年報・死刑廃止編集委員会編『年報・死刑廃止2022 加藤智大さんの死刑執行』(インパクト出版会)

発行:2022.10.10



【目次】

綿井健陽・井田香奈子・安田好弘・岩井信(司会) 巻頭座談会 戦争で死刑が露出してきた
特集・加藤智大さんの死刑執行
太田昌国 死刑囚表現展の中の加藤智大さん
香山リカ あまりにも無意味な死刑執行 変化への一歩を踏み出したところで……
雨宮処凛 聞き手:岡本真菜 ロスジェネ世代の死刑執行
安田好弘 加藤さんを執行してもなに一つ変わらない
加藤智大 「お弁当」抄
加藤智大 二〇二二年度応募作品から
加藤智大 表現展への応募が唯一の生きがい

池田浩士 死刑囚の表現を前にして 私は何をしたのか?
2021-2022年死刑をめぐる状況

死刑執行と抗議行動 2021年12月21日の執行
安田好弘 無法状態下の死刑をなくそう
片岡健 執行された藤城さんとの交流
村木一郎 私の関わった死刑裁判
岩井信 奪われる、いのちを守る権利

宇野裕明 再審請求中の死刑執行国賠訴訟
永井美由紀 告知当日の死刑執行は違憲国賠訴訟傍聴記
小川原優之 死刑廃止をめざす日本弁護士連合会の活動報告
太田昌国 この一年で四人が亡くなった「死刑囚の表現」が語るもの 第17回死刑囚表現展を終えて
太田昌国 『免田栄さんを知っていますか?』開催に当たって 第11回死刑映画週間
可知亮 ゲストのトークから
前田朗 死刑関連文献案内 二〇二二
中川英明 死刑に直面する人の権利の保障を 死刑廃止に向けた国際的動向
菊池さよ子 死刑判決・無期懲役判決一覧


死刑廃止運動にアクセスする

死刑を宣告された人たち

法務大臣別死刑執行記録

死刑廃止年表2021


 毎年10月10日の死刑廃止デーに発行される「年報・死刑廃止」の2022年度版。編集委員は岩井信、可知亮、笹原恵、島谷直子、高田章子、永井迅、安田好弘、深田卓(インパクト出版会)。
 巻頭座談会は2022年7月7日に行われたもので、ウクライナ戦争が勃発したことを受け、死刑と戦争について語られている。参加者は、実際のセンチを見てきたジャーナリストの綿井健陽、朝日新聞論説委員の井田香奈子・弁護士の安田好弘である。

 「特集・加藤智大さんの死刑執行」は、2008年の秋葉原事件で2015年に死刑が確定し、2022年7月26日に東京拘置所で執行された加藤智大・元死刑囚についての特集である。大田、香山、雨宮、安田の発言をまとめたものは、2022年8月18日に参議院議員会館で「古田禎久法相の死刑執行に抗議する緊急集会」での発言をまとめたものである。
 加藤智大死刑囚は2015年から、死刑囚表現展に毎年応募してきた。最初の3年間はイラストロジックであったが、その後は絵画、文章表現など多様な作品を複数、送っている。太田は表現展への応募作品から、加藤死刑囚への内面に迫っている。
 香山リカは精神科医の立場から、加藤死刑囚の執行に反対し、異議を唱えている。さらに、社会的にもある種の損失ではないかと述べている。ただ、若い人の拡大自殺を考えるうえで加藤死刑囚のケースは大事だと話しているだけである。
 雨宮は、執行の18日前に起きた安倍元首相銃撃事件の山上容疑者(当時)と加藤元死刑囚がロスジェネ世代、派遣を転々とした共通点もあげつつ、加藤死刑囚の印象を語っている。
 安田は、年二回、前半一回、後半一回という執行ペースを取り戻そうとしていると批判。さらに第二次再審請求中の加藤死刑囚が選ばれたのは、安倍元首相への銃撃事件への報復であると断言している。そして安田は、死刑存置、廃止という二極対立的に物事を考えるのではなく、中間層、すなわち終身刑を導入すれば死刑を廃止しても構わないという40%の人たちと連携し、死刑の廃止もしくは執行の停止を実現し遅効と訴えている。
 いずれも死刑執行が復讐、仕返し、懲らしめの性格が強まっていると危惧している。とはいえ、死刑制度に賛成している人から見たら、何を言っているんだという内容のものが多い。特に三者とも、償いなどの話には一切触れていない。加藤死刑囚の応募作品についても同様である。これでは誰も納得しないだろう。

