別冊宝島編集部『プロレス 暗夜行路』(別冊宝島1648)

 カリスマ・三沢光晴の死がもたらしたマット界の暗き行程。離合集散を繰り返してきた業界のさらなる再編劇がいま、幕を開ける。ノアを襲った「百田の乱」。史上最悪のスキャンダル団体「WJ」の隠された極秘資料。新日本プロレスの最高経営会議「月曜会」議事録に見る封印されたプロレス史。ターザン山本が夢見た「ゴング編集長就任計画」頓挫の一部始終。90年代最大のプロレス・ディプロマット伝説、北朝鮮「平和の祭典」を劇画化した「平壌の冷たい夏」など、スクープ満載のラインナップ。いまプロレスの裏ネタが読めるのは「別冊宝島」だけ! (内容紹介より引用)
 2009年8月刊行。

 出版の時期的にNOAHの騒動が扱われるのは当然のことなんだろうが、憶測記事ばかりが描かれるのは興醒め。WJは叩きやすいんだろうなあ。ネタも多いし。月曜会議事録には笑わせてもらいましたが、あとは今一つ。あ、原田久仁信先生の漫画は面白い。ただ、入れ食い状態のことまで書く必要があったんだろうか(笑)。




別冊宝島編集部『プロレス 大貧民』(別冊宝島1792)

 「冷温停止」状態が続くプロレス・格闘技業界。今年後半に予想される「ビッグバン」に向け、水面下でさまざまな思惑がかけめぐる。オールスター戦の虚実、瀕死のFEG内部リポート、業界から異業種へ転身した意外な成功者たち、混乱期の新日本プロレスの真実、そしておなじみ原田久仁信の劇画も掲載! 日本唯一のマット界裏ネタ誌がおくる完全スキャンダル読本。(内容紹介より引用)
 2011年7月刊行。

 出版の時期的にTARUの暴行事件が扱われるのは当然のことなんだろうが、"真相"どころか裏話すらろくに無い状況では、編集部のやる気が疑われても仕方が無い。渕正信のインタビューなんて、あってもなくても一緒だろう、これでは。ALL TOGETHERの裏話なども今更という程度の薄い内容。ノアはとにかく叩こうというのが見え見え。没落寸前のFEGについてもどうでもいい内容の話ばかり。新日本プロレスの現時点における「大貧民」ネタは無かったのか、過去のスキャンダルを年表にするだけのお粗末さ(新日本にとってはいいことなんだろう)。フィニッシュ技の変換は、素人でもできる程度の内容。橋本真也夫人の話も面白いものはなく、単なる本の宣伝としか思えない。谷津嘉章と永島勝司の対談については、お疲れ様でしたとしかいいようがない内容。どうせやるなら長州力の悪口でも徹底的に言い合えばいいのに。どうして谷津は、ここまで自分をよく見せようとするのだろう。
 今回唯一見られたのは、プロレス業界から異業種へ転身した人たちの消息を纏めた一覧表ぐらいか。単にインディレスラーになっただけの人も一覧に入れて水増ししているのはどうかと思うが、まあお疲れ様でしたと言えるだけの内容にはなっている。
「日本唯一のマット界裏ネタ誌」の名が泣けてくるような内容の薄さ。文庫本になるときは、前の本と合わせて一冊が関の山かな。あと、ターザン山本は本当にどうでもいい。




別冊宝島編集部『プロレス 真実一路』(別冊宝島1678)

 新日本プロレス・ノアの「契約更改」冬の陣。業界「大連立」の流れを阻む意外な「抵抗勢力」とは――。マット界の深奥を描くシリーズ最新作。WJ騒動から5年、再ブレークの兆しを見せる長州力が直面する難局、前代未聞の興行中止劇を演じた「ハッスル」崩壊の真相、28年前、あの「猪木監禁事件」で拳銃を持ち出し猪木を監禁した男の告白ほか。大好評原田久仁信のプロレス劇画最新作も一挙掲載。
 2010年1月刊行。

