犯罪を追いかけるルポライターの第一人者朝倉喬司と、劇団を主宰しながら犯罪問題に対する発言を続ける山崎哲が、1980年代前半の犯罪について徹底的に語り尽くす対談集。
【目 次】
1 加藤清孝の代表するたった一人の「闘い」
2 金属バットが拒否した戦後家族の到達点
3 イエスの方舟に乗って漂流した「被家族」
4 虚妄に満ちた暴力体質――戸塚宏的論理と方法
5 片桐「逆噴射」機長の見たすばらしき妄想
6 「恐怖の三十分間」を必要とした朝倉幸治郎の執念
7 対幻想をなさぬ男女関係――藤村美葉と藤田正
8 「愛」に生きたヒロイン――伊藤素子と奥村彰子
9 富士見産婦人科病院事件を「報じた事件」の構造
10 失われし匂いを求めて叛乱する流民たちの異和感
11 支配権力構造のなかで拡大する恨みと腐敗
12 すきなんや わしら 「かい人21面相」 すきなんや
13 三浦和義という存在はフィクションである
14 近代を超えようとした永野一男の「白い道」
対談後記
犯罪を語らせれば右に出る者はいない?朝倉喬司と山崎哲が四日四晩、1980年代の犯罪について語り尽くした対談集。
マスコミみたいにただ犯罪者への非難の視線をあびせるのではなく、様々な方面から事件にアプローチするため、新聞等だけでは見えなかった事件の裏側が浮かび上がってくる。とはいえ、色々と事件名や犯人の名前がどんどん出てきて、気がついたら脱線しているような気がしなくもない。それでも「社会から断絶された犯罪者の方が、圧倒的に時代を投影している」という山崎の言葉や「新聞報道とか、犯罪ルポの多くは、社会問題という文脈で犯罪を見るんですね。それで終始してしまうと、犯座は見えない」という朝倉の言葉には納得がいく。
それにしても犯罪を肴にして笑いの絶えない対談、というのは不謹慎じゃないかと思ってしまうのは事実。しかし、当事者でない人にとっては、それもまたリアルな現実なのだろう。こういうスタイルの方が、犯罪や事件に対する本音が見えてくるのかもしれない。
ただ、こういう対談が不謹慎と思われる方は、読まない方が吉。
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