江戸川乱歩推理文庫第32巻(講談社)
『妖怪博士/青銅の魔人』



【初版】1987年11月6日
【定価】640円
【乱歩と私】「乱歩と私」斉藤栄


【紹介】
 ギリギリと歯車の音を立てながら、月光を浴びて夜の銀座通りを歩く青銅の怪人! ピストルの弾をも撥ね返す鉄の身体は、追えば煙のように消え失せてしまう。時計という時計を狂ったように盗んでいく魔神の狙いは? 「皇帝の夜光の時計」があぶない! 戦後初の少年探偵物「青銅の魔人」。「妖怪博士」を併録。
(裏表紙より引用)


【収録作品】

作品名
妖怪博士
初 出
『少年倶楽部』1938年1月号-12月号連載。
粗 筋
 少年探偵団員の一人、相川泰二君は奇妙な老人の後を付けていくが、それは老人こと蛭田博士の計略だった。相川君、相川君の父親が持つ国家機密の書類、さらに相川君の学友三人も誘拐された。相川君の父親は明智小五郎に解決を依頼するが、そこへ現れたのは殿村弘三という私立探偵だった。殿村と明智、どちらが先に相川君たちを見つけることが出来るか。
感 想
 少年探偵団シリーズ三冊目。前作で行方不明となった怪人二十面相が復活(とネタバレだけど、いいか)。美しい物にしか興味がないはずの二十面相が、本作では少年探偵団への復讐がメインとなっている。本来復讐すべきなのは逮捕した明智だろうとか、タイトルの意味がほとんど無い点とか、結末直前の残忍さなど、突っ込みどころ色々ある作品だが、その辺のいい加減さが乱歩らしいといえばそれまでかも。ハイキングで愛国行進曲を歌うところは、時代を感じてしまう。既にこのシリーズの破綻が見えてきた作品でもある。戦争でいったんリセットされなければ、二十面相はここで終わっていたかもしれない。
備 考
 

作品名
青銅の魔人
初 出
『少年』1949年1月号-12月号連載。
粗 筋
 東京中の珍しい懐中時計をさらっていく銅像の顔を持つ機械人間こと青銅の魔神。手塚昌一君の父親である龍之助さんが持つ「皇帝の夜光の時計」もまた青銅の魔神に狙われた。魔神からの脅迫状を受け、龍之助さんは警察に依頼するだけでなく、明智小五郎と小林少年にも警護を依頼するが、時計はまんまと盗まれてしまった。しかし小林少年とチンピラ別働隊が、魔神の正体を追い詰めていく。
感 想
 戦後初の少年物。一部では少年探偵団シリーズでも最高傑作といわれている。少年探偵団ではなくチンピラ別働隊が出てくるところが、当時の時代背景を写していると言えなくもない。まあそれは抜きにしても、様々の奇妙な謎にこの解決はないだろう、とがっかりする点がなきにしもあらず。それ以上に、彼ら(ネタバレなので一応伏せておく)へのフォローが全然ない点は、いくら戦後混乱の時代とはいえ、納得できないところでもある。正直、好きな作品ではない。
備 考
 

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