私たちアムネスティ・インターナショナルは、死刑は人権の問題だと考えています。生きるという最も基本的な人間の権利を根本から否定する刑罰が死刑です。しかし死刑があったほうがいいのか、廃止したほうがいいのかについて話をするとき、死刑に賛成する多くの人たちは、廃止を主張する人たちの意見に反発を感じるようです。
そしてこう聞き返してきます。
「人を殺したのだから死刑になっても仕方ないのでは?」
「社会を守るために死刑は必要なのでは?」
「殺された被害者の人権はどうなるの?」
この本では、アムネスティ・インターナショナルがこれまでに受けた死刑に関する多くの疑問や質問のなかからいくつかを選んで、それに答えるという形で私たちがなぜ死刑に反対しているかを述べています。本を手にされた皆さんが、現在死刑に対して賛成であれ、反対であれ、死刑に対する考えをいっそう深めてもらえれば幸いです。
死刑の問題に関してはこれまでに多くの人が発言し、またさまざまな本が出版されていますが、本書を編集するにあたって、私たちはそれらの多くを参照させていただきました。この場をお借りして、謝意を表したいと思います。
【目次】
問1 人を殺したのだから、死刑になっても仕方ないのではないでしょうか?
問2 死刑制度は私たちの社会を守るために、やはり必要なのではないでしょうか?
問3 日本には死刑廃止に賛成する人がどれくらいいるのですか?
問4 死刑がなくなると、凶悪犯罪が増えるのではないでしょうか?
問5 被害者遺族の気持ちを考えると、死刑は絶対に必要なのではないでしょうか?
問6 死刑は「残虐な刑罰」なのでしょうか?
問7 誤った死刑判決で無実の人が処刑されたことはあるのでしょうか?
問8 日本では、毎年どれくらいの人が死刑の判決を受け、そして執行されているのですか?
問9 同じ殺人罪でも、死刑になったり無期刑になったりします。その境界を定める基準はあるのでしょうか?
問10 死刑囚は外部の人たちと自由に連絡はとれるのでしょうか?
問11 死刑囚の日常はどのようなものですか?
問12 死刑囚が再審で無罪になったり、恩赦で減刑されることはあるのでしょうか?
問13 裁判所で死刑が確定した後、すぐに死刑が執行されるのですか?
問14 実際に死刑を執行する人たちは、どう思っているのでしょうか?
問15 海外の国では、死刑はどのように適用されているのでしょうか?
問16 日本では未成年者は死刑になりません。ほかの死刑存置国でもそうでしょうか?
問17 死刑が政治的な弾圧の手段として使われる心配はないのでしょうか?
問18 アメリカでは死刑執行の模様が公開されていますが、日本でも処刑場を見ることができるのでしょうか?
問19 死刑を廃止した国は、どんなきっかけで廃止したのですか?
問20 死刑に関する国際的な基準には、どのようなものがありますか?
問21 国際的な基準に照らしたとき、日本の死刑制度にはどんな問題がありますか?
問22 アムネスティは、なぜ死刑廃止を求めているのですか?
コラム1 終身刑と無期刑
コラム2 死刑制度の見直しを提案した大野判事
コラム3 無実を訴えた死刑囚たち
コラム4 「部分冤罪」の問題
コラム5 日本で死刑が科せられる罪は?
コラム6 ストックホルム宣言
私たちも死刑に反対しています
田辺聖子 天野祐吉 山田洋次 瀬戸内寂聴
アムネスティとは、不当な人権侵害にアピールハガキを政府に送るなど国際的な人権擁護活動を行っている団体。活動は一切政府から助成を受けずに、自ら資金を作り出すために商品の製作販売や寄付を広く募集している。日本にも支部があり、さらに各地に支部がある。
各問を要約し、私の疑問点を併せる。
問1 人を殺したのだから、死刑になっても仕方ないのではないでしょうか?
カミュ、元最高裁判事団藤重光、元刑務官戸谷喜一の著書から死刑廃止に関わる言葉を引用した後、こう締めている。
この疑問に答えることはできません。なぜなら、その答えはたくさんあるからです。結局、この問に対する答えは、死刑に関心を抱く一人ひとりが自分で考え、探していくことから始まるといえます。
疑問点
一番素朴な疑問であるが、結局その疑問に答えようとせず、自らの判断に任せようとしている。確かに答えに至る過程はいろいろあるかもしれないが、答えはYesかNoとなる。アムネスティはNoといっているのだから、本来そう答えるべきではないのだろうか。
問2 死刑制度は私たちの社会を守るために、やはり必要なのではないでしょうか?
