黒木昭雄『警察はなぜ堕落したのか』(草思社)


発行:2000.8.1



 桶川ストーカー事件から栃木のリンチ殺人事件まで、相次ぐ警察の失態によって、何人もの死者が出てしまった。いずれも、警察の怠慢、住民の訴えへの無関心が原因だ。「キャリアの経歴にキズをつけてはいけない」という恐るべき独善的な論理、現場感覚を無視した官僚主義など、元警察庁巡査部長が事件の背後にある堕落の構造を解明する。(折り返しより引用)
【目 次】
第一部 警察不祥事の裏面 現場踏査で判明した捜査の失態
 1 栃木リンチ殺人事件 栃木県警はなぜ、リンチ恐喝を放置していたのか
 2 桶川ストーカー殺人事件 埼玉県警はなぜ、主犯を野放しにしたのか
 3 京都小学生殺人事件 京都府警はなぜ、容疑者をその場で拘束しなかったのか
 4 バスジャック事件 山口県警はなぜ、バスを先送りにしたのか
 5 名古屋五千万円恐喝事件 事件への対応を遅らせた真相は何か
 6 長野の警察官拳銃不正使用事件 熱血警官はなぜ、免職になったのか

第二部 堕落の構造を解き明かす
 1 私が警察官を辞めたわけ もうこんな組織とはおさらばだ
 2 恐るべきキャリア制度の実態 洗脳と服従がつくりあげた独裁体制
 3 警察学校での洗脳教育 ロボット警察官はどのようにしてつくられるか
 4 昇任試験制度のカラクリ 実務能力主義を標榜する警察の大ウソ
 5 所轄の弊害 縄張り争いが生む醜い人間関係
 6 監察制度の悪用 秋田県警はなぜ、民間人にまで監察をおこなったのか

おわりに 警察は立ち直れるか

 作者の黒木昭雄は1957年東京都生まれ。1976年に警視庁に入庁。23年間の在職中に23回の総監賞を受ける。1999年、荏原署巡査部長を最後に依願退職。以後は、警察ジャーナリストとして活動中。
 第一部は、それぞれの事件で起きた警察の不祥事について言及している。各事件で語られる警察の失敗、問題点、さらには警察側から見た同情点などが、さすがに元警察官だなと思わせる視点で書かれている。単なる失敗点だけをあげつらうのなら、そこら辺のマスコミとやることが変わらないが、警察組織の動きなども考えた追求はなるほどと思わせるものがある。そういう意味では、なかなかよく書かれているものだろう。
 ただし、興味深く読めるのは第一部まで。第二部になると、キャリアに牛耳られてしまい、組織保全に汲々とするだけの警察組織の問題点を次々とあげているように見えて、結局は自らの怨念を吐き出しているに過ぎないもので終わってしまっている。
 ここで書かれている警察は本当に醜い。とても市民の味方とは思えない姿をさらけ出している。ただ、この本を読む限りでは、追い出される結果となった作者の怨念の方が強いものになっている。自分のことなどを絡めずに、もっと一般的なことを書けなかったのであろうか。

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