二階堂黎人『人狼城の恐怖 解決編』(講談社ノベルス)

 ゲルケン弁護士の日記に書かれていたワイン醸造所の調査中、二階堂蘭子たちは、リッベントロープ伯爵の部下に拉致された。行き先は、あの『人狼城』。阿鼻叫喚の地獄絵図『人狼城殺人事件』の犯人は!?『ハーメルンの笛吹き男』の真相は!?すべての謎が今、蘭子の名推理で解明される。本格推理の金字塔、ついに完結。(粗筋紹介より引用)

 ホント、怒濤の解決編(笑)。いろいろ矛盾あるけれどどうでもよくなる(笑)衝撃(笑劇?)の解決。いや、よく、これだけの世界を作り上げたね。本格で無駄に長いものが多い最近だけれども、この作品に限っては納得。『月長石』に捧げられた賛辞を二階堂黎人に送ろう(笑)。大甘だけど★★★★★。ただ、最後は蛇足だよ。




二階堂黎人『人狼城の恐怖 探偵編』(講談社ノベルス)

 十数人に及ぶ人命が易々と奪われた、あの怪奇的で残虐な、血みどろの「人狼城殺人事件」―背後には悪魔以上に怪物的な犯人が必ずいる!美貌と無類の知性で難事件を解明する名探偵二階堂蘭子は、義兄黎人とともに、この超絶的事件解決のため一路欧州へ。幽鬼のごとき殺戮者の魔手は、蘭子にまで伸びるか。(粗筋紹介より引用)

 この4編、無駄に長いところはないと思うが、削るとしたらここか。「蘭子フランスへ行く」笑劇とおさらい編。それなりに楽しめるが、本編とは別の楽しさ。これだけの事件ならこれだけのおさらいページも必要かなという気もするけれどね。★★★。ちなみに私の推理は黎人と一緒。ああ(笑)。




二階堂黎人『人狼城の恐怖 フランス編』(講談社ノベルス)

 独仏国境の峻険な山岳地帯に屹立する二つの古城。フランス側の「青の狼城」でも、凄惨極まりない殺戮事件が起きた。ナチスが遺した「星気体兵団」の亡霊を追って古城に踏み入った「アルザス独立サロン」のメンバーが残した日記には、驚愕の事実が記されていた!―すべての謎、そして事件解決の手がかりはすべて読者に提示された。(粗筋紹介より引用)

 ここから完結編までは一気読み。ドイツ編の印象が薄れていた(一応、目を通し直したのだが)こともあるし、書き方が違っていたこともあったので結構面白かった。日記形式の方が臨場感、伝わるね。★★★★。これでもうちょっとヨーロッパ(フランス)らしさが伝わったらなあ。




二階堂黎人『人狼城の恐怖 ドイツ編』(講談社ノベルス)

 『人狼城』は独仏の国境の峻嶮な渓谷の上に屹立する古城。城主を「人狼」に惨殺されたという言い伝えのある曰く付きの城だ。1970年西独の製薬会社が10名の客をこの城に招待した。長い間、人が近づくのを峻拒してきた城に滞在しはじめた人々の上に、伝説を地でいくような、身の毛もよだつ殺人事件が起きた―。(粗筋紹介より引用)

 読んでいたときは、これはどうなるんだろうとワクワクしていたのだが、何なの、このエンディング。欲求不満が高まるだけじゃない。けれどそれを除いたら楽しめたので★★★☆。多分、フランス編でも似たような事件が起きるんだろうなあと思っていたけれど、ここまで待たされるとはね。それに最後は余計。




浦賀和宏『時の鳥籠』(講談社ノベルス)

私は、この子がそう遠くない未来に死んでしまうことを知っている―初対面の少女の自殺を、何故か「私」は知っていた。「私」の生まれてきた理由は、その少女を救うためだから…。少女に出会った途端、意識を失った「私」が、過去を語り出すとき、日常は、呆気なく崩壊していく…。著者の感性が全編に横溢する新エンターテインメント。(粗筋紹介より引用)

 第5回メフィスト賞受賞者の第二作。前作『記憶の果て』の主人公が惚れた女の子、そして公園で倒れていた女の子を助けた医者、医者の高校時代のクラスメート。その3人+前作の主人公の姉が織りなす物語。いわば前作の隠れた部分の話なのだが、相変わらずの独りよがりさに辟易しつつも、前作よりは読みやすくなったので★☆。
 別にミステリとして見るつもりはないが、この独りよがりな部分はどうにかならないもんか。普通の文学としてもちょっとひどいんじゃないの、これ。前作は主人公の独白Onlyだったのであまりにも読みづらかったが、今回は3人の独白によって話が進むので少しはまし。けれど相変わらず分かりづらいし、一体何をやりたかったのかも不明。全く「感性」なんか読みとれないけれど、読みとれなくてもいいやと思うね。未だ青臭さも抜けないので、読んでいるこっちが逆にいらだってくる。せめてまともなストーリー作りをしてほしいね。




西澤保彦『実況中死』(講談社ノベルス)

 他人の見た風景がそのまま見えてしまう「怪能力」を得たばっかりに、殺人やストーカー行為をそのまま「体験」してしまう恐怖!切羽詰まった女性の訴えに、神麻嗣子と能解匡緒、保科匡緒の3人は、調査と推理を巡らす。そして辿り着いた、あっと驚く真実!君は西沢保彦が奇想した本格パズルを読みとれるか。(粗筋紹介より引用)

 超能力者問題秘密対策委員会出張相談員(見習)神麻嗣子の超能力事件簿シリーズ第二長編。けれど残念ながら★。『猟死の果て』が今年度の西澤保彦最大失敗作とするならば、今回の作品は今年度の西澤保彦最大駄作。前作で登場人物の造形が下手だと思いっきり書いたのだが、本作品では逆に登場人物に振り回されっ放し。登場人物がみんな暴走しているので話の収拾が全くついていない。ここまで穴だらけの作品は西澤保彦にしては珍しい。ちょっと疲れているんじゃないだろうか。