無期懲役判決リスト 2019年度





 2019年に地裁、高裁、最高裁で無期懲役の判決が出た事件のリストです。目的は死刑判決との差を見るためです。
 新聞記事から拾っていますので、判決を見落とす可能性があります。お気づきの点がありましたら、日記コメントなどでご連絡いただけると幸いです(判決から7日経っても更新されなかった場合は、見落としている可能性が高いです)。
 控訴、上告したかどうかについては、新聞に出ることはほとんどないためわかりません。わかったケースのみ、リストに付け加えていきます。
 判決の確定が判明した被告については、背景色を変えています(控訴、上告後の確定も含む)。

What's New! 2月5日、さいたま地裁は桜井聖哉被告へ求刑通り一審無期懲役判決を言い渡した。
What's New! 2月6日、名古屋地裁は西田市也被告へ求刑通り一審無期懲役判決を言い渡した。



地裁判決(うち求刑死刑)
高裁判決(うち求刑死刑)
最高裁判決(うち求刑死刑)
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【最新判決】

氏 名
桜井聖哉(23)
逮 捕
 2018年12月19日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、強盗致傷他
事件概要
 さいたま市の無職桜井聖哉被告と建設作業員S被告は以下の事件を起こした。
  1. 2017年12月6日午前0時40分ごろ、さいたま市中央区新都心の路上で、歩いて帰宅途中の男性(当時61)の後方からバットで頭部を数回殴って金品を奪おうとし、外傷性くも膜下出血などで全治2カ月の重傷を負わせた。
  2. 6日午前1時半ごろ、さいたま市大宮区の歩道上で、通行中の無職男性(当時72)の頭部を背後からバットで殴り、ハンカチなどが入ったバッグを奪った。男性は4週間の重傷を負った。
  3. 6日午前3時45分ごろ、新座市の歩道で通行人の自営業男性(当時58)の頭部を金属バットで殴ってけがを負わせ、現金約3万円などが入ったバッグ1個を奪った。
  4. 6日4時30分ごろ、志木市の路上で通行中の会社員男性(当時63)の頭部を金属バットで殴って印鑑などの入ったリュックサック1個(約15,000円相当)を奪った。男性は14日に死亡した。
  5. 9日午後11時10分ごろ、さいたま市桜区の路上で、徒歩で帰宅中の会社員男性(当時33)から金品を奪うため、金属バットで顔などを数回殴り、全身打撲などの重傷を負わせた。通りかかったタクシー運転手男性が見つけ、2人は走って逃亡した。
 ほかに桜井被告は2017年9月12日午前2時40分ごろ、さいたま市中央区の路上で、近くに住む男性会社役員(当時52)の顔を数回殴って現金約30万円などが入ったバッグを奪い、鼻を骨折させるなどの重傷を負わせた。

 2人は高校時代の同級生。S被告が乗用車を運転し、桜井被告が実行した。防犯カメラの映像や聞き込みなどから2人を特定した。
 県警捜査1課と浦和西署などは12月19日、1の事件における強盗致傷容疑で2人を逮捕。2018年1月11日、2の事件における強盗致傷容疑で再逮捕。2月2日、3と4の事件における強盗致死、強盗致傷容疑で2人を再逮捕。2月27日、5の強盗致傷容疑で2人を再逮捕。4月11日、9月の事件で桜井被告を再逮捕。
裁判所
 さいたま地裁 入江猛裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2019年2月5日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2019年1月16日の初公判で、桜井聖哉被告、S被告共に「間違いありません」と起訴内容を認めた。
 検察側は「犯行態様が危険で結果も重大」と指摘。運転手役の菅原被告についても犯行を遂行する上で重要な役割とした。
 桜井被告の弁護側は「両被告は対等な関係で犯行に及んだ」と主張。菅原被告の弁護側は「信じやすい性格から桜井被告のうその話を信じ、事件の重大性を自覚できないままに犯行を重ねてしまった」とした。
 1月24日の論告で検察側は、「金品を奪う際、殴る部位を話し合って決めるなど、計画的で悪質な犯行。直接、強盗行為に関わってはいないが、検挙を免れるため、運転したS被告も主導的な役割で被害結果も重大」とし、「無差別的な連続強盗事件で、他に類を見ない最も悪質なもの」と指摘した。
 櫻井被告の弁護人は「無期懲役は重すぎる。行き当たりばったりの犯行で、計画性は高いものとはいえない」とし、懲役25年が妥当と主張した。また、S被告の弁護人は「櫻井被告にだまされて運転手に利用されただけ。強盗行為には直接、関わっていない」とし、懲役13年が適当とした。
 判決で入江裁判長は、「犯行を重ねる中で強い力で攻撃するなどエスカレートさせた面もあり、生命や身体を顧みない極めて危険な行為」と指摘。犯行後、速やかに合流することを考えて、携帯電話を通話状態にしていたことなどから一定の計画性を認め、「手っ取り早く金品を得るために短期間で連続的に犯行を繰り返したことから、強い犯意が認められる。被害結果も重大で、被害者の肉体的、精神的苦痛は計り知れない」とした。そして桜井被告には犯行の発案から実行行為までを担った実行犯としての役割を認め、「奪った金品など実質的な利得を独占し、その責任は格段に重い」と述べた。S被告については、車を調達して逃走を可能にしたことや連絡手段を確保したことなどから、「桜井被告が犯行を決意し実行することを心理的に後押し、分け前目当てに関与し続けた」と指摘。一方で、桜井被告の果たした役割に比べると従属的な面が否定できないことや被害弁償を行っている点などを考慮して、懲役16年が相当とした。
備 考
 S被告は懲役16年判決(求刑懲役18年)を受けた。

