『犯人はだれだ?』
迷宮入りを阻止せよ
著者:矢島誠
(矢島誠:1954年、東京都生まれ。雑誌編集者を経て、1988年『霊南坂殺人事件』でデビュー。江戸川乱歩賞、横溝正史賞の最終候補まで残る。ミステリを多数発表している。)
白石書店 白石ノベルス ミステリー・チャレンジシリーズ1
発売:2000年12月20日初版
定価:857円(初版当時)
殺人事件は思わぬところに穴がある。どんなに綿密に計算されたトリックでも、どこかに綻びはあるものだ。本書の26話のショートミステリーは、いずれも迷宮入り寸前の難事件。難解な密室、暗号、ダイイングメッセージに、さあ挑戦してみよう。あなたは名探偵、それとも迷探偵?
主に警視庁捜査一課の萩原健司が手掛かり等を集め、困ったときは上司の石原裕太郎警部に相談し、快刀乱麻の推理で事件が解き明かされるというのがパターンである。
矢島誠は推理作家点心会を含め何冊か推理クイズ本を出しているが、つまらないものが多い。本書は単独で出されたものだが、半数は既存のトリックの引用、半数はトリックというには余りにもちゃちな謎解きである。今時ルブランの有名な密室トリックを堂々とクイズに使うとは思わなかった。他にもパーティー会場で壇上の人間がボウガンで殺害されたが、犯人はどこに隠れていたかという問題の答えがクロスがかかった丸テーブルの中というのは余りにもお粗末だろう。もちろん見せ方がうまければまだよいのだが、事実を羅列するばかりでは面白くも何ともない。推理クイズはただクイズを作ればいいというものではないことを、もっと認識すべきである。
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