 相変わらずのNOAH叩きが多いが、さらに情けない興業中止にまで追い込まれたハッスルのずんどこぶりにもページが割かれている。興味深かったのは、馬場が社長だった頃の全日のファイトマネーだろうか。やっぱり安かったんだと見るべきか、思ったよりもらっているじゃないかと見るべきか。
 巻末の内外タイムス社倒産は、正直どうでもよかった。宝島も、ターザン山本ネタとゴマシオネタはもう取り上げる必要がないと思う。




別冊宝島編集部『プロレス 罪と罰』(別冊宝島1721)

「マット界が大不況」というキーワードを元に、新日本、全日本、ノア、FEG等の内情(?)をリポートした一冊。2011年1月刊行。
 読んでいて面白かったのはマイティ井上と谷津嘉章のインタビューくらい。本人が語ることだから記憶違いもあるだろうし、どうしても自分に甘くなりがちな話が出てくる(特に谷津)のは仕方が無いところだが、それを差し引いても面白い話が出てくるのがこの手のムック本のいいところ。まあ、その面白い話の多くは、団体やトップにとって都合の悪い部分なんだが(苦笑)。馬場が所属レスラーにはケチだとはいくつかの本で読んだことがあるけれど、阿修羅原のインタビューではマスコミと飲みに行って金が無いから馬場のところへ「コメ」をもらいに行く話もあったし、どっちが本当かよくわからない。多分どっちも本当なんだろうが。
 ページ数が少ないのは、出版業界も不況だからか、取り扱う記事が無くなったからか。まあ、悪口ばかりじゃネタが無くなるのも仕方がないだろうな。




森英俊・野村宏平『少年少女昭和ミステリ美術館―表紙でみるジュニア・ミステリの世界』(平凡社)

 少年探偵団、名探偵ホームズ、怪盗ルパンから推理小説全集、雑誌の附録、クイズ・ガイド本まで、昭和20〜50年代に出版されたジュニア・ミステリ約400点の表紙をオールカラーで紹介。他にコラムが12本。付録は戦後児童向けミステリ全集リスト。ゲストエッセイは有栖川有栖、恩田陸、辻真先、内田庶。
 第1展示室 乱歩・ホームズ・ルパン 児童ミステリ界のビッグ3
 第2展示室 世界の名作・日本の名作 少年少女ミステリ全集
 第3展示室 ジュニア・ミステリの名匠たち
 第4展示室 付録・ガイド本の世界

 森英俊編『ミステリ美術館―ジャケット・アートでみるミステリの歴史』が2001年11月。このときは460点の表紙が載り、168頁で4200円(税込み)。本作は400点の表紙、160頁で3990円(税込み)。
 国産ミステリについては色々な研究が重ねられてきたが、ジュニア・ミステリについてはほとんど振り返られることも無く、出版点数の多さにも関わらずほとんど振り返られてこなかったというのが現状である。そういう意味で、このような関連書が出版されたことは快挙と言ってもよい。小学生・中学生の頃、図書館で読み耽ったジュニア・ミステリの数々が、今ここに甦った。
 ただ、前巻よりも表紙点数が少ないのは残念。それに少年少女ミステリ全集は、できれば一冊当たりの書影を小さくしてでも全ての表紙を見せてほしかった。この本はあくまで“美術館”であり、“歴史本”でも“評論集”ではないのだから、リスト全て云々を言うのは無い物ねだりかも知れない。しかしこの二人の編者なら当然リストに載っているを持っているはずだ。ここまでそろっているのを見ると、やはり完璧なものを求めてしまうのは、端くれとはいえマニアの性かも知れない。ついでに書くと、付録本もリストにしてほしかった。
 不満なのは、ガイド本の書影が少ないこと。クイズなんてごく僅かしかない。トリックのネタばらしなど、確かに罪があることは認めるけれど、少年少女をミステリの世界に引き込んだという点では、功の部分も大きいと思うのだけれどなあ。私個人としては、手に入りやすい『名探偵世界一周』よりも、かつてはブームとなった豆本あたりの書影を見せてほしかった。
 エッセイは、当時の読者(有栖川有栖、恩田陸)なんかどうでもいいので、やはり当時の関係者の証言をもっと取り上げてほしかった。  どうでもいいけれど、コラムで古書店でも入手が難しいみたいなコレクター的文章は余計だったと思う。
 できればこれは第二弾がほしいなあ。もっとも、これ自体が売れるかどうかが微妙なのだが。