 池田浩士は、2022年5月7日から15日まで広島のカフェ・テアトロ・アビエルトで行われた「死刑囚の絵展」で初日に行われた講演についてまとめたものである。
 死刑囚の表現展の選考委員である池田は、表現展の歴史、さらに海外の事例を紹介した後、響野湾子(庄子幸一)の短歌二九首を取り上げて説明。さらに「こういう表現をしてこういう歌を詠んでいるが、お前が殺した人はもはや生きていない。そしてお前は殺した人を愛している人の人生までめちゃめちゃにした。そういうお前が、なにが死刑囚表現展だ、そんな権利や特権があるのか!」という批判について触れ、耳を傾けれなければならない正当性はあるが、批判する人に言いたいのは、他者と繋がることを今までいっぱい知る機会があったにもかかわらず、そういう機会を持たなかったか、もしくはそういう機会があったのに自分が意識しないまま、こういう表現をしなかった彼らが、初めて自分の表現を受け止めてくれる人との関係を作ることができた、ということと訴える。そして死刑囚になるまでこういう表現や感情が自分の中に眠っていることに気づかないで生きてしまった人間、こういう人たちは社会が作った、その社会とは私であると言いたいと述べている。
 例によって社会が悪かった、と言っているが、自分が本当にしたい表現をしている人たちが一体いくらいると思っているのだろう。悪い社会でも、犯罪を犯さない人はいくらでもいるのに。自らの欲望で人を殺めた死刑囚は、すべて社会が悪かったから生まれたとでも言うのだろうか。論点のすり替えにもほどがある。

「死刑執行と抗議行動 2021年12月21日の執行」は、藤城康孝、高根沢智明、小野川光紀各死刑囚の執行に対する抗議集会として2022年1月26日に参議院議員会館で行われた「古田禎久法相の死刑執行に抗議する緊急集会」での発言をまとめたものである。
 安田は相も変わらず政治的利用の執行、再審請求中や責任能力の判断下での執行に対する問題点、事前告知、控訴取下げ、法律の規定がない「死刑の執行者」(日本の法制度の中では、誰が死刑を執行するかについて、法律の規定がないので、無法状態であるという訴え)、存置と廃止の懸け橋について語っている。なんかもう、壊れたスピーカーのようだ。
 片岡健は事件関連の取材、執筆をしているノンフィクションライター。藤城死刑囚と交流があり、その中で藤城死刑囚は拘置所職員からいじめを受けていると主張。片岡は、妄想性障害の影響ではなかったかと述べている。
 村木一郎は高根沢死刑囚の裁判の弁護士。高根沢死刑囚だけではなく、関根元死刑囚、岩本稔元死刑囚についても語っている。
 岩井信は小野川死刑囚の控訴審からの弁護士。再審請求にも関わっていた。新たな新証拠が出しにくいなどと言い訳をしているが、要するに死刑を覆す材料がないまま再審請求をしている、というだけである。執行逃れのみの再審請求中に執行されたからと言って、何の文句が言えるのだろうか。
 岡本(旧姓河村)啓三元死刑囚が再審請求中に死刑執行されたことに対する弁護権侵害国賠訴訟では、主任弁護人である宇野裕明に訴訟の現状を語ってもらっている。
 告知当日の死刑執行は違憲国賠訴訟傍聴記は、2021年11月4日、死刑確定者に名を原告として、死刑執行当日の朝、執行一、二時間前に告知を受ける現在の運用は意見違法であるとして、国会賠償請求を行った訴訟について、2022年1月13日の第1回口頭弁論から8月3日の第3回口頭弁論の傍聴記である。
 その他は過去1年のそれぞれの報告・まとめである。

【リストに戻る】