氏 名
西田市也(22)
逮 捕
 2018年8月1日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄、電子計算機使用詐欺
事件概要
 岐阜県大垣市の土木作業員、西田市也被告は、滋賀県愛荘町のアルバイトの少年(当時18)と共謀。2017年6月18日、滋賀県多賀町周辺で名古屋市のパート従業員の女性(当時53)を車のトランクに入れて現金約5万円やスマートフォン、タブレット端末などを奪った上、USBケーブルで首を絞めるなどして殺害。遺体をキャリーバッグに入れて隠し、20日にはバッグごと同町内の山林に埋めた。さらに7月3日と5日、女性のパスワードなどを使って、女性のインターネット上の専用口座からビットコイン約35万円分を自身の口座に移した。
 西田被告はビットコインに関するセミナーに参加し、セミナーに関わっていた女性と知り合った。女性が参加していた事業は会員を増やすほど自分のランクが上がり、報酬も増える仕組みだったため、女性は西田被告を会員になるよう勧誘していた。西田被告が女性を滋賀県大垣市まで誘い出していた。西田被告と少年は幼馴染だった。
 愛知県警は防犯カメラの映像などから西田被告を捜査。7月30日から任意で事情を聴くとともに、西田被告の自宅や車両を捜索し、自宅からは女性のスマートフォンやかばんが見つかった。31日、西田被告の供述から多賀町の山林を捜索して土中から女性の遺体を発見。8月1日、県警は西田被告と少年を死体遺棄容疑で逮捕した。8月20日、愛知、滋賀県警は強盗殺人容疑で2被告を再逮捕した。11月10日、電子計算機使用詐欺容疑で西田被告を再逮捕した。
裁判所
 名古屋地裁 斎藤千恵裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2019年2月6日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2019年1月23日の初公判で、西田市也被告は起訴内容について「この場では無罪を主張します」と述べた。
 検察側は冒頭陳述で、西田被告が滋賀県内の河川敷で、共謀したとされる元アルバイトの少年に「びびるな、やれ」と指示し、少年が両手で女性の首を絞めている間に、西田被告が顔にクラフトテープを何重にも巻き、USBケーブルを使って2人で首を絞めたと主張した。また、奪ったノートなどから、野田さんのビットコインについてインターネット上の専用口座のパスワードなどを割り出し、自身の口座に移して換金したと指摘した。
 弁護側は西田被告が当時、解離性障害を発症して心神喪失状態だったと主張した。これに対し検察側は精神科への通院歴がなく、合理的な行動をしていることなどから完全責任能力があったと反論した。
 30日の公判における被告人質問で、強盗目的を認めつつ「恨みはなかった。初めて会った時に殺意が湧いた。服装や行動がむかついた」「ゲームの中の敵役を倒し、報酬が得られるような感じだった」と述べた。現在の心境について「遺族から女性を奪ってしまったという思いもあるが、エンドロールを迎えたような達成感もある」と話した。共犯の少年については「1人で殺人行為に及ぶのが心細かった」と述べる一方、「殺害しろという意味で犯行を命令したわけではない」と話した。
 31日の論告で検察側は、被告に精神障害は全くなく、事件を主導し、事前に遺体を入れるキャリーバッグを準備するなど犯行は計画性があり達成に向け合理的に行動していて完全責任能力があると主張。「落ち度がないにもかかわらず殺害された被害者の無念は計り知れない。公判での証言も責任逃れに終始している」と指弾した。
 同日の最終弁論で弁護側は、「被告には解離性障害の疑いがあり、犯行を起こしたときは別の人格であり、責任能力はない」などと改めて無罪を主張した。
 西田被告は最終意見陳述で「友人などの法廷での証言は自分が事件を考え直す上で大きなものになる。判決を真摯に受け止めたい」と述べた。
 判決で斎藤裁判長は、「精神障害の入通院歴はなく、一貫して合理的な行動をしている。動機も異常性を疑わせるものではない」と退け、完全責任能力を認めた。共犯の少年が犯行をやめるよう呼び掛けたのに断念しなかったことを挙げ「犯意は強固で、人命軽視の態度ははなはだしい」と判断。その上で「利欲的で計画性の高い凶悪な犯行。被害者の苦痛や恐怖、絶望感は計り知れず、強い非難に値する。反省が深まっているとは言えず、遺族の処罰感情が厳しいのは当然」とした。
備 考
 共犯の少年は2018年11月22日、名古屋地裁(吉井隆平裁判長)で懲役18年判決(求刑懲役20年)が言い渡された。控訴せず確定。