「被害者や遺族のことを思うと死刑廃止に賛成できない」という人の半分くらいは、「私や私の愛する人の命を犯罪で奪われたくない。もし死刑が廃止されてその可能性が少しでも高まるなら、私は死刑廃止に反対する」という気持ちが含まれているだろう。死刑に賛成する人のイメージする社会は、曇りのない完全な社会。そこには罪を犯した人の暮らす場所はない。死刑廃止を訴える人のイメージする社会は、犯罪者も人として生きていける寛容な社会である。
疑問点
正論のようで暴論としか思えない。犯罪はなくならないのだから、犯罪者も人と認めろと言っているようなものだ。どうやって犯罪を減らすことができるのか。また犯罪被害者への支援、加害者が罪を償う具体的な方法、刑罰を受けた人の社会復帰の問題。まずはそちらが整備されない限り、犯罪者も人として生きていける寛容な社会など望むことができないだろう。死刑賛成の人たちの中にはそのようなシステムが存在しないのだから、死刑廃止を反対している人だっているはずだろう。
死刑が廃止になりました。誰もが有期刑で出所できます。殺人を犯した人が懲役刑を終え、社会に復帰しました。すぐに人を殺しました。また懲役刑を終え、社会に復帰しました。また人を殺しました。
これでは被害者は殺され損である。死刑廃止を訴える前に、まずはそのような社会システムの案を提示すべきだ。
問3 日本には死刑廃止に賛成する人がどれくらいいるのですか?
1956年からの総理府の世論調査を提示し、疑問点を挙げている。凶悪犯罪は増えている、死刑には大きな犯罪抑止効果がある、などという誤った情報から死刑を支持している人が多い。死刑囚の素顔や処刑の残虐さなどが伝えられていない。単純に賛成か、反対かとは割り切れないものだ。制度存続執行反対、終身無期刑があれば死刑廃止に賛成する人、運用には疑問を抱く人などさまざまな人がいるのに、それを死刑を支持する人とみなしていいのか。世論が人権を踏みにじる非理性的な判断を下す場合、政府は世論に従うべきではない。
疑問点
不満があるなら自分たちで調査をやってみろよといいたいところだ。また、「世論が人権を踏みにじる非理性的な判断を下す場合、政府は世論に従うべきではない」などというのは暴言もいいところだ。世論がすべて正しいとは言わないが、ではいったい何が正しいのかを誰が判断するのか。自分たちの意見と異なる意見を“非理性的な判断”と決め付けるのは間違っている。
問4 死刑がなくなると、凶悪犯罪が増えるのではないでしょうか?
1989年の世論調査では67%の人が、「死刑をなくすと悪質な犯罪が増えると思う」と答えている。植松正は「人間がもっとも大きな執着を持つところの生命を奪おうとする刑罰の存在が、犯罪に対して大きな抑止力を持つのが当然であるといわなければならない」と書いている。アメリカでは古くから研究されているが、はっきりした結論は出ていない。国連の1989年の報告書では、処刑が終身刑より大きな抑止力があるということを科学的に証明できなかったと結論を出している。
疑問点
全く同じ社会を二つ用意し、比較しない限り、答えは出ないだろう。それに景気がよければ金がなくて強盗殺人を犯そうとする人は減るだろうし、世の中が貧しければ人を殺してでも食料を奪おうとする人だって出るだろう。それに、統計には一つの問題点もある。死刑があるから殺人を犯すのはやめようと思った人をカウントすることはできないのだ。もしそう思う人が多ければ、抑止力があると判断することは可能である。結局のところ、死刑に抑止力があるかどうかは、誰にも答えが出せないと思われる。つまり、抑止力があると言い切ることはできないが、抑止力がないとも言い切ることはできないのである。
問5 被害者遺族の気持ちを考えると、死刑は絶対に必要なのではないでしょうか?
