江戸川乱歩推理文庫第45巻(講談社)
『海外探偵小説作家と作品1』



【初版】1988年12月8日
【定価】480円
【乱歩と私】「アニマ、アニムス」荒巻義雄


【紹介】
 海外推理小説を作家別(五十音順)に編纂。伝記・文献類がわかりやすく解説されているだけではなく、一九五〇年代の海外ミステリー界の鼓動を如実に伝え、かつ乱歩の嗜好と独自の切り口が鮮やかに各作家に展開される評論集。乱歩の愛してやまぬJ・D・カーを含め、アタイヤからシムノンまでの二十三名を収録。
(裏表紙より引用)


【収録作品】

作品名
海外探偵小説作家と作品1
初 出
 昭和32年4月、早川書房より刊行。
 昭和28年9月より刊行されたハヤカワ・ポケット・ミステリの毎巻末に原稿用紙十枚以上の解説文を書いている。二十八年度に11冊、29年度に46冊、30年度に5冊、計62冊を書いて書く種がなくなり音をあげ、29年12月に執筆を打ち切った。これらの解説文を集め、さらに「宝石」その他の雑誌に書いたものを加えた。91名(別名を加算しないと80名)になるが、乱歩自筆でないものが17篇あるので、それらは削り、その代わりにその後に書いたテイラーとヒューズを加えた。
目 次
アタイヤ Edward Atiyah
アリンガム Margery Allingham
アンブラー Eric Ambler
イネス Michael Innes
ヴァン・ダイン S.S.Van Dine
ウォーリス J.H.Wallis
ウォーレス Edgar Wallace
ウールリッチ Cornell Woolrich(William Irish)
カー John Dickson Carr(Carter Dikson)
ガードナー Erle Stanley Gardner(A.A.Fair)
ガボリオー Emile Gaboriau
キッチン C.H.B.Kitchin
ギルバート Anthony Gilbert(Anne Meredith)
クイーン Ellery Queen(Barnaby Ross)
クリスティー Agatha Christie
グリーン Alan Green
グリーン Anna Katharine Green
グリーン Graham Greene
クロフツ Freeman Wills Crofts
コリンズ Willam Wilkie Collins
コール G.D.H.& M.I.Cole
ザングウィル Israel Zangwill
シムノン Georges Simenon
感 想
 乱歩がポケミス等で開設した海外探偵作家の紹介文をまとめたもの。文庫化に当たり三冊に分冊しているが、当初は二冊であったことを考えると、江戸川乱歩推理文庫のラインナップを途中で変更したことによる編集側の苦肉の策という感がしなくもない。
 随筆集で書かれていたカーなどの文章には重複も目立つが、苦手とされるハードボイルド系も含め、不公平にはならないように丁寧な執筆を行っているのは、律儀な乱歩ならでは。その後の研究による新事実も出ていることから、必ずしもすべてが正しいとは言い切れないが、乱歩ならではの視点と好みを知るには格好の本かもしれない。
 今では入手しづらい作家の紹介もあり、何とか読んでみたくなるような解説の書き方はさすがである。
備 考
 原版の附録には「海外探偵小説総目録」がついていたが、その後の作品の増補すべきものが多いため割愛している。

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