 被告側は控訴した。



【2019年度 これまでの無期懲役判決】

氏 名
池田徳信(31)
逮 捕
 2016年7月9日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄、死体損壊、住居侵入
事件概要
 東京都世田谷区の無職、池田徳信(やすのぶ)被告は2016年6月20日ごろ、世田谷区のマンションの2階の部屋に忍び込もうとベランダから上ったが、鍵が閉まっていたため、一つ上の3階に住む無職の女性(当時88)の部屋の窓の鍵が開いていたため、侵入。寝ていた女性が驚いて大声を出したため、首を絞めるなどして殺害し、現金約35万円を奪った(ただし現金を奪ったことは裁判で認められなかった)。さらに、室内にあった包丁で女性の遺体を浴室で切断。一度帰宅した後、翌21日に忍び込み、遺体を持出し区立碑文谷公園内の池に遺棄した。
 池田被告は当時、女性のマンションから約500メートルのマンションに母親と二人暮らしだった。
 6月23日午前10時半ごろ、公園の清掃作業員の男性が切断された一部が池に浮いているのを見つけた。その後の捜索で首や腰、両手足などが見つかった。捜査本部は7月3日に池の水を抜いて約50人態勢で大規模な捜索をした。
 池田被告が女性のマンションに出入りする姿や、公園近くにいる姿が防犯カメラに映っていたことや、池田被告の足跡などが見つかったことから、警視庁碑文谷署捜査本部は9日、池田被告を死体遺棄容疑で逮捕した。8月2日、強盗殺人容疑で再逮捕した。遺体は8月17日、すべての部位が見つかった。
裁判所
 最高裁第二小法廷 山本庸幸裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2019年1月8日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 目黒区は事件後、警察捜査と園内の整備に伴い、一部を除き区立碑文谷公園を閉鎖していた。2016年9月15日、公園の利用を10月3日に再開すると発表した。園内の防犯対策に向けた整備が終了したためで、同日再開式も行う。また、池のボートは10月8日に再開した。
 2017年9月29日、東京地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2018年4月25日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
ランパノ・ジェリコ・モリ(37)
逮 捕
 2017年9月2日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、強姦致死
事件概要
 フィリピン国籍のランパノ・ジェリコ・モリ被告はフィリピン国籍の少年2人(事件当時19、18)と共謀。2004年1月31日午前0時から6時半ごろまでの間、茨城県阿見町の路上で、散歩で通りがかった茨城大農学部2年の女子学生(当時21)の腕をつかんで車に連れ込み、美浦村舟子の清明川に向かう車内で暴行を加え、手などで首を絞めた。さらに、清明川の河口付近で首を刃物で複数回切るなどして殺害した。  ランパノ被告は母親らと2000年に入国。事件当時、ランパノ被告は土浦市内に住み、美浦村内の電器部品加工会社に勤務していた。女子学生と面識はなかった。
 遺体は31日の午前9時半ごろ、発見された。
 ランパノ被告や共犯の2人は2007年にフィリピンに出国するも、ランパノ被告は再び日本に入国。2010年からは岐阜県瑞浪市に母親や妻、子供らと住み、工場に勤めていた。
 茨城県警は交友関係を中心に調べるもトラブルは無く、犯人につながる手掛かりが乏しく捜査が長期化。県警は殺人罪などの公訴時効が2010年に撤廃されたことを受けて、未解決事件に専従する捜査班を翌年に設置した。新たな情報提供を呼びかけるなどした結果、2015年に情報が寄せられ、ランパノ被告が捜査線上に浮上。捜査を続けた結果、ランパノ被告が友人らに対し、事件への関与をほのめかしていたことが判明。遺体に付着した微物のDNA型がランパノ被告のものと一致した。茨城県警は2017年9月2日、岐阜県瑞穂市で工員として働いていたランパノ・ジェリコ・モリ被告を強姦致死と殺人の疑いで逮捕した。また県警は同日、ランパノ被告の妹と日本人の夫について偽装結婚したとして電磁的公正証書原本不実記録・同供用容疑で逮捕、さらに夫と同居するタイ国籍の飲食手順従業員の女性を入管難民法違反(不法在留)容疑で逮捕している。
 9月5日、茨城県警はフィリピン国内にいると思われる共犯2人の逮捕状を取り、国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配した(なお1人についてはフィリピンで日本の取材に応じている)。ただし日本とフィリピンとの間には事件捜査の協力を要請できる「刑事共助協定」がなく、容疑者の身柄引き渡しに関する条約もないため、フィリピン政府に引き渡しを求めることができない。
裁判所
 東京高裁 栃木力裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2019年1月16日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2018年12月12日の控訴審初公判で、弁護側は、一審判決が重すぎると主張。検察側は控訴棄却を求め、即日結審した。被告人質問でモリ被告は「被害者に申し訳ない。罪を償い、社会に出られたらきちんと生活したい」と述べた。
 判決で栃木裁判長は、モリ被告は、女性に乱暴し口封じのため殺害することを、事前に他2人と話し合って事件を起こしたと指摘。通りすがりの被害者を暴行し、発覚を防ぐため殺害したと認定し、「被害者の人格を踏みにじる卑劣な犯行で、殺害態様も残虐。被告が反省していることを踏まえても、無期懲役が相当だ」とした一審判決は適切と判断した。
備 考
 2018年7月に改正刑法が施行され、強姦罪は「強制性交罪」に変わり、法定刑が引き上げられた。ただ今回の事件は2004年に発生しており、改正前の刑法が適用された。
 2018年7月25日、水戸地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。上告せず確定。