アメリカのドロシア・モアフィールドさんの例を挙げ、被害者遺族の傷を癒すのは死刑ではないと言っている。また、遺族の気持ちを思うなら死刑執行時に遺族に知らせるべきではないか。またすべての殺人に死刑が言い渡されるわけではない。被害者遺族によって救われる人と救われない人が出てくる。真に被害者を救うためには、精神的に犯罪被害者を支援する組織やプログラムを充実されることが必要であり、犯罪被害者等給付金支給法の支給金額を再検討する必要があるだろう。死刑制度は真の意味での「被害者の心の傷」の癒しにはならない。加害者の身内を新たな遺族にし、悲しむ人を再生産する制度である。
疑問点
死刑確定囚と連絡を取れない問題点はごもっとも。犯罪被害者を支援する組織等の充実などもごもっとも。まずはそちらから実行してほしいものだ。まず救われるべきは、死刑囚ではなく被害者遺族である。
また、死刑はもっと幅広く適用されてもいいと思う。殺人を犯し、反省していない態度を取る被告は、たとえ一人殺害でも死刑に処してもいいのではないか。また、複数殺人者は文句なしの死刑だ。そうすれば、愛しい人を殺したあいつが生きているという苦痛を味わう人は減る。死刑は真の心の傷の癒しにはならないかもしれないが、加害者が生きているという苦痛や傷口を広げることはなくなる。
問6 死刑は「残虐な刑罰」なのでしょうか?
残虐な刑罰を科すことは、日本国憲法第三十六条で禁じられている。様々な国際基準にも明記されている。死刑は「残虐な刑罰」であるから廃止すべきだ。
疑問点
最高裁判所は1948年3月に「死刑は残虐な刑罰には該当せず合憲である」と判断している。また、死刑が確定した人の多くは、「死刑は第三十六条に反する」として最高裁に上告しているが、いずれも合憲であるとして棄却されている。残虐でないことは、常に判断されているわけだ。文句があるなら、アムネスティが日本の裁判所に訴えを起こしてみればいい。
問7 誤った死刑判決で無実の人が処刑されたことはあるのでしょうか?
イギリスで1969年に一般の犯罪に対する死刑が廃止になったきっかけは、無実の人の処刑が明らかになったことだった。日本でも四人の死刑確定者が再審で無罪判決を勝ち取っている。無実を訴えた福岡事件の西武雄元死刑囚は執行、帝銀事件の平沢貞道元死刑囚、牟礼事件の佐藤誠元死刑囚は獄死している。
疑問点
特にはない。アメリカ、イギリスなどではすでに無実の人が処刑されたり、死刑から無罪になったケースが確認されている。日本でも無実で死刑を執行されたと疑わしき人はいるし、獄死した人もいる。現在、確定から20年前後経った死刑確定囚が多くいるが、その中には無罪と思われる人もいる。多分、法務省は冨山元死刑囚のように無罪かもしれない確定囚は獄死の方向に向かっているものと思われる。ただ重要なのは、いかにして無罪の人間が有罪判決を受けないようにするかということであり、警察から裁判所までそのシステムを見直すことのほうが必要ということである。有実の人間の執行とは別問題だ。
問8 日本では、毎年どれくらいの人が死刑の判決を受け、そして執行されているのですか?
戦後の死刑確定者数と執行数を紹介している。
疑問点
特にはない。
問9 同じ殺人罪でも、死刑になったり無期刑になったりします。その境界を定める基準はあるのでしょうか?
死刑と無期刑(無期懲役と無期禁固がある)の判決を下す明確な基準はない。一審では無期、二審では死刑、もしくはその逆のケースもある。それは裁判官の人生観や倫理観によるところが大きい。
最高裁は1983年に永山事件の第二審判決を破棄したとき、死刑判決の基準を示した。(1)犯行の性質、(2)動機、(3)殺害の手段・方法の残虐性などの態様、(4)結果の重大性(被害者の数)、(5)遺族の被害感情、(6)社会的影響、(7)犯人の年齢、(8)前科、(9)犯行後の情状。
命を奪う絶対的な刑罰である死刑を適用するかどうかについて、合理的な基準を設けることは不可能である。
疑問点
明確な基準は確かにない。この事件がなぜ無期懲役判決かと首をひねる裁判はいくらでもある。だったら明確な基準を設ければいいのだろうか。中国みたいに電子量刑にまかせるか。
合理的な基準は難しいかもしれないが、それは無期刑、有期刑でも同様である。なぜこれが無期か、有期か。誰もが納得する刑罰を100%与える裁判所などは存在しない。それは死刑という刑罰に限らない。
問10 死刑囚は外部の人たちと自由に連絡はとれるのでしょうか?
死刑確定囚は未決囚に準じたものと監獄法第九条により規定されているが、1963年に出された「死刑確定者の接見及び信書の発受について」という法務省の通達によって極端に制限されている。
疑問点
死刑確定囚にもっと通信の自由を与えるべきという意見には賛成。処遇はともかく、もっと開かれた制度にすべきとは思う。
問11 死刑囚の日常はどのようなものですか?
