沖田臥竜『迷宮 三大未解決事件と三つの怪事件』(サイゾー)

発行:2020.9.20



■迷宮入り事件の謎と真実に迫る■
 多くの人の記憶にいまだ鮮明に残っているのではないだろうか。
 残虐な手口で人々の命を奪うも、その後、犯人逮捕に至っていない平成に起きた三つの未解決事件「世田谷一家殺人事件」「八王子スーパーナンペイ事件」「柴又・女子大生放火殺人事件」。
 これらの事件解決のために、警察はどのような捜査をしたのか。犯人逮捕に至らなかった理由はなんなのか。
 現在、有力視されている犯人像とは。
 さらに、いまだ報道されていない「自殺と判断された」不可解な男性の死。その後、妻に疑いの目は向けられたが、「ある事情」から、警察は捜査に二の足を踏むことになる。
 女性の背後に超大物の存在が見え隠れしだしたのだ。この「文京区変死事件」を初レポート。
 また、16年のときを経て、驚愕の展開を経て「解決」をみた「足立区強盗殺人事件」。44人の死者を出した「歌舞伎町雑居ビル火災」。
 放火とおぼしきこの火災に結びつく、殺人事件とは。
 膨大な資料と緻密な取材から浮かび上がった、それぞれの事件と犯人を結ぶ「点と線」。
 それらが結ばれたとき、事件の全体像、そして犯人像が見えてくる――。
(出版社からのコメントより引用)

 本書は、「未解決事件の真相に迫った」ことを売りにする、これまでに書かれたすべての書物を否定する。警察のやり方を批判し、勝手な推理をし、事件の真相に迫ったと豪語する内容は、確かに読む分には面白いかもしれない。だが、その本の著者が言うように、本当に「真実なるもの」が書かれているかといえば、答えはノーである。理由は単純である。犯人が逮捕されていないからだ。本書は、安易に「未解決事件の真相に迫った」などとうたうことはしないが、警察の捜査情報や報道事情も踏まえて、それぞれの事件でわかっていることをまとめたものである。(「はじめに」一部より引用)
【目次】
はじめに
第1章 文京区変死事件
第2章 足立区強盗殺人事件
第3章 歌舞伎町雑居ビル火災
第4章 世田谷一家殺害事件
第5章 八王子スーパーナンペイ事件
第6章 柴又・女子大生放火殺人事件


 平成に起きた三つの未解決事件「世田谷一家殺人事件」「八王子スーパーナンペイ事件」「柴又・女子大生放火殺人事件」と、三つの怪事件「文京区変死事件」「足立区強盗殺人事件」「歌舞伎町雑居ビル火災」についてレポートしたものである。
 正直言って、なぜこれらの事件を取り上げたのかはわからない。「はじめに」を読むと、紹介されたAさんという人物が未解決事件に深く興味を抱き、知識や情報を持っていることから、二人三脚で作り上げていったという。これらの事件が共通するところは、未解決事件であるということだけだ。これらの事件がなぜ未解決になったのか、などというところにはほとんど触れられていない。
 後半の未解決事件については、新聞や週刊誌の記事をまとめただけともいえ、大して興味を引くものはない。
 一方、前半の三つについては少々異なる。
 「文京区変死事件」については、本などにまとめられたリポートはこれが初めてであろう。自殺の可能性が高い不審死として処理されている。本文の中で、「再婚相手がある業界の大物ともいえる人物」と書かれており、これ以上の詳細な内容はない。この事件は、後に『週刊文春』で殺人事件をもみ消したのではないかと取り上げられ、世間に広まる。この業界の大物とは、衆院議員で元内閣福官房長官のKである。
 「足立区強盗殺人事件」は事件から16年経って犯人が出頭、自供して解決した事件である。目新しいことはなく、このラインナップに加えるのは疑問である。
 「歌舞伎町雑居ビル火災」は有名な火災事件であり、まだ未解決である。作者は、関連人物の周辺で起きた事件なども取り上げ、事件の裏側を明らかにしようとしている。ただ、作者は「はじめに」で「「未解決事件の真相に迫った」ことを売りにする、これまでに書かれたすべての書物を否定する」と書いているが、これって「未解決事件の真相に迫った」内容になっていないかい?

 結局ただのレポートで終わっており、面白みに欠ける一冊である。事件が未解決になった理由や要因にもう少し迫ってほしかった。

 作者の沖田臥竜は、社会事件から、裏社会、政治、芸能まで、幅広いフィールドで執筆する作家。映像作品の企画、原作、監修なども務める。著書多数。(作者紹介より引用)

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