三國隆三『死刑囚 極限状況を生きる』(展望社)

発行:2004.6.10



(前略)
 一般的にいって、世界の大勢は死刑廃止に向かっている。わが国も早晩、死刑廃止を決断すべき時を迎えるだろう。そのために、私たち一人一人がその存廃を判断するためにも、国民に情報が与えられていない「塀の中」へ、一歩も二歩も、足を踏み入れてみる必要がある。
 そのために、囚人たちの中でも、ほんの一握りの死刑囚のことをもっと知ろうというのが本書のテーマである。この春、法務省が刑法改正の要綱案を「法制審議会」に諮問したのを機会に、一般人も「塀の中」の実情にきちんと目を向けるようにしたい。
 第1部は、受刑者たち――とくに死刑囚は、監房(舎房ともいう)の中でどんな生活をしてきたか。規則はどうなっているか、冤罪とはどう闘ってきたかを二章にわたって見る。第2部は、ドキュメント「これが死刑だ!」をテーマとする第三章で処刑の実態に迫りながら、刑法改正の方向を探り、終章では刑務所改革と最近の刑務所事情にまで言及したい。
 なお、第1部と第2部の中間に、ちょっとシリアスな休憩室"インテルメッツォ"をもうけ、死刑囚のように"いのち"の崖っぷちで生きる人たちとの異同を取り上げてみた。
「オウム教祖の判決で考えること――まえがきに代えて」より一部引用)

【目次】
オウム教祖の判決で考えること――まえがきに代えて
第1部 死刑囚監房の朝
 第一章 死刑と向き合った人たち
 第二章 "開かずの扉"との長い闘い
インテルメッツォ たとえ崖っぷちの"いのち”でも 第2部 ドキュメント“処刑”と刑務所改革
 第三章 死刑はかくして執行される
 第四章 刑務所はどう変わる?
あとがき
参考文献


 作者の三國隆三(みくに・りゅうざ)は1928生まれ。青森県出身。東京大学卒業。出版社勤務を経て、文筆活動に入る。著書に、『海道をゆく―日本列島3万キロ』(新生出版)、 『子どもを殺すな!』『今日の事件簿』『鮎川哲也の論理』『黒澤明伝』『木下恵介伝』『ある塾教育」(以上展望社)、『逃げろ!』『だませ!』『危機管理のミステリ』『消えるミステリ』(以上青弓社)、『誘拐トリックス』(三一新書、「あすな峡」名義)などがある。(著者紹介より引用)

 三國隆三は今まで死刑論について語った著書があるわけではない、と思われる。そのせいかどうかはわからないが、参考文献の寄せ集め、という印象しか出てこない。
 死刑を廃止すべき、という強烈な主張があるわけではない。死刑囚を知ろう、と言う割には表面的な内容しか語られていない。文献から追い求めるなら、もっと深く調べるべきだろう。
 特に得られるものはなかった。

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