未決囚と同じだが、一部の死刑囚は自殺防止房と呼ばれる独居房に収容されている。
疑問点
「横臥願い」を出さないと横になれないというのもどうかとは思う。独居房も廃止すべきとは思う。
問12 死刑囚が再審で無罪になったり、恩赦で減刑されることはあるのでしょうか?
免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件の4人が再審で無罪になっている。恩赦には政令恩赦、政令基準恩赦、個別恩赦がある。国際的な人権基準では、生命に関わる刑罰を言い渡されたものは恩赦を求める権利があるとされ、恩赦に関する決定の前には死刑が執行されることはないと規定されている。しかし日本政府はその基準に沿っていない。
疑問点
再審そのもののハードルはもう少し低くてもいいかもしれない。しかし、恩赦に関してはどうか。死刑逃れの恩赦を出願するケースは実際にある。はっきり言えば、死刑逃れだ。権利はあるかもしれないが、執行することはないという決まりはおかしいと思う。
なお、本書では恩赦のデータに間違いがある。
問13 裁判所で死刑が確定した後、すぐに死刑が執行されるのですか?
刑事訴訟法第四七五条二項で、法務大臣は確定の日から六ヶ月以内に執行を命令しなければならないと定められている。しかし現状では、確定から平均7年経ってから処刑されている。
死刑確定→検察庁に裁判記録が送られる→検事長は法務大臣宛に死刑執行上申書を送る→法務省は複数の部署で書面審査を行う→死刑執行命令書を作成して法務大臣に届ける→法務大臣が命令書にサインする→検察庁検事が執行を行う拘置所や刑務所に対して執行指揮書を出す→法務大臣の命令から五日以内に執行
法務大臣は裁判所や検察庁とは異なった独自の結論を出すべきだ。
疑問点
仕組みに関しては特にない。ただ、確定後七年という日数はあまりにも長い。もっとスピーディーに行われるべきである。「自分自身の目で判断する勇気を法務大臣に望みたい」とあるが、要するに法務大臣はサインをするなと言っているだけのことだ。大臣が自分自身で判断してサインをしたら抗議するくせに、勇気などというのはお笑い種だ。
問14 実際に死刑を執行する人たちは、どう思っているのでしょうか?
死刑を執行するのは刑場付設の拘置所あるいは刑務所に勤務している刑務官である。執行には多くの人が関わる。人を殺すという行為によって、刑務官は精神的に傷つき、ノイローゼになる人もいる。
疑問点
確かに刑務間の苦悩というのは考えるべき要素の一つである。就職を求める際に、まずは執行する可能性があることをはっきりと伝えるべきである。ならば人権団体はなぜ拘置所で死刑反対のデモを繰り広げるのだろう。死刑に反対するのであれば、まず死刑判決を出す裁判所の前で抗議すべきである。死刑判決さえ出なければ、死刑など存在しないのである。それができないのは、彼らが被害者遺族の目のあるところでは堂々と抗議することできない卑怯者であることに他ならない。刑務官が傷ついているとわかっているのであれば、拘置所で抗議して傷口を広げるのではなく、裁判所へ矛先を変えるのが本筋ではないか。
問15 海外の国では、死刑はどのように適用されているのでしょうか?
死刑の廃止国・存置国リストを紹介。
疑問点
死刑廃止は世界的な流れと書いてあるが、世界が同調するから日本も同調すべきだというのはおかしな発想である。世界がイラクを攻めるから、日本も軍隊を出すべきだと言われたどうするつもりか。自分の求めるテーマに応じて世界を持ち出したり持ち出さなかったりするのは、卑怯である。
問16 日本では未成年者は死刑になりません。ほかの死刑存置国でもそうでしょうか?
日本では十八歳未満の未成年者については、死刑適用犯罪であっても無期懲役を科すよう、少年法で定められている。「市民的・政治的権利に関する国際規約」でも、未成年者に対する死刑の適用は禁止されている。しかし、イラン、ナイジェリア、パキスタン、サウジアラビア、アメリカ、イエメンの六カ国で十八歳未満の未成年者に死刑執行が行われている(1999年当時)。精神的にまだ成熟していない未成年者の犯罪は、加害者本人だけの責任を問うよりも、社会全体の責任として捉えるべきだ。
疑問点
未成年者であっても、非道な事件を起こしたら死刑に科しても仕方がないと思う。未成年だからというのは甘えに過ぎない。もちろん、きちんと審理された上での話だが。
問17 死刑が政治的な弾圧の手段として使われる心配はないのでしょうか?
