死刑問題を考える上で、死刑囚を知るということは重要だ。本書では小平義雄、平沢貞道など23人の死刑囚を中心に、合計百人の死刑囚について言及している。なぜ人は事件を起こすのか。なぜ彼らは死刑になるのか。お涙ちょうだいではなく、客観的に死刑囚を書くことにより、死刑という制度そのものの問題点をあげると同時に、死刑とはなんであるのかを鋭く抉っている。死刑囚を見ることにより、死刑そのものの時代の流れを見ることができる。
収録は以下。
戦争 兵役で知った性への異常心理
恩赦―戦争の混乱で消えた公判記録
少年―「死」を恐れないたった十数年の人生
逆転死刑―"愛人"に裏切られた宿怨殺人の顛末
弁護放棄―被告に"死刑判決"を下した弁護人
一票の差―生死をわけた最高裁長官の"死刑支持"
境界線―類似犯罪の判決は片や死刑、片や無期
自白―最高検察庁を動揺させた"秘密通信"
誤殺―兄の身がわりに処刑台に立った弟
差別―ライ病患者への偏見が事件の出発点
獄中訴訟―処刑場をみずから現場検証した訴訟魔
生贄―「世論」も支持する極悪非道人の処刑
死刑志願―騒音問題が引き金となった自殺目的の殺人
模範囚―死刑執行の現場を記録した録音テープ
脱獄―逃走十一日におよぶ戦後最大の脱獄劇
自殺―国家の手になる「死」を拒否した誘拐殺人犯
発狂―残してきた子を思う精神的葛藤の結末
獄中歌人―処刑前夜、安らかに最後の投稿歌
獄中結婚―信仰により出会った"金網越し"の愛
執行命令―一度に二十三人の刑執行にサインした法相
時効―戦後日本の死刑制度を象徴した男の死
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