笹本稜平『破断 越境捜査3』(双葉社)

 警視庁捜査一課特別捜査一係の鷺沼友哉。神奈川県警瀬谷警察署刑事課の宮野裕之。ふたりの“一匹狼”が、みたび手を組んだ。
 10年前に行方不明となっていた右翼団体の大物・湯浅慶三郎が、白骨死体で発見された。拳銃自殺と断定されたが、現場に赴いた宮野は、その拳銃は警察官が使うニューナンブではないかと疑念を持つ。民間に出回るはずのない拳銃。ちらつく公安警察の影。続く重要人物の死。捜査の行く手を阻む者と立ちはだかる組織……。
 次々と現れる黒い謎に、捜査は東京、神奈川、福島と広がりを見せ、ついにはフィリピンへ。奸計を絶対に許さない“最強のタスクフォース”が巨悪を追い詰める、大迫力の警察小説。(帯の紹介に加筆)
 『小説推理』2010年3月号〜2011年4月号まで連載された作品を加筆・訂正し、2011年10月に刊行。

 鷺沼&宮野のコンビが三度登場。未解決事件の継続操作が本業である特別捜査一係に所属し、どちらかといえば正義の熱い心を持っている鷺沼警部補と、ばくち好きで金儲けになることを探し回っているような宮野巡査部長という正反対な性格の二人が、時には互いの欠点を補い、時には自らの長所を生かす形で事件にぶつかっていく。前作でも活躍したやくざの福富、パソコンが得意な若手刑事の井上、上司の三好係長も活躍する。
 今回は、ここ数年でS&W製のリボルバーやシグ・ザウエル製のオートマチックに切り替えられた、かつての警察の正式拳銃・ニューナンブにまつわる謎。市販も輸出もされていない回転式拳銃が、たとえ右翼の元大物とはいえ、民間人が入手することは不可能なはず。裏に何かあるはずと読んだ鷺沼たちが捜査を始めるが、公安警察の邪魔の手が入る。
 毎度毎度大物を相手にしているとはいえ、さすがに公安警察全体が相手というのは少々デカすぎではないか。しかも、片方には対処があまりにも早く、片方にはもたもたしている姿が奇妙。そもそも鷺沼たちをかまわなければ、このような結末をむかえなかったと思うし、逆にさっさと鷺沼たちに手をかければ、簡単に自分たちの身を守ることができたと思うのだが……。まあ、そういう主人公補正を抜きにすれば、途中までは面白い。一つずつ闇の真相に近づいていく姿は、都合よすぎる部分があるとはいえ、警察小説の王道である。その闇が大きければ大きいほど、解決に至るカタルシスが得られるわけなのだが、残念ながら最後が駆け足。この作者の欠点だよな、これは。まあ、結末にはびっくりしたけれどさ。
 それにしてもここまで書くのはやりすぎという気がしないでもないが、それ以上にシリーズの次の対象がどうなるのかが気がかり。実際だったら、段階を追ってそれぞれが飛ばされているような気がするんだけれどね。そういう点は気にしないようにしよう。




石持浅海『彼女が追ってくる』(祥伝社 ノン・ノベル)

