年報・死刑廃止編集委員会編『年報・死刑廃止2023 袴田事件再審無罪・死刑廃止へ』(インパクト出版会)

発行:2023.10.10



【目次】

小川秀世・木谷明・中島直・安田好弘・岩井信(司会) 巻頭座談会 袴田再審から死刑廃止へ
小特集・死刑囚の表現

死刑囚表現展2023作品集 第19回「死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金」表現展応募作品から
都築響一 モンマルトルの死刑囚絵画展
太田昌国 「死刑囚の表現」について離れぬ問い 第18回死刑囚表現展を終えて
2022-2023年死刑をめぐる状況
金子武嗣 死刑制度を変える 三つの訴訟について
永井美由紀 死刑執行の無法状態を糾明する訴訟傍聴記
黒原智宏 色鉛筆問題その後
死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90」 朗読「2022年死刑囚アンケート」
石川顕 「死刑廃止国際条約の批准を求める請願」を提出
小川原優之 死刑廃止をめざす日本弁護士連合会の活動報告
太田昌国 「国家と戦争犯罪と死刑」開催に当たって 第一二回死刑映画週間
可知亮 ゲストのトークから
前田朗 死刑関連文献案内 二〇二三年
中川英明 死刑廃止国144ヶ国に 死刑廃止に向けた国際的動向
菊池さよ子 死刑判決・無期懲役判決(死刑求刑)一覧


死刑廃止運動にアクセスする
川村湊 追悼・加賀乙彦さん
深田卓 追悼・永井清(迅)さん

死刑を宣告された人たち

法務大臣別死刑執行記録

死刑廃止年表2022


 毎年10月10日の死刑廃止デーに発行される「年報・死刑廃止」の2023年度版。編集委員は石塚伸一、岩井信、可知亮、笹原恵、島谷直子、高田章子、安田好弘、深田卓(インパクト出版会)。
 巻頭座談会は2023年8月1日に行われたもので、袴田事件弁護団事務局長の小川秀世、元裁判官で弁護士の木谷明、精神科医の中島直、弁護士の安田好弘によるものであり、袴田事件の公判の進行状況や現状などについて語られている。

 「死刑制度を変える 三つの訴訟について」は、岡本(旧姓河村)啓三元死刑囚が再審請求中に死刑執行されたことに対する弁護権侵害国賠訴訟、知当日の死刑執行が違法かどうかを争う訴訟、絞首刑が残虐で非人道的な刑罰であり国際人権規約に違反するとする絞首刑執行差止請求である。  「死刑執行の無法状態を糾明する訴訟傍聴記」の一つ目は、岡本(旧姓河村)啓三元死刑囚が再審請求中に死刑執行されたことに対する弁護権侵害国賠訴訟の傍聴記である。『年報・死刑廃止2021』から弁論の内容が毎年掲載されている。強盗殺人罪ではなく強盗罪と殺人罪だから死刑判決にはならないはずだという主張は河村元死刑囚の言い逃れにしか聞こえない。どちらも殺されて金を奪われた結果なのだが、彼らにとっては中身が違うらしい。そもそもあの犯行状況で殺人を目論んでいなかったという主張が通るほうがおかしい。こういう詭弁をまともに取り上げようとするところが、死刑廃止運動が一般に広がらない要因の一つだと思える。
 二つ目は告知当日の死刑執行が違法かどうかを争う訴訟である。こちらは『年報・死刑廃止2022』から毎年掲載されている。
 三つ目は絞首刑施行差止請求訴訟である。こちらは第1回口頭弁論から掲載されいる。

  「朗読「2022年死刑囚アンケート」」は死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90と福島みずほ事務所が共同で2008年から4年ごとに行われている死刑囚へのアンケート結果であり、今回は5回目となる。アンケート返信数は52通で、死刑囚107名の約半分。2022年10月9日の「響かせあおう死刑廃止の声」(星陵会館)でパワーポイントでグラフやアンケート用紙を上映しながら朗読劇を上演した。アンケート回答者で本誌に掲載されいているのは、倉吉政隆、石川恵子、尾田信夫、浜川邦彦、風間博子、小林竜司、池田容之、林振華、芳我匡由、坂口弘、中原澄男、加藤智大。
 気になる回答は以下(要約、抜粋)。
 尾田信夫「西武雄は当時100kg超の巨漢であり、それが災いして、落下時の荷重で首がちぎれかかった血が滝のように溢れ、刑場地下の床はまさに血の海であったという。以上は、従事した職員複数の伝聞であるものの、迫真に富み事実と思われる」
 中原澄男「当所にて、床下から熱やドライアイスが上がってくること。デンパに毎日嫌な思いをしていますし、もう両足が悪くて歩くのが痛いです。毎日夜勤者が人のおる房に入って、デンパや足に熱やドライアイスを入れます。こんなことが無くなればいいと思う」

 追悼文にある加賀乙彦さんは医学者(犯罪心理学)、精神科医、作家。「死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム'90」創設時の5人の呼びかけの一人。2006年以降、「死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金」死刑囚の表現展の選考委員として参加していた。
 永井清(迅)さんは「年報・死刑廃止」の編集委員で、フォーラム90、監獄人権センター、そばの会などで獄中者や死刑囚の人権のために活動していた。

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