江戸川乱歩推理文庫第11巻(講談社)
『黄金仮面』



【初版】1987年9月25日
【定価】480円
【乱歩と私】「乱歩さんと私」星新一


【収録作品】

作品名
黄金仮面
初 出
『キング』(講談社)昭和5年9-昭和6年10月号。
粗 筋
 無表情な能面のような黄金仮面、その口から顎にかけて、一すじタラリとまっ赤な液体が流れる。仮面の黒く割れた口が少しずつ形を変えて、大きな三日月型の笑いの表情になり、シューシューという笑い声をたてる。黄金仮面の正体は何物か、その目的は? 明智小五郎と黄金仮面の華麗な戦いが始まる。
(裏表紙より引用)
感 想
 当時の国民雑誌的『キング』に連載されたということもあり、『蜘蛛男』『魔術師』などの作品に見られるような乱歩臭は影を潜め、明るい冒険活劇ものに仕上がっている。もっとも殺人事件が発生するのは仕方がないか。
 黄金仮面の正体はアルセーヌ・ルパンというのは至る所で書かれているから大丈夫だろう。日本の名探偵明智小五郎とフランスの怪盗ルパンが対決するというのは、『ホームズ対ルパン』にヒントを借りた趣向。ルパンだけでなく、『8・1・3』に出てくるパリ警視庁刑事部長のエベールも登場する。「黄金仮面」はマルセル・シュウォブ『黄金仮面の王』から採ったもの。中に出てくる脱出トリックなども他作品からの借用である。アイディアは借り物でも、乱歩の手に掛かると全てが乱歩色になってしまうのはさすがとしか言いようがない。
 小説の盛り上げどころを熟知した脂ののっているころの作品でもあり、面白さは通俗作品の中でも随一。当時の読者が夢中になったのも当然である。
備 考
 昭和7年の平凡社版「江戸川乱歩全集」の宣伝にセルロイドの黄金仮面が使われるなど、乱歩作品の代表的悪役キャラクターとなっている。

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