佐藤友之 『死刑囚の一日』
(現代書館)


発行:1992.6.15



 死刑囚が日々どのように過ごしているか。
 法務省、監獄当局は完全な秘密主義をとっており、死刑に関する情報は一切明らかにしない。最近でこそ、いくつか本が出されているものの、不明な点は数多い。
 筆者は、実在の人物「彼」を通すことにより、死刑囚の一日の過ごし方を、朝、昼、夜の三章に分けて紹介している。また、「彼」の例から、序章 死刑台への道、そして終章 最後の朝を記し、いかにして死刑囚が作られるのか、そして死刑囚がどのように処刑されるのかをも書き残している。
 死刑囚が、「死ぬ」までどのように「生かされるのか」。あまりものひどい扱いに、憤りを感じる人がいるかも知れない。逆に、それだけの事件を引き起こし、多数の命を奪ったのだから、それぐらい当然と思う人がいるかも知れない。どちらにしても、何も知らされていない私達は、死刑を賛成するにしろ、反対するにしろ、現在の死刑囚の状況を知る必要がある。
 なお、本書に記されているデータはあくまで執筆当時のもので、現在とは異なる可能性があることを付け加えておく。

【目 次】
序 章 死刑台への道
第一章 朝――長い夜の終わり、そして、きのうの続き
第二章 昼――白茶けた真昼の論理。あるいは、感性の失われた世界
第三章 夜――実の時間と虚の時間、明日なき明日への予告
終 章 最後の朝


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