七人もの人間が次々に殺されながら、一人の少女が警察に保護されるまで、その事件は闇の中に沈んでいた――。明るい人柄と巧みな弁舌で他人の家庭に入り込み、一家全員を監禁虐待によって奴隷同然にし、さらには恐怖感から家族同士を殺し合わせる。まさに鬼畜の所業を為した天才殺人鬼・松永太。人を喰らい続けた男の半生と戦慄すべき凶行の全貌を徹底取材。渾身の犯罪ノンフィクション。(粗筋紹介より引用)
2005年11月、新潮社より刊行。2009年2月、加筆の上新潮文庫より刊行。
【目次】
まえがき
第一章 十七歳の少女
第二章 松永太と緒方純子
第三章 一人目
第四章 緒方一家
第五章 二人、三人、四人目
第六章 五人、六人、七人目
第七章 松永太の話
第八章 消される二人
あとがき
控訴審判決と緒方純子からの手紙
北九州連続監禁殺人事件は、松永太という卑劣な殺人鬼によって巻き起こされた悲惨な事件である。正直言って、この事件の概要は書きたくない。あまりにも悲惨で、あまりにも鬼畜な事件であったといってよい。
作者はこの事件を丹念に取材し、その実態に迫っている。表現こそ抑えているものの、そこに書かれている事件の内容は、はっきり言って正視できるものではない。なぜ彼らはこんな男に従ってしまったのか。しかし、そのような実例は世の中に溢れている。こんな男になぜ金を貢ぐのか、こんな女になぜ簡単に騙されるのか。しかしこの事件はその度を超えている。それでも人が従ってしまうところに、人の心理の不可解さが有り、そこにつけ込む松永という男の恐ろしさがある。
ただ、松永太がどういう男なのか、どういう風に育ってきたのかという点に乏しかったのは残念。どうすればこのような男ができあがるのかを知りたかった。
2005年9月28日、福岡地裁小倉支部は松永太、緒方純子両被告に求刑通り死刑判決を言い渡す。2007年9月26日、福岡高裁は松永被告の控訴を棄却するものの、緒方被告の一審判決を破棄し、無期懲役を言い渡す。2011年12月12日、最高裁は松永被告の上告を棄却し、死刑判決が確定する。同日、最高裁は緒方被告に対する検察側上告を棄却し、緒方被告の無期懲役判決が確定する。
松永被告は裁判で無罪を主張していた。死刑判決確定後の動向は不明であるが、2015年12月現在、死刑は執行されていない。そして松永死刑囚より後に確定した死刑囚のうち数人がすでに執行されている。
作者のはノンフィクションライター。ニューヨークの日系誌記者を経て、フリーで活動する。著書に『家庭という病巣』『DV―殴らずにはいられない男たち』『男たちのED事情』『壊れかけていた私から壊れそうなあなたへ』など。
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