江戸川乱歩推理文庫第36巻(講談社)
『灰色の巨人/魔法博士』



【初版】1988年3月8日
【定価】640円
【乱歩と私】「悪のヒロインに憧れて」鳥井加南子


【紹介】
 謎のサーカス団に跳梁する、一寸法師に大男の道化、灰色の巨像、にじの女王……。その背後に立ち現れる、怪賊「灰色の巨人」!「世界一の宝石美術館をつくる」と豪語する「灰色の巨人」は、真珠の宝塔「志摩の女王」を、大胆にも鮮やかに盗みさるや、息つく暇もみせず、五色に輝く「にじの宝冠」を狙ってきた。
(裏表紙より引用)


【収録作品】

作品名
灰色の巨人
初 出
『少年倶楽部』1955年1月号-12月号連載。
粗 筋
 【紹介】参照。
感 想
 『黄金仮面』に出てきた真珠塔「志摩の女王」が再登場。昔のサーカスにいたような人たちが登場し、宝石を盗む。アドバルーンに乗って逃走、女中になった小林少年などおなじみ(マンネリ)の展開が出てくる。コールタールの「黒い糸」は『人間豹』で出てくるが、少年ものでは初めてか。賊の住処が証言だけであっさりわかってしまうのはどうか。二誌連載となったが、人気と比較して作者は疲れているのだろう。
備 考
 この年より、『少年』と二誌連載となる。『少年倶楽部』の連載は、1936年の『大金塊』以来。

作品名
魔法博士
初 出
『少年』1955年1月号-12月号連載。
粗 筋
 少年探偵団の井上一郎と野呂一平は、西洋悪魔に化けた怪しい紙芝居屋を尾行し、悪魔の国に連れ込まれる。それは黄金仮面を山下家に伝わる「グーテンベルグの聖書」を盗むという予告が届き、息子は小林少年や井上君たちに警護を頼んだが、魔法博士は予告通り盗んでいった。三日後、不審な黄金怪人たちを見つけた井上君たちの報告を受けた小林少年たちは尾行し、洞窟から巨人の胎内くぐりをすると待ち構えていたのは魔法博士だった。
感 想
 魔法博士自体は『虎の牙』にも出てくるが、ここでは『黄金の虎』に出てくる魔法博士とは違う、という断わりが出てくる。「グーテンベルグの聖書」をめぐる部分はごくわずかで、ほとんどは魔法博士が投げかける謎を小林少年がマジックだと解き明かす展開が続く。胎内くぐりの展開は珍しいが、マジックはいつものものであり、目新しさはない。巨大な像が消えるトリックは『黄金仮面』にも出てくる海外作品の流用。父親がボクサーだという井上一郎君と、臆病者でノロちゃんと呼ばれる野呂一平君は以後レギュラーとなる。
備 考
 

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