土屋隆夫推理小説集成第4巻(創元推理文庫)
『妻に捧げる犯罪/盲目の鴉』



【初版】2000年12月22日
【定価】1200円+税(当時)
【カバー画】渡辺啓助
【巻末エッセイ】「心残り、英光全集」(『信濃毎日新聞』1980年11月16日)
【土屋隆夫論】「間断なき対決」麻耶雄高


【概 要】
 イタズラ電話が元で、凶行直後と思しき女の肉声を聞いてしまう男が、その内容だけを手がかりに犯人の正体に迫ろうとする『妻に捧げる犯罪』。文芸評論家の失踪に端を発する事件の陰に飛び交う「鴉」の謎を追う千草検事。「週刊文春」誌の年末恒例「傑作ミステリーベスト10」'80年度第2位に輝いた著者の代表作『盲目の鴉』を併載。
(裏表紙より引用)


【収録作品】

作品名
妻に捧げる犯罪
初 出
 1972年4月、光文社カッパノベルスより書き下ろし刊行。
粗 筋
 裏切られた妻への復讐から、見知らぬ家にイタズラ電話をかける悪魔の愉悦に取り憑かれた男。ある晩、ダイヤルを回した相手の女は、彼のことを共犯者と間違えて犯罪の成功を告げたのだ! 男はその電話の会話だけから、女の正体を突き止めようとするが……!?
(粗筋紹介より引用)
感 想
 警察関係の人物がこつこつと犯人を追うという土屋の他長編と比較すると、異色作といえる。まあ、イタズラ電話からの発端からして主人公に苛ついてしまうし、登場人物の皆が身勝手すぎるとしか言い様がない展開で、読んでいて面白くない。まあ、作者が書いているように「犯人も被害者も犯行の現場も、さらに言えば動機も方法も不明の殺人事件」という意外な展開をパズルとして楽しむことができれば、それはそれでよいのかも知れない。
備 考
 

作品名
盲目の鴉
初 出
 1980年9月、光文社カッパノベルスより書き下ろし刊行。あとがきでは旧作短編「泥の文学碑」の骨子を生かして長編を書き下ろしたと記している。
粗 筋
 田中英光の新資料を求めて長野県へ出向いた文芸評論家が消息を絶った。そして、東京地検の千草検事が偶然出会った不可解な殺人事件。その二つを結ぶ「鴉」の謎。大手拓次の詩の裏に、犯人の狡知に長けた計画が潜んでいた!
(粗筋紹介より引用)
感 想
 8年ぶりの長編新作。土屋らしい文学的香りが溢れる傑作……と一言で言ってしまえばそれで終わりかも知れないが、なんか割り切れないものが残るのは、やはり殺害すべき動機がない人物が殺されている点だろうか。本格ミステリで時々思うのは、無理矢理トリックを使うために無関係な人物を殺害する作品がどうも好きになれない。小説だと、パズルだと割り切ってしまえばそれまでなんだが、土屋みたいに切実な動機がある人物がこういう殺人を犯してしまうところがはっきり言って気に入らない。毒殺トリックやアリバイトリックは土屋らしいと思うのだが。
 傑作だと思うよ、本当に。自分が気に入らないだけで。
備 考
「週刊文春傑作ミステリー・ベスト10」1980年度総合第2位。

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