死刑確定囚(2003年)



※2003年に確定した、もしくは最高裁判決があった死刑囚を載せている。
※一審、控訴審、上告審の日付は、いずれも判決日である。
※事実誤認等がある場合、ご指摘していただけると幸いである。
※事件概要では、死刑確定囚を「被告」表記、その他の人名は出さないことにした(一部共犯を除く)。
※事件当時年齢は、一部推定である。
※没年齢は、新聞に掲載されたものから引用している。

氏 名
府川博樹
事件当時年齢
 33歳
犯行日時
 1999年4月19日
罪 状
 強盗殺人、詐欺
事件名
 江戸川区老母娘強盗殺人事件
事件概要
 東京都江戸川区の新聞販売所従業員、府川博樹被告は韓国クラブのホステスと交際し、1999年2月頃から同棲を始めた。府川被告は女性にホステスを辞めさせたがったが、女性はホステスを辞めるつもりがないため、店に200万円の借金があり、4月19日に親戚との集まりで大阪へ出発するまでに200万円を作らなければ絶対に店は辞めないなどと述べた。府川被告は同僚や顧客に借金を申し込んだが、いずれも断られた。
 1999年4月19日午後4時頃、府川博樹被告は、新聞の購読契約の顧客だった江戸川区の女性(当時65)宅に行き借金を申し込んだが断られたうえ、罵倒されたため逆上。午後4時30分頃、女性の頭を殴った後、包丁で背中や首、腹などを刺すなどして殺害した。また、事件を目撃した女性の母(当時91)も同様にして刺殺した。その後、タンスなどを物色したが現金を発見できずに逃走した。
 二人の死体は4月23日、訪ねてきた親戚により発見された。
 捜査の結果、府川被告が浮上、5月上旬に警察が任意で事情聴取を取るものの、直後に失踪。18日に警察は府川被告を発見、再度事情聴取をしたところ、府川被告が自供、逮捕した。
 府川被告は事件以前に女性との交際費用を捻出するため、父親のガンの手術費と偽って販売所の同僚女性から11回に渡り計538万円を騙し取った。また事件後、元交際相手の女性から4回に渡り計419万円を騙し取り、200万円を同棲相手に渡した。
一 審
 2001年3月21日 東京地裁 木村烈裁判長 死刑判決
控訴審
 2001年12月19日 東京高裁 高橋省吾裁判長 控訴棄却 死刑判決支持
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
上告審
 2003年1月29日 上告取下げ、死刑確定。
拘置先
 東京拘置所
裁判焦点
 検察側は求刑理由で「刑事責任は極めて重大。動機も金欲しさの身勝手なもの。矯正は不可能で、もはや自らの命で償わせるべきだ」と述べた。
 一審の判決理由で木村烈裁判長は「犯行の背景には、借金を繰り返してきた深刻な金銭感覚のまひと、ホステスへの異常な執着心がある」と指摘。「女性の歓心を買い、独占するために生命さえもないがしろにする発想は自己中心的で身勝手極まりなく、犯行は執拗で残虐」と述べ、「被告に有利な事情を考慮しても極刑で臨むほかない」とした。

 控訴審判決理由で高橋省吾裁判長は「計画的とは言えないが、動機は短絡的で、被害者が生きていると分かると何度もとどめをさすなど、執拗、残忍この上ない犯行。死刑が重過ぎて不当とは言えない」と述べた。
執 行
 2007年12月7日執行、42歳没。氏名、年齢、犯罪事実を法務省が公表した初めてのケース。
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氏 名
吉岡守
事件当時年齢
 37歳
犯行日時
 2001年6月8日
罪 状
 殺人、殺人未遂
事件名
 大阪小学校児童殺傷事件
事件概要
 2001年6月8日、元伊丹市職員で無職の宅間守(旧姓)被告は、「なにもかもうまくいかないので、周りの人間を困らせるため」「職を失った」「離婚無効訴訟などの裁判がうまくいっていない」「約730万円の負債を抱えていた」などから、大阪府池田市の小学校に乗用車で乗り付け、校舎1階の教室外側のテラスの引き戸を開けて侵入。刃渡り約15センチの出刃包丁を振り回し、逃げる児童らを追いかけ、約15分にわたって4つの教室と廊下で児童や教諭を1人ずつ刺していった。教諭2人を含む23人が首や背中などを刺され病院へ運ばれたが、2年生の女子7人と1年生の男子1人が死亡、教諭1人を含む7人が重傷、教諭1人を含む8人が軽傷を負った。宅間被告は教諭ら2人に取り押さえられ、池田署員が殺人未遂容疑の現行犯で逮捕した。
一 審
 2003年8月28日 大阪地裁 川合昌幸裁判長 死刑判決
控訴審
 2003年9月26日 控訴取下げ、確定
拘置先
 大阪拘置所
裁判焦点
 宅間被告は公判で起訴事実を認めたが、弁護団が心神喪失・心神耗弱を主張したため、刑事責任能力の有無が唯一の争点となった。しかし、起訴前と公判段階での2度の精神鑑定で、ともに責任能力が完全に認められた。
 川合裁判長は、争点だった刑事責任能力を認めたうえで、「自己中心的な犯行」と求刑通り死刑を言い渡した。責任能力を認めた2回の精神鑑定を援用しながら「精神疾患の影響はなく、刑事責任を問うのに十分な責任能力を備えていた」と認定。「人格と精神の障害が合わさった複合的精神障害で、心神喪失か心神耗弱だった」と事実上、無罪か刑の減軽を求めた弁護側の主張を退けた。
 宅間被告は判決日の入廷直後、「ちょっと言わせてくれ」と発言。川合裁判長が制止しても、「死刑になるんだから、最後に言わせてほしい」などと暴言を繰り返したため、退廷を命じられた。判決時に退廷を命じられたのは、多分初めて。

 弁護団は9月10日、「極刑であり、国家の手で命を奪う以上、慎重な究明が重ねられるべきだ」として大阪高裁に控訴。被告の人格形成過程や犯行決意時点の心理状況のさらなる解明や、被告に贖罪の意識をもたせることを控訴の理由に挙げていた。宅間被告は弁護団との接見で「控訴しても結論は同じや」「弁護団が控訴しても取り下げる」などと述べ、控訴せずに判決を早期に確定させたいという意向を表していた。
備 考
 本事件をきっかけに、心神喪失などで刑罰を科されなかった人を裁判官と医師の判断で入院や通院させる「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(心神喪失者等医療観察法)」が2003年に制定され、2005年に施行された。
附 記
 旧姓宅間。面会に訪れていた女性支援者と死刑確定後の2003年12月に獄中結婚した。
執 行
 2004年9月14日執行、40歳没。確定から1年弱での執行は、近年では異例。
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