山口琢也『トリックに挑戦!』
(若木書房 ヤマタクのパズルシリーズ7)



『トリックに挑戦!』
 『トリックに挑戦!』

 著者:山口琢也
(おもに少年雑誌を中心に、ギャグ、クイズ、パズルなどを出題。著書は10冊以上になる)

 発行:若木書房 ヤマタクのパズルシリーズ7

 発売:1974年初版

 定価:400円(ただし、1975年7月25日、第5刷時)




 今まで、推理に関するクイズやパズルはたくさん書きました。そして、さまざまなテクニックや可能性について、じゅうぶん追求してみたつもりです。
 その上にたって、もう一度、原点にたちかえり、純粋に推理パズルのおもしろさをたしかめてみたり、そう思ってまとめたのがこの本です。
 そこで、題材をトリックに限定しました。なぜなら、トリックものは、もっともとっつきやすく、またおもしろく、そして、際限なく奥ふかいものだからです。トリックには、それこそ推理の一から十まであるといえるのです。
 さあ、さっそく、やわらかくするどいきみの頭脳で、トリックをひとつひとつ解明していってください。きみの頭脳が勝つか、私が勝つか、さあ、勝負!

(「まえがきにかえて」より)



 全部で51問。ヤマタククイズシリーズが好評だったことから、続いて企画されたパズルシリーズ。「題材をトリックに限定」とあるが、推理小説でいうトリックだけではなく、暗号や算数パズル、間違い探しに意地悪クイズなども含まれている。
 暗号やパズルはいいが、問題はトリックを使ったクイズの方。このトリックが、奇天烈なもの、呆れるものが多いのには困ってしまう。掛け金がはまった密室トリックの回答が、室外へ出て掛け金を指で押さえ、ドアを閉めながらギリギリまで指で押さえておいて、パッと放すと同時にドアを閉めると掛け金が運よくはまる……って、どこがトリックだ!と叫びたくなるようなレベルである。三階の部屋の窓から、隣のマンションの二階の部屋のコーヒーカップに水鉄砲で毒を入れるなど、いくら射撃の名手でも難しいだろうし、そもそも痕跡を残さずにできるはずがない。巨大なダイヤの半分だけを持って行って、鏡に映して誤魔化すなんて、いったいどういうシチュエーションだ。まあ、まともなトリックものもないわけではないが、大半は呆れる物ばかりだ。立て続けに推理クイズ本を出したから、ネタが枯渇してしまったのだろう。
 逆に言えば、そういうバカバカしさを楽しむにはいいかもしれない。まともなクイズ本と思わず、ギャグ本だと思って読めば、怒ることもないと思われる。

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