氏 名
少年(19)
逮 捕
 2018年3月2日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入
事件概要
 千葉県茂原市の土木作業員の少年A被告(事件当時18)は、同市内のアパートで同居する無職少年B(当時18)、無職少年C(当時17)と共謀。2018年2月26日午前1時15分ごろ、同市に住む女性(当時85)宅に侵入。寝室で女性を床に押し倒して殴ったり首を絞めるなどして現金約12,000円を盗み、包丁で首を3回刺して殺害した。
 女性は長女と同居していたが入院したため1人で生活。近くに住む長男夫婦が頻繁に訪れていた。
 26日午前8時55分ごろ、長男の妻が倒れている女性をみつけ、119番通報。3月2日、捜査本部は少年3人を強盗殺人と住居侵入の疑いで逮捕した。
 千葉地検は3月19日、少年A被告と少年Cを千葉家裁に送致した。同家裁は同日、2週間の観護措置を決定した。23日、少年Bを千葉家裁に送致した。家裁は同日、2週間の観護措置を決めた。4月3日までに千葉家裁は少年A被告に対し、2週間の観護措置延長を決定した。千葉地検は同日、少年Bと少年Cを別の窃盗事件で再逮捕した。千葉家裁は4月13日、少年A被告を検察官送致(逆送)とする決定をした。千葉地検は20日、強盗殺人罪などで少年A被告を起訴した。
 県警捜査3課は6月7日、茂原市を中心に2017年12月〜2018年3月に相次いだ窃盗事件約50件に関与したとして、少年B、少年Cを含む同市などの17〜19歳の少年5人を窃盗などの容疑で逮捕・送検したと発表した。そのうち少年Bと少年Cは事件前日の2月25日未明から早朝にかけて、盗み目的で女性方に侵入し金品を物色していた。千葉家裁は6月29日、少年Bと少年Cを検察官送致(逆送)とする決定を出した。千葉地検は7月6日、少年Bと少年Cを強盗殺人や住居侵入などの罪で起訴した。
裁判所
 千葉地裁 川田宏一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2019年1月24日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2019年1月15日の初公判で、少年は強盗目的で殺害したことを認めた。一方で「お金を取ったことは分からない」と述べた。
 冒頭陳述で検察側は、同市内のアパートで同居していた共謀の2人に強盗に誘われ、指紋を残さないようにゴム手袋をして女性宅に侵入し、目を覚ました女性をあばら骨が折れるほどの力で床に押さえ付けたと指摘。他の2人が室内を物色し現金を強取したが大金は見つからず、女性が「金は腹の中にある」「殺すなら殺せ」と言ったため、被告少年がナイフを持ってくるように指示し首を3回刺したと述べた。犯行後、少年Cから現金1万円を受け取り、事件時に履いていたスニーカーを用水路に捨てたこと、強盗を「たたき」と呼んでいたことを明らかにし「殺害を実行して主要な役割をしている。事前に役割分担し計画的で悪質」と批判した。弁護側は「現金を盗んだという事実まで認められるかは疑問。現金を受け取ったことは事実だが、事件の時に取ったものなのか」と述べ、現金強取の有無について争うとした。
 検察側は「孫をかわいがり、よくお小遣いをあげていた。なぜ母を殺したのか。厳重に処罰してほしい」とする女性の長男の調書を読み上げた。
