を一人でまとめた若桜木虔さんが、まず秋月達郎さんと私に参加を呼びかけ、それに、新津きよみさんが加わり、さらに、何人かが応じ……、やがて、メンバーが十人近くになったところで、一つの定着した名前をつけて活動したほうがいいのではないかということになり、できあがったものです。
 “点心”とは、中国料理では、餅や饅頭などの簡単な摘まみものを意味しますが、そんな小さなものでも、彩り豊かに並べれば、立派な料理となるところから、たとえば、このようなトリック集の一つ一つの“点心”も、色とりどりに一冊分がそろえば、充分な満腹感を味わえる立派な“料理”になるのではないか……。さらに、同様な意味で、この世界では、新鋭や若手と称される私たちだって、何人かが集まれば、新しい力になるのではないだろうか……。
 そんな、いささかの自負も込めて、この名称としました。
 命名のアイデアは、この本には参加していませんが、秋月達郎さんによるものです。
(中略)
 最後になりましたが、この『推理作家点心会』の名前による、記念すべき第一号の作品を、企画の段階から、快く担当して下さった大西修氏に、心からお礼を述べさせていただきます。

(「あとがき」矢島誠より抜粋)


【目 次】
第I章 トリックを打ち破れ
第II章 アリバイを切り崩せ
第III章 密室の謎を解き明かせ
第IV章 現場の状況を読め
第V章 真犯人を探し出せ


 藍木訓、飯野文彦、篠田節子、新津きよみ、牧南恭子、矢島誠、若桜木虔の7人で執筆。推理作家点心会名義で出版された初めての作品である。
 警視庁捜査一課の北町武行と遠山小枝刑事がぶつかった難事件を、大岡悦善警部が解き明かす。登場人物は統一されているが、執筆者によって性格などが異なっているのはやはり問題がある。ある程度は話し合って性格付けなどを決定すべきではなかったのだろうか。こういう不統一感が、この会をただの寄せ集めにしか見えない要因のひとつである。
 トリックはオリジナルらしきものと、過去のミステリのトリックをアレンジしたものが半々ぐらいか。相変わらずすりクイズであることを無視したようなオリジナルトリックの出題は勘弁してほしいところだ。それと誰とはいわないが、過去のミステリのトリックを引用するだけならまだしも、自分が少し前に出版したクイズ本と同じトリックを使いまわすのはやめるべきだった。
 本作以後、推理作家点心会名義の本が数冊出版されるが、いつしかその名前は消えてゆく。


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