年報・死刑廃止編集委員会編『年報・死刑廃止2025 死刑執行を超えて』(インパクト出版会)

発行:2025.10.10



【目次】

死刑囚表現展2025作品集 第21回「死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金」表現展応募作品から

井上孝紘/北村孝/猪熊武夫/植松聖/風間博子/金川一/奥本章寛/中田典広/東西南北/長勝久/西口宗宏/原正志/何力/藤井政安/堀慶末/露雲字流布/山田浩二
特集・死刑執行を超えて
安田好弘 死刑執行を超えて
死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90 死刑執行再開に抗議する
抗議声明

朴秉植・呉豪人・李怡修・山口薫 東アジアでの死刑廃止実現を考える モラトリアムの韓国・執行再開の台湾・日本

私が法制審議会で言いたかったこと 青木恵子さんに聞く
青木惠子 資料・法制審議会での証言①
袴田ひで子 資料・法制審議会での証言②
片山徒有 死刑制度を考える懇話会に出席して

資料1 「日本の死刑制度について考える懇話会」委員名簿

資料2 基本的な認識及び提言
笹原恵 再審無罪から死刑廃止へ:袴田事件弁護団 田中薫弁護士・小川秀世弁護士にきく 袴田さんの精神状態から「死刑」を考える 
2024-2025年死刑をめぐる状況
小川原優之 死刑廃止をめざす日本弁護士連合会の活動報告
永井美由紀 死刑執行の無法状態を糾明する訴訟傍聴記
太田昌国 作品に込められた死刑囚たちの思い 第20回死刑囚表現展を終えて

再審請求への補助金と死刑囚の表現展の募集要項
太田昌国 袴田巖さんの獄中書簡が証していること 第一四回死刑映画週間
加知亮 死刑映画週間 ゲストのトークから
前田朗 死刑関連文献案内 二〇二五年
田嶋俊博 死刑廃止へ 今こそ行動の時 死刑廃止に向けた国際的動
菊池さよ子 死刑判決・無期懲役判決(死刑求刑)一覧


死刑廃止運動にアクセスする

死刑を宣告された人たち

法務大臣別死刑執行記録

死刑廃止年表2024


 毎年10月10日の死刑廃止デーに発行される「年報・死刑廃止」の2025年度版。編集委員は石塚伸一、岩井信、可知亮、笹原恵、高田章子、安田好弘、深田卓(インパクト出版会)。
 編集後記を読むと、当初は「モラトリアムの時代へ」という特集を予定していたようだが、2024年6月27日、2年11か月ぶりに死刑執行が行われたため変更したとのこと。考えてみると6月4週目が、法務省の狙うタイミングだったんだなと思った。国会が終了し、都議選も終わり、参議院選挙の公示前。そして前回のモラトリアム3年4か月を超えない時点、と考えるとこの週しかない。法務省としては、前回のモラトリアムの期間を超えないようにしたかったんだろう。死刑が廃止されるのは、外圧(とくにアメリカ)がない限り無理だろう。もっともその前に、社会不安が高まったヨーロッパで死刑が再開される方が早いと思うが。ヨーロッパは都合が悪くなると平気で方針を変えるからね。EVがいい例だ。

 巻頭のカラーページは、いつものように死刑囚表現展2025から。表紙も藤井政安の絵である。猪熊武雄、金川一、藤井政安は病気だとか聞いたことがあるけれど、こうやって作品を出すところをみると元気なのだろう。原正志の女性のヌードのデッサンが狂っているのはまだしも、それぞれの女性につけた名前のネーミングが気持ち悪い。本では潰れてよく読めなかったが、左翼党派の機関誌から引用したかのような政治スローガンも背景に細かく描かれているとのこと。精神状態、大丈夫なんだろうかという気になる。長谷川静央(露雲字流布)も全く反省していないんだろうな。ちなみに小説11編も送っているが、「下手くそなポルノまがい」との評である。