 同日、少年らと同居していた男性が証人として出廷。事件当時の状況を話し、少年B、Cがふざけた様子で少年を「殺人鬼」と呼び、少年は「うるせーよ」と答えたと証言。2人は「1万2、3千円取った」「1万円で殺人は安いよな」などと話したという。また、男性は少年B、少年Cらと事件前日に金品を盗む目的で被害者宅に侵入し、共謀少年が被害者の通帳を見つけ、多額の預金があることを確認。現金が見つからなかったことから、共謀少年らが強盗を意味する「“たたき”をしないか」と話していたとした。
 16日の第2回公判で少年Cは、犯行後の帰宅途中に1万円札を被告少年に手渡したとし「想定外の殺人を目にして、持っていたくなかったのであげる意味だった」と証言。1万円札については「(少年Bが住宅の)どこかから手に入れて渡してきたと思った」と、犯行現場の住宅寝室で少年Bから受け取った紙幣だったと明らかにした。証人尋問で少年Cは、少年Bが強盗を持ち掛けたとし、当初ためらっていた被告少年に対し「できねぇのかよ」と挑発するように話していたとした。また、被告少年が被害者を押さえ付けたのを確認してから、室内の物色を始めたと述べた。少年Bは公判を控えるため「黙秘する」と証言を拒否した。
 17日の第3回公判の被告人質問で少年は、当初は被害者の首を絞めて気絶させ、その間に金を盗んで逃げるつもりだったが、金が見つからず、気絶した被害者が目を覚まし「金は腹の中にある」「殺すなら殺せ」と話したため、「頭が真っ白になり、どうにでもなれと思った」という。取りに行かせた包丁で首を1回刺した後、共謀した少年Bから「とどめを刺せよ」と言われ、さらに2回刺したとした。強盗を行った理由を、少年Bから「そんなこと(強盗)もできないのかよ」と挑発され、「ばかにされたくない思いから誘いに応じてしまった」と説明。報酬とされる1万円札について、共謀の少年Cが犯行後の帰宅途中に手渡したと証言したのに対し「(自宅アパートの)リビングで受け取った」と述べた。また、被害者と遺族へ「人生を奪ってしまい申し訳ない。取り返しのつかないことをしてしまった。心から反省しています」と謝罪の言葉を口にし、「更生することが自分ができる償いだと思います」と続けた。
 18日の論告で検察側は、強盗に入ったのに金のありかが分からず、思い通りにならないことに怒り、被害者を殺害した」と指摘。「殺害など主要な役割を積極的に行った。当時18歳だったが成人と変わりない。犯行は同種の強盗殺人事件の中でも重い部類で、酌量減刑には当たらない」と主張した。
 同日の最終弁論で弁護側は、現金の強取に疑いが残るとした上で「まだ未熟。少年には更生する可能性がある。無期懲役は重過ぎる」として、少年法に基づき懲役10〜15年の不定期刑が妥当とした。
 最終陳述で少年は「心から反省しています」と謝罪した。
 判決で川田裁判長は、被告は当初は強盗の誘いを断っていたが、自ら手袋を準備し率先して暴行し、凶器のナイフを持ってくるように指示して殺害したと認定。義娘が現金を管理していた女性の財布から1万円札がなくなり、財布に物色された跡があったことや、事件現場の寝室で共謀した少年が別の少年に1万円札を手渡したことから、現金強取を認定。そして「強盗には計画性があり、少年は率先して主体的に重要な役割を果たしていた。被害者が金の在りかを言わないことに憤慨し、殺害の動機も身勝手で、とどめを刺すために首を包丁で突き刺す行為は残忍で悪質」と指摘。少年の育った環境や性格が事件に及ぼした影響は限定的とし、「(事件当時)少年は18歳4カ月だったが、結果は重大で刑事責任は極めて重い」と述べた。
備 考
 被告側は控訴した。

