本村洋・本村弥生『天国からのラブレター』(新潮社)


発行:2000.4.15




(前略)
 ところでこの書簡集は、99年4月に23歳で亡くなった弥生が、生前、私宛にくれた多くの手紙類と、結婚後も弥生が書き綴ってきた『パパとママの交換日記』(実際は交換ノートというより育児日記ですが)と題するノートに残された文章とで成っています。
 その内容は、若くて仲のよい恋人同士あるいは夫婦間に交わされた他愛のないラブレターの類に過ぎないかもしれません。また、拙い文章かもしれません。しかし、弥生は手紙や交換日記を通じて、その時、その時の自分の考えや希望などを、あきれるほど正直に、ありのままに書き遺していってくれています。そこに込められた一言一言が弥生の心情であり、感情であり、精神なのです。
 そして今回、私がこのような書簡をまとめて出版したいと強く思ったのは、ある日突然不慮の死を遂げた妻が、ただ単に殺人事件の被害者としてのみ人々に認識され、この事件の風化とともに、やがて人々の記憶から消えていってしまうのが、あまりにも哀れすぎて、どうにも忍び難い気持ちに急かされてのことでした。
(後略)

(「はじめに」より一部引用)


【目 次】
はじめに
第1章 パパとママの交換日記
第2章 出会い
第3章 遠距離恋愛
第4章 弥生は“くっつき虫”
第5章 学生結婚・就職・夕夏の誕生
あとがき


 光市母子殺害事件の被害者の1人である本村弥生と、その夫本村洋による往復書簡、交換日記。事件の1か月前から長女の成長記録を書いた「パパとママの交換日記」、そして2人が交際してからの、主に妻からの書簡が載せられている。

 事件までのプライベートが載っているだけであり、事件そのものとは関係がない一冊。逆に言うと、どこにでもある平凡で、しかし幸せな家庭が、18歳の男によって引き裂かれたことを逆説的に証明した一冊と言える。ただ、他人まで実名で載せる必要はなかったと思うが。
 事件を知りたいという人にとって買う必要は全くないと思うが、本村洋自身がここまでプライベートを切り売りしてまでも、自分の名前と訴えを世間に届かせようとしていたかという点については覚えておいてもいい一冊かも知れない。
 それにしても、これが2007年に映画化されるのだから、不思議なものだ。


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