 巻頭は白石隆浩死刑囚の執行を受けての安田へのインタビュー記事。安田好弘が「死刑制度は生きているんだという痕跡を残すためだけに執行したと思います」「一番の殺しやすい人を彼らは選んだ」と発言しているが、確かにそう思う。安田の言う「できるだけ抵抗感の少ない人、犯情の良くない人、あるいはエピソードのない人を彼らは選んでくる、執行するというより処理する」というのが法務省の今のスタンスなのかもしれない。その他はいつもの安田節でしかなく、目新しいものはない。

 座談会は、韓国と台湾、日本の死刑の違い。韓国では、1997年10月の執行以降、事実上のモラトリアム状態。さらにEUと犯罪者引渡し条約を結んだことから、今後も死刑復活はないだろうというみこみである。なお国民世論では7対3で死刑存置が多い。韓国は法の上に政治があるのだから、政権によって執行するかどうか変わるだろう。台湾は2024年9月20日、憲法裁判所(最高裁より上の位置付けは、死刑は違憲ではないが、執行については最も厳しい条件のもとで行われるべきという判決を出したが、法務部(日本でいう法務省)は2025年1月16日に死刑を執行。さらに4月、法務部は死刑の執行規則を緩やかに、すぐにでも執行できるように改正。7月には立法院(国会)で児童虐待防止法の中にも死刑を増設した。
 朴秉植は旅好きで67カ国回ったが、一番優しかったのは日本人。それなのに、なぜ日本人は死刑執行について寛大なのか。日本では「清く正しく美しく」という考え方、そして儒教的な教えが影響している。目標とすべき人物像とは反対の行いをした人間については、優しさとは全く逆に厳しくなるんじゃないか、との仮説を話しているk。犯罪学、刑法を学んだ朴にとて、犯罪は社会の構成要因、必要要件であると常に語っている。キリスト教の教えによるアダムとイブの時代から犯罪は行われている。人間には犯罪というDNAが組み込まれている。
 色々語っているが、死刑の全体論しか語っていない。制度としての死刑しか語っていない。弱者、すなわち被害者やその遺族に対する視点は全くない。死刑を残酷と最初からインプットされた時点での論評が始まっているので、これでは死刑存置の人とは意見が噛み合わないだろうと思う。
 それに韓国では死刑相当犯罪が日本の何十倍も多いとあるが、執行を再開したら少しは減るんじゃないか。試してみたらどうだろう。

 青木圭子へのインタビューは、法制審議会での証言で語りきれなかったこと。
 死刑制度を考える懇親会に出席してはと、被害者と司法を考える会代表である片山徒有が日弁連からの委嘱を受け、委員として2024年に行われた12回の会合を受けてのものである。割り当てられた枚数が少ないこともあってか、レポートとしてはたいしたものではない。それ以上に被害者遺族の立場として参加しているにも関わらず、死刑制度を疑問視している人を選んでいるのだな、という不信感を覚えた。
 袴田事件の小川弁護士へのインタビューは、色々と興味深い。特に日本には犯罪研究所がない。そして日弁連が最新冤罪事件、無罪事件を重ねながらも彼らから何の検証も行って来なかった事実もである。死刑廃止をしたいのなら、日弁連は根元から埋めていかないと、どうにもならない。
 「作品に込められた死刑囚たちの思い 第20回死刑囚表現展を終えて」にある短歌や俳句、川柳などの中に、大橋健治の名前があった。初投稿とのことで、亡くなった中道武美弁護士の死を悼む短歌を送ったとのこと。短歌を読むぐらいには元気なんだ。
 その他は恒例の年度ごとのまとめや報告である。
 「死刑を宣告された人たち」は死刑囚リスト。昔と違ってその後の最新状況などの詳細が書かれなくなったのだが、今年は渕上幸春死刑囚が2025年3月11日、福岡拘置所から東京拘置所の病室に移送という情報が書かれていた。  

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