反乱罪、反逆罪で死刑が適用されるケースは多い。
疑問点
確かにそのとおりである。ただ、法律で死刑を廃止したとしても、独裁者が政権を取ったら法律を変え、死刑を復活させるだろう。だから、政治的に使われるから死刑を廃止しようという訴えは、ほとんど意味のない話である。
問18 アメリカでは死刑執行の模様が公開されていますが、日本でも処刑場を見ることができるのでしょうか?
アメリカでは死刑執行の日時が何ヶ月も前にマスコミに発表されるのが一般的である。処刑室は公開されているし、州によっては家族だけでなくメディアの人間が執行の現場に立ち会うことが許されている。日本では一切の情報が公表されていない。
疑問点
日時をマスコミに公表するのはどうかと思うが、事前に被害者遺族に伝え、執行に立ち会うかどうかの選択を求めるぐらいは必要だと考える。
問19 死刑を廃止した国は、どんなきっかけで廃止したのですか?
共産政権の崩壊など、政治的変動の結果が死刑を廃止した国。安定した社会条件の下で、死刑を廃止した国。死刑廃止へ向かう国際的な流れを受け止め、死刑を廃止した国。
疑問点
特になし。
問20 死刑に関する国際的な基準には、どのようなものがありますか?
1989年に国連で採択された死刑廃止条約(市民的・政治的権利に関する国際規約の第二選択議定書)。1999年3月の時点で37ヶ国が批准している。
1982年に採択された欧州死刑廃止条約(欧州人権条約第六議定書)。
1990年に採択された米州死刑廃止条約(死刑廃止に向けての米州人権条約議定書)。
その他、犯行時十八歳未満のものや精神障害者、妊娠中の女性に対する死刑の禁止を定めたり、上級裁判所に上訴する権利を保障する制度を求めたり、恩赦や減刑を求める権利の保証、死刑執行に至るまでの法的対抗手段を尽くす権利の保障を求める基準なども国連で作られている。
疑問点
世界のすべての国が死刑を廃止したからといって、日本が従うべきだというのは、日本が独立国家である以上、誤った認識である。これは、世界の過半数が死刑を廃止しているから、日本も従うべきだといっているようなものだ。これは問3で言っていることと明らかに矛盾する。
もし、国連加盟国が某国への軍隊派遣を承認するとしたら、日本も必ず承認し、軍隊を出さなければならないのか。アムネスティは否と答えるだろう。それと同じことである。
欧州や米国と日本が決定的に違う点は、被害者遺族救済制度がまだまだ未熟であること、そして殺人等の罪における日本の刑罰が他国よりも低い(らしい。まだ確認が取れていない)ことである。殺人を犯しても、懲役1桁年であることもざらである。こんな国は日本ぐらいだろう。刑罰の不均衡をなくすことが大事と思われる。
問21 国際的な基準に照らしたとき、日本の死刑制度にはどんな問題がありますか?
国際的な基準から見たとき、日本の死刑制度には以下の問題点がある。
(1)心神喪失の状態で執行された死刑囚が存在する。また、死刑を適用しない最高年齢は定められていない。
(2)死刑事件の裁判が最終審まで行われる制度的保障がない。一審で確定されるケースがある。
(3)恩赦や減刑がほとんどなされていない。
(4)死刑囚は確定後、外部との連絡手段を立たれてしまい、再審請求や恩赦の出願が困難。また、執行の告知が当日の朝なので、執行に対する法的な対抗手段をとることができない。
1998年11月、自由権規約人権委員会は日本政府に対し、勧告をしている。
疑問点
心神喪失の状態で死刑を行うことの是非は難しいが、最高年齢は問われる筋合いのものではないだろう。たとえ何歳でも、罪は罪である。また、原告と被告が納得しているのであれば、一審で判決が確定しても問題はない。被害者遺族も早く罪が決定した方がよいだろう。このあたりは言いがかりに等しい。
恩赦や減刑に関しては、どう答えればよいか。積極的に活用すべきといっても、被害者遺族が納得しないものについて恩赦・減刑を与えるというのは間違っている。横から口出しするのは筋違いだろう。再審請求や恩赦については、最近はほとんどの確定囚がその制度を知っていると思われるので、問題点ですらなくなっている。
問22 アムネスティは、なぜ死刑廃止を求めているのですか?
(省略)
疑問点
あえて最後の問は省略した。これに関する私の答えは、いずれ別項で述べたいと思う。
以上、全ての問の概略、それに対する私の疑問点を挙げた。アムネスティの言っていることは、一見正論のように見えるのだが、偏った見方しかできていないと私は思っている。これに対する反論があれば、ぜひとも頂きたい。
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