氏 名
横山拓人(25)
逮 捕
 2018年5月31日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、建造物侵入、窃盗、窃盗未遂
事件概要
 静岡県御殿場市のクレーンオペレーター、横山拓人被告は、神奈川県厚木市の無職武井北斗被告、甲府市の土木作業員W被告、山梨県甲斐市の建設作業員N被告と共謀。山梨県昭和町の貴金属買取店の金品を奪おうと計画した。
 2016年11月26日午後9時ごろ、甲州市に住む貴金属買取店店長の男性(当時36)宅に武井被告、横山被告、W被告が2階の窓や玄関から侵入して待ち伏せ。N被告が会社から帰宅する男性を尾行。帰宅した男性の頭や胸などを棒状の物で強打して殺害し、店の鍵1束と乗用車1台(約503,000円相当)などを奪った。27日未明、長野県南佐久郡南牧村の畑で男性の遺体を畑の所有者の重機を使い、遺体を埋めた。さらに4被告は27日午前3時ごろ、男性が店長を務めていた昭和町の貴金属買取店に侵入。商品の貴金属を奪おうとしたが、警備システムが働いて警備員が駆け付けたため、何も取らずに逃走した。
 同日午前、男性の遺体が畑で見つかり、畑から約2km離れた村道脇では、男性が仕事で使っていた車が全焼した状態で見つかった。
 甲府市の会社役員を強盗目的で襲い死亡させた罪で2018年2月に逮捕された武井北斗被告の足跡と、遺体の遺棄現場に残された足跡が似ていることが判明。さらに防犯カメラの映像や携帯電話の通信履歴から武井被告らが現場にいたことがわかった。2018年1月に東京都武蔵野市で別の強盗傷害事件を起こして武井被告とともに起訴されたW被告が、山梨、長野両県警の任意の事情聴取に対し、武井被告とともに男性の遺体を遺棄したことを認めた。
 山梨、長野県警の合同捜査班は2018年5月31日、横山被告とN被告を逮捕した。6月1日、武井被告を逮捕した。6日、W被告を逮捕した。さらに数日前に貴金属買取店などを下見していたとして強盗予備容疑で28日までに金丸拓人被告(別事件の強盗致死他で起訴済み)を再逮捕した。

