村野薫『死刑はこうして執行される』(講談社文庫)
発行:2006.1.15
プロローグで語られるのは、2004年9月14日の執行について。戦後から数えて622人目の受刑者である宅間守の執行について、各マスコミは大々的に報じた。増え続ける死刑判決。そして待ち受けている大量執行。死刑廃止の世界的風潮に逆らうかのように、日本政府は死刑制度に固執する。特に法務・検察当局は、1990年から3年間続いた死刑モラトリアム以後、死刑制度の維持という強固な姿勢を続けるようになる。
この本は、「密航主義」や「人権」といった大義名分のもと、こういった特殊権能集団によって隠されつづけている「死刑の現場」を検証、「死刑囚のつくられ方」をみていくなかで、死刑そのものの構造に迫ろうというものである。
(一部、プロローグより引用)
【目 次】
プロローグ―宅間処刑の衝撃
第一章 ニッポンの死刑
- 「遺族の感情」と「冤罪の可能性」
- 刑法第三十九条と少年法、時効と恩赦
- 「絞首刑」の実態
- 七つの死刑執行場
第二章 「被告」が「死刑囚」になるとき
- 極刑相当とは
- 裁判官と弁護士
- 判決理由からの朗読
第三章 獄中の日々
- 死刑囚の生活
- いつか確実に訪れる「その日」の恐怖
- 高齢化する死刑囚
第四章 死刑執行
- 法務大臣のサイン
- 歯車は回りだす
- “お迎え”
- 死までの約十五分
エピローグ―執行された遺体の行方
あとがき
死刑確定数と執行率一覧
死刑執行のサインと法務大臣
死刑や犯罪ものを書き続けている村野薫の最新刊。日本における死刑を語り、そして死刑というシステムに触れていく。死刑廃止派が叫ぶような主義主張はない。あくまで死刑という刑についてのみアプローチしているだけだ。この本は、プロローグにも語られているように、死刑というシステムを知るための本である。
今まで数多くの本を書いてきた村野薫なので、死刑や犯罪についてはお手の物。今まで得てきた知識を縦横無尽に活用している。文庫本ということもあるのか、平易な言葉使いが多い。その章のテーマに相応しい死刑囚のエピソードが数多く、そして実名で語られるため、犯罪者ウォッチャーにも満足のいく一冊である。ただし、そのエピソードのおかげで死刑という中心線からやや横道にそれてしまったところも多く、話題が拡散してしまった感はあるが。
最新版の死刑入門書。この本の位置付けはそれでいいだろう。死刑廃止派が偏見を持って語る本より、よっぽどためになる。
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