<わたしは、彼女に勝ったはずだ。それなのに、なぜ……>
 中条夏子は、かつての同僚で親友だった黒羽姫乃を刺殺した。舞台は、旧知の経営者らが集まる「箱根会」の夜。愛した男の命を奪った女の抹殺は、正当な行為だと信じて。完璧な証拠隠滅。夏子には捜査から逃れられる自信があった。さらに、死体の握る“カフスボタン”が疑いを予想外の人物に向けた。死の直前にとった被害者の行動が呼ぶ、小さな不協和音。平静を装う夏子を、参加者の一人である碓氷優佳が見つめていた。やがて浮かぶ、旧友の思いがけない素顔とは。(粗筋紹介より引用)
 2011年10月、書き下ろし。碓氷優佳シリーズ最新刊。

『扉は閉ざされたまま』『君の望む死に方』に続く、碓氷優佳シリーズ三作目。というか、このシリーズはそういう名前だったんだ。
 倒叙もの、警察介入前の決着といったシリーズの特徴は、本作でも継承されている。今回は既に死んでしまった、同じ男を愛した女二人の片方が犯人で有り、片方が被害者である。私自身は、女はリアリストで、既に掴むことのできないかつての幸福や夢より、目の前にある現実的なベターライフを選ぶものと思い込んでいるのだが、そう言いつつもミステリでは、女による復讐が動機となっている作品が多いことも事実。一生わからない部分だろうな、きっと。
 事件が起きてからでも繰り広げられる、女同士の心理戦。誰もが親友同士と思っていた二人による、女ならではの戦い。怖いと言えば怖いが、それを冷静に見つめ、介入しつつ、最後は突き放す碓氷優佳という人物はもっと恐ろしい。しかし、優佳の絡む理由が不鮮明である点が、この小説の物足りない部分だと思う。圧倒的な勝利者でもあるにかかわらず、傍観者に徹する理由はなんなのか。女という生物の本当の恐ろしさは、ここにあるのかもしれない。
 作者の言う「犯人と被害者との誰よりも濃い関係」というよりも、女性同士の心理闘争という作品。怖いと言えば怖いが、今一歩で終わった感もある。この不満感はどこにあるのだろう。
 どうでもいいけれど、優佳は婚約者と一緒に住んでいるんだ。実は別の人物だったら驚きなんだけど、それはないだろうな。




石崎幸二『第四の男』(講談社ノベルス)

 お嬢様学校・櫻藍女子学院の生徒が、見知らぬ車に乗せられ拉致される! が、彼女は途中で隙を見て逃げ出し無事保護された。その生徒の名は星山玲奈、大手食品メーカー会長の孫で、実母は十数年前に殺害されていた……。後日、警視総監宛に玲奈を攫ったという犯人グループより「別の女子高生を誘拐した……」との脅迫状が届く! 絡み合う3つの事件! その真相とは!?(粗筋紹介より引用)
 2011年10月、書き下ろし。

 毎度おなじみの「女子高生ミリア&ユリシリーズ」。お色気係(笑)の仁美や斉藤刑事も健在。斉藤刑事の石崎へのビンタは、すでにネタとまで化している。これだけシリーズが続き、ごく一部とは言え固定ファンが付いている割には、シリーズが一冊も文庫化されないとはこれいかに。
 毎度おなじみ孤島が舞台……かと思いきや、島は島でも今回は普通に観光地。現在時間における殺人事件は発生しない。ただし、掛け合い漫才を続けながらも、最後に見せる推理の畳み込みについては健在。過去の事件が中心ということもあり、短めで終わってしまうのは残念だが、だらだら長くなるよりはいいだろう。
 初めて登場した星山玲奈は今後レギュラー化するのだろうか。ミリアたちと比べて、石崎で遊んでいる様子も無いので、今後は貴重な存在になるかも知れない。それにさ、ここまで来たら石崎と斉藤刑事が何かの拍子でくっつくとか、二人で同じ部屋に閉じ込められるとか、そういうお約束の展開も見せてほしいところなんだけど。その前には、まず文庫化かな。



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