 他に武井被告、金丸被告、横山被告、N被告は2016年11月20日午後11時半ごろ、甲府市内のガソリンスタンドの事務所に侵入し、売上金など現金13万8千円が入った耐火金庫1台(1,000円相当)を盗んだ。同21日午前1時55分ごろ、同市内の車両整備会社の事務所に侵入し、金庫をこじ開けようとして失敗した。
裁判所
 甲府地裁 丸山哲巳裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2019年1月28日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2019年1月15日の初公判で、横山拓人被告は事件への関与は認める一方、「殺害するつもりはなく、被害者を殴るなど暴行をしていない」と、起訴内容の一部を否認した。
 冒頭陳述で検察側は、横山被告が武井北斗被告とW被告とともに男性に暴行したと指摘。横山被告が体当たりしたり、土木用のハンマーで殴ったりするなど、暴行に関わっていると指摘した。弁護側は、横山被告が男性と面識があると勘違いし、自宅での暴行には加わらず、外で見張りをしていたと主張した。殺意も無く、強盗致死にとどまると訴えた。
 この日出廷した証人は、武井被告から聞いた話として、貴金属買い取り店を狙った理由を証言。「武井被告が『昔、盗品を売りに行ったら通報されて検挙された恨みがある』と話していた」と述べた。  16日の第2回公判でW被告が出廷。男性への暴行は、武井被告、W被告、横山被告の3人で行ったと説明した。W被告は「横山被告が体当たりし、土木用のハンマーで胸を殴っているのを見た」と証言。検察側から「横山被告は外で見張りはしていないのか」と問われると「一切していない」と述べた。
 17日の第3回公判で武井被告が出廷。しかし弁護側から横山被告との関係を問われても「自分の裁判が終わっていないので何も話すつもりはない」と述べた。その後は「全然気分が乗らない。話すことは特にない」などと具体的な証言を拒み、5分足らずで終了した。
 同日の被告人質問で、横山被告は自身の役割について「見張りならやると引き受けた」と話し、男性への暴行を改めて否認した。W被告の証言に大しては「(計画に)誘い込んでしまったから恨まれていたかもしれない」と語った。
 22日の論告で検察側は、W被告が「横山被告を含む3人で侵入して暴行した」と証言したことを挙げ、「(W被告は)自ら出頭し証言していて、信用できる」と説明。ハンマーで執拗に胸を殴るなど暴行を加えているとし、「強い殺意が認められる」と指摘した。また横山被告が武井被告に金銭の相談を持ち掛けたことが犯行のきっかけで主導的な立場にあったと指摘し、「目的は金品であり、身勝手で悪質。ハンマーで胸を殴ったりするなど、凶悪かつ危険な暴行を加え、強い殺意が認められる。反省の情も口先だけで皆無だ」と指弾した。
 弁護側は最終弁論で、武井被告との共謀を否定。横山被告が暴行したことを示す直接的な証拠はないとし、W被告の証言も「現場の状況と矛盾し、信用できない」と指摘。被告は見張り役だったとして暴行への関与や殺意を否認し、強盗致死罪が相当だとした。
 判決で丸山哲巳裁判長は、、横山被告が武井被告とW被告とともに、男性に暴行を加えたと認定。「3人で暴行した」としたW被告の証言を「客観的事情と整合し、大筋で信用性が認められる」と判断した。一方、横山被告が「外で見張りをしていた」と主張していることについては「不自然、不合理で信用できない」と退けた。「ハンマー様の凶器で胸部を多数回殴打した」とし、殺意と強盗殺人の共謀についても認定した。そして「横山被告が金を欲して計画されたもので、武井被告とともに事件を主導し、主犯の一人」と指摘。証拠隠滅や共犯者への口止めにも触れた上で、「謝罪や反省が真摯なものとは言えない。刑事責任は極めて重く、酌量減刑する余地はない」と指弾した。
備 考
 強盗殺人などに問われたW被告は2018年11月30日、甲府地裁(丸山哲巳裁判長)の裁判員裁判で懲役30年(求刑同)判決。量刑については、共犯者の指示を受けて犯行に及び、警察に出頭して捜査に協力したとして酌量の余地があるとした。被告側控訴中。
 強盗致死などに問われたN被告は2018年12月14日、甲府地裁(丸山哲巳裁判長)の裁判員裁判で懲役20年(求刑懲役25年)判決。被告側控訴中。

 被告側は控訴した。




※最高裁は「判決」ではなくて「決定」がほとんどですが、纏める都合上、「判決」で統一しています。

※銃刀法
 正式名称は「銃砲刀剣類所持等取締法」

※麻薬特例法
 正式名称は「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」

※入管難民法
 正式名称は「出入国管理及び難民認定法」



【参考資料】
 新聞記事各種



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