本書は、世界と日本の死刑の歴史と現状を踏まえたうえで、新しい資料を発掘し、よけいな論評を避けて、なるべく死刑囚のありのままを伝えるように心がけました。
世界の半数以上の国で死刑が廃止されているいま、容易に手にとって、日本の死刑制度の存否について話しあえる材料のひとつになればと願っています。
【目次】
序章 謎だらけの「死刑」の真実に迫る
いま、なぜ死刑が注目されるのか
秘密主義の日本とオープンなアメリカとの落差
処刑法も時代とともに大きく変化
万一、死刑判決に誤りがあったら
第1章 見せしめの残酷刑から人道的処刑へ
死刑の歴史は「おぞましい残酷刑」の歴史
絞首刑以外の現行の処刑方法は
「死刑大国」アメリカが導入した「人道的」処刑方法
第2章 日本の「死刑」も時代とともに変貌
文明開化につれて斬首刑から絞首刑へ
死刑に該当する罪種もこんなに変わった
死刑確定囚が刑を執行される期日の謎
第3章 「最期の日」までの死刑囚の日々
厚い壁に閉ざされた死刑囚の獄中生活
死刑か無期かに揺れる被告たち
死を待ちつづける死刑囚たちの心の内側
生々しく記録されていた死刑執行現場の実体
第4章 死刑制度の危険な落とし穴
ねつ造された証拠ゆえに死刑判決を受けた男
無実の男に死刑判決を下した「自白調書」の恐怖
死なずにすんだかもしれない死刑囚の謎
当時流行った文庫サイズの雑学本から出た一冊。作者はまえがきで「よけいな論評を避けて、なるべく死刑囚のありのままを伝えるように心がけました」と述べているが、内容としては死刑に否定的な書き方である。死刑に対する負の部分しか書いていない。まあ、死刑に対する正の部分を書こうとするのは難しいのかもしれないが。
死刑の歴史から死刑囚の現状という並びになっているが、話題が所々で飛んでしまっており、まとまりに欠けたものとなっている。さらに内容によって分量が大きく異なっており、作者にとって書きたいと思うことだけを熱心に書いているため、ややいびつな仕上がりである。それにしても死刑制度のことを書いておきながら、死刑存廃論について全く触れないという本も珍しいのではないだろうか。
新規の資料というほどのものはないが、大谷高男死刑囚が執行の言い渡しを受けてから執行されるまでの53時間の録音テープの内容についてページ数を割いているのが珍しいところか。
死刑の歴史と何人かの死刑囚、そして無罪判決などについてなどをちょっとずつ抜き書きしただけの本。二見WAi-WAi文庫というレーベルの性質上、このような書き方しかできなかったと思われるが、読む価値は殆どない。
近藤昭二は1941年名古屋市生。現在はフリーの脚本家、ディレクター。主要作に映画「生きているうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」、NHK「731細菌戦部隊」などがある。主な著書に『月食の迷路』(文藝春秋)、『捜査一課・謎の殺人事件簿』(二見書房)など。
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