近藤史恵『エデン』(新潮社)

 あれから三年―。白石誓は、たった一人の日本人選手として、ツール・ド・フランスの舞台に立っていた。だが、すぐさま彼は、チームの存亡を賭けた駆け引きに巻き込まれ、外からは見えないプロスポーツの深淵を知る。そしてまた惨劇が……。ここは本当に「楽園」なのだろうか?過酷なレースを走り抜けた白石誓が見出した結論とは。(粗筋紹介より引用)
 『新潮ケータイ文庫DX』2009年1月29日〜10月8日まで連載。2010年3月刊行。

 『サクリファイス』の続編で、白石誓がフランスのチームに移ってからの話となる。一応前作の内容を匂わせる部分があるものの、知らなくても純粋に楽しむことができる。
 今回は23日間にわたって行われるツール・ド・フランスが舞台。プロの駆け引きやチーム経営の背景などが輻輳し、さらにドーピング問題が出てくる。ただし謎というほどのものは無く、ミステリではない。まあ、そんなことは問題ではないのだけれども、前作みたいなものを求めている読者からしたらちょっと失望するかもしれない。
 ただ、純粋に自転車競技の話として読むには面白い。アシスト役の日本人という主人公の設定が抜群である。スター選手を支える「縁の下の力持ち」というのも、結構日本人が好む設定だと思う。自分もそうだし。
 それにしても、超一流のプロというのはストイックというかなんというか。それに引っ張られて、物語が淡々と進んだところはあるのだけれども。
 前作で主人公の白石に共鳴した人なら、ぜひとも読んでほしい一冊ではある。それにしても、自転車競技にも出ていない作者が選手の心理とテクニックの描写に長けているのは感心する。
 ところで、この小説が出た後に、7連覇を達成したランス・アームストロングのドーピング問題が大きく騒がれるようになったが、作者はどう思っているだろうか。



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