串間努『少年探偵手帳』(光文社文庫)

 かつて人気を誇った月刊雑誌「少年」の付録にあった「少年探偵手帳」の復刻版+串間努による新作版の2本。

 探偵にはちえがたいせつです。まず、ものを見たり、きいたりして、正しく、おぼえておくことです。
 また、なにかが起こるのには、かならずそのまえに、いろいろな、わけがあります。そのわけをよくしらべることです。ぼんやりと、そう思うだけではいけません。算数のように、きちんとしたかんがえかたをしなければならないのです。
 どんな学問でも、こういうかんがえかたで、しらべるのです。探偵と学問とは、たいへんよく似ています。どちらも、ちえの力で、しらべるものだからです。この探偵手帳をよく読んで、きみの正しくかんがえる力をつけてください。

 江戸川乱歩による序文である。昔はこのような付録がよくあったものだ。「きみにもできる変装術」や「モンタージュ写真の作り方」みたいな探偵の知識から、「手旗信号の十四の原画」のような知識、「手紙にスカシを入れよう」みたいな一般化学など多岐な範囲の内容で、よく探偵のまねごとをしたり、本の通りに出来るか実験したりしたものである。少なくとも私の世代より上(特に男の子)はやったに違いない。そういう意味で本当に懐かしさを感じる本である。今の小学生じゃこういう付録は受けないだろうなあ。
 とはいえ、ちょっとしたミステリクイズを作るならみたいな知識は結構得られるので、今の読者が読んでも結構面白く読めるんじゃないかなと思う。




貫井徳郎『光と影の誘惑』(集英社)

 「創元推理」に掲載された「長く孤独な誘拐」「光と影の誘惑」に書き下ろしの「二十四羽の目撃者」「我が母の教えたまいし歌」を含んだ短編集。
 貫井徳郎を読んで充実した気分になったのは久しぶり。私は勝手に社会派新本格と名付けているが、この人はリアリズムな舞台において本格を追求してきたので大きな損をしてきたと思う。
 個人的には表題や書き下ろしよりも「長く孤独な誘拐」を取りたい。作品群の中では一番古くに書かれた作品ではあるが、デビュー作『慟哭』を思わせる惨烈な結末が個人的に好きだ。しかし、いずれの作品も完成度の高い短編ばかり。短編集ながら貫井の代表作と言ってもよいだろう。また、今までと異なった明るいタッチで書かれた「二十四羽の目撃者」のような作品も今後書いてほしいと思う。




樋口有介『ともだち』(中央公論新社)

私立星朋学園の女子生徒(コギャル)が次々に襲われ、ついに殺人が…。神子上さやか、甘くて酸っぱい17歳の出来事。書き下ろし長篇ミステリー。(粗筋紹介より引用)

 赤川次郎の青春ミステリの対象が小説の同年代、いわゆる中学生、高校生が多いのに対し、樋口有介の青春ミステリはあくまで大人を対象とした青春ミステリ。だから、主人公が「今時、こんな純な高校生いないよ」みたいな設定でも構わないわけである。それでも今時の高校生をうまく取り込んでいると思うし、過去の作品と違って「青春」と「ミステリ」が五分に混じり合った良質な作品に仕上がっている。




天童荒太『永遠の仔』上下(幻冬舎)

 親からの虐待を受けて精神を病んで長期入院していた三人の少年少女。退院するとき、三人は「神に清められ自分たちは救われる」と信じ霊峰の頂上に登り、そして下山途中殺人を起こす。それから17年。一度も会うことの無かった三人が運命の再開を果たす。そして再び事件は起こる。
 『家族狩り』で山本周五郎賞を受賞してから三年。待ち望んだ新作は2385枚の大作であった。
 あれよ、あれよという間にベストセラーになりました。「このミス」の1位にもなりました。なぜか、直木賞には落選しました。私の1999年度のベスト1です。