日本推理作家協会賞受賞作全集第91-92巻
『本格ミステリの現在』(上)(下)笠井潔編



【初版】2014年6月15日
【定価】上巻694円、下巻676円
【解説】円堂都司昭
【底本】『本格ミステリの現在』(国書刊行会)

【収録作品】
編 者
笠井潔(かさい・きよし)
 東京都生まれ。1979年、名探偵・矢吹駆の初登場作『バイバイ・エンジェル』で小説家デビュー。同シリーズは『サマー・アポカリプス』『薔薇の女』『哲学者の密室』と続き、2003年、『オイディプス症候群』で本格ミステリ大賞を。『ヴァンパイヤ戦争』ほか伝記小説やSFも。評論家・思想家としての著書多数。『探偵小説論』などでミステリ界も刺激する。
(作者紹介より引用)
作品名
『本格ミステリの現在』
初 出
・「笠井潔論」:『創元推理2』1993年春号に加筆
・「島田荘司論」:『野性時代』1995年10月号に加筆
・「東野圭吾論」:『野性時代』1996年3月号に加筆
 その他は書下ろし。1997年、国書刊行会より刊行。
粗 筋
 綾辻行人『十角館の殺人』で扉が開けられた<新本格>・10年後、活気あふれる本格ミステリの核となっている作家に、気鋭の評論家が独自の視点でアプローチしていく。上巻では、その綾辻をはじめ、竹本健治、笠井潔、島田荘司、東野圭吾、折原一、法月綸太郎、有栖川有栖と、<新本格>以前からの流れを踏まえつつ、8人の作家が論じられる。(上巻粗筋紹介より引用)
 ますます多様化していった1990年代の日本のミステリ界において、本格ミステリはどのような姿を見せていたのか。気鋭の評論家による鮮やかな作家論が、それを解き明かしていく。下巻では、宮部みゆき、我孫子武丸、北村薫、山口雅也、麻耶雄嵩、井上夢人、二階堂黎人、京極夏彦と、個性的な作品で新たな地平を開いた8人が論じられる。(下巻粗筋より引用)
目 次
<上巻>
 ・まえがき【探偵小説の地層学】 笠井潔
 ・竹本健治論【尾を喰う蛇は<絶対>を夢見る】 千街晶之
 ・笠井潔論【大量死と密室】 法月綸太郎
 ・島田荘司論【挑発する皮膚】 法月綸太郎
 ・東野圭吾論【愛があるから鞭打つのか】 北村薫
 ・綾辻行人論【館幻想】 濤岡寿子
 ・折原一論【決算後の風景】 田中博
 ・法月綸太郎論【「二」の悲劇】 巽昌章
 ・有栖川有栖論【楽園が罅割れるとき】 千街晶之
<下巻>
 ・宮部みゆき論【語りと灯】 濤岡寿子
 ・我孫子武丸論【メタ・ヒューマニズム序説】 夏来健次
 ・北村薫論【可憐なる巫女たちの物語】 加納朋子
 ・山口雅也論【パンキー・ファントムに柩はいらない】 有栖川有栖
 ・麻耶雄嵩論【形式の大破局(カタストロフィ)】 佳多山大地
 ・井上夢人論【意識・身体・小説・現実】 田中博
 ・二階堂黎人論【怪人のいる風景】 鷹城宏
 ・京極夏彦論【フロイトの「古井戸」】 武田信明
感 想
 東京創元社で設けていた創元推理評論賞(1994年〜2003年)の選考委員及び受賞者、入選者で結成された探偵小説研究会のメンバーによる作家論。タイトルこそ『本格ミステリの現在』となっているが、結局は「新本格」以後を中心とした本格ミステリ作家を論じた一冊でしかなく、本格ミステリ全体を俯瞰したものではない。井上夢人や宮部みゆきを本格ミステリ側から語ってみても、どことなくこじつけにしか見えないのは気のせいか。メタなんか論じられても……という感も強いのだが、やはり論じる人々それぞれが本格ミステリというものはなんなのかという根本的な命題をスルーしているところに問題があると思っている。本格ミステリの命題に共通認識がないから、なんとなくもやもやとしたアンバランスな評論集になっているのだ。これが別に作家論とタイトルを付けてくれているのなら、何とも思わないのだけれども。
 そういう意味で本格ミステリを全体的な流れで追っているのは「前書き」の笠井潔だけといっていいかもしれないが、私はこの笠井潔の論法が好きになれない。そもそも、思い込みが強い。全く個人的な印象であり、どこが間違っている、というわけでもないので、それ以上言うことは無い。
 ということで、予想以上にがっかり感が強い評論集。ブームに合わせて受賞させただけという気もしなくはない。
備 考
 第51回(1998年)評論その他の部門。

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