井上 安正『警察記者33年−凶悪事件の裏事情』(徳間文庫)


発行:2000.9.1



 前読売新聞社会部部長である筆者が、事件の解明、そして報道を巡っての捜査当局、犯人、他社の記者等との駆け引き、そして真実の追究について書かれたノンフィクション。「弘前大教授夫人殺し事件」は犯人と目されている人物が服役終了後に真犯人が自白し、冤罪を証明したという希有の事件であった。それが、井上記者を始めとする読売新聞、弁護士、そして真犯人が冤罪事件の証明を懸けて取り組んでいたとは全く知らなかった。その他にも様々な事件について、記者側から見た鋭い視点が読者の心を揺さぶる。新聞記者は、人権すら無視してただ特ダネを求めているわけではなく、やはり事件の解決、そして被害者の冥福を祈っているんだなということが分かる貴重な本である。
 もっとも、ただ特ダネしか求めない記者が大勢いることも間違いないんだろうが。
 ちなみに目次は以下。

 第1部 警察記者二十年(ジャンケンポン協定、囲碁の功名、事上磨錬ほか)
 第2部 弘前大教授夫人殺し事件(作られた犯人、再審請求提出、血痕のミステリーほか)
 第3部 マニラ保険金殺人事件(「私、殺されかけたんです!」、告白、主犯と実行犯ほか)
 第4部 記憶に残る事件(尊属殺人、タレコミ男、天皇の門番ほか)

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