佐木隆三『わたしが出会った殺人者たち』
(新潮文庫)


発行:2014.9.1



 犯罪事件を取材して半世紀。幾多の殺人の真相を書き続けてきた作家が、古希を超えた今、これまでの取材を振り返り、殺人者との交流を回想する。拘置所で大粒の涙を見せた無期懲役囚、「自分を小説に書いてくれ」と資料を寄越した家族殺害犯、著者が喪主を務めた前科十犯の男――。昭和・平成を震撼させた凶悪犯18人の知られざる肉声や人間臭い横顔を描く、著者の集大成的な犯罪回顧録。(粗筋紹介より引用)
 『波』(新潮社)2010年6月号から連載。2012年2月、新潮社より単行本刊行。2014年9月、文庫化。

【目 次】
第一章  『復讐するは我にあり』の西口彰
第二章  『曠野へ 死刑囚の手記から』の川辺敏幸
第三章  『千葉大女医殺人事件』の藤田正
第四章  『悪女の涙 逃亡十五年』の福田和子
第五章  『連続幼女誘拐殺人事件』の宮崎勤
第六章  『別府三億円保険金殺人事件』の荒木虎美
第七章  『身分帳』の山川一こと田村昭義
第八章  『一〇八号――連続射殺事件』の永山則夫
第九章  『和歌山毒カレー事件』の林真須美
第十章  『オウム真理教事件』の麻原彰晃こと松本智津夫
第十一章 『トビ職仲間と五人殺し』の木村繁治
第十二章 『黒い満月の前夜に』の尊・卑属
第十三章 『中州美人ママ連続夫殺し』の高橋裕子
第十四章 『奈良女児誘拐殺人事件』の小林薫
第十五章 『深川通り魔殺人事件』の川俣軍司
第十六章 『大阪池田小大量殺人事件』の宅間守
第十七章 『下関通り魔殺人事件』の上部康明
第十八章 『偉大なる祖国アメリカ』の安田幸行


 殺人者を「日常の陰の隣人たち」と呼び、取材と裁判傍聴を務めてきた佐木隆三が、かつて関わってきた殺人者たちの回顧録。言ってしまえば、今までの著者の作品のダイジェスト+後日談みたいな作品になっている。
 例えば第三章では、2010年に藤田正と付き合っていた「ミンミン」から久しぶりに電話があったこと、現在はカラオケスナックを開いていることが書かれている。
 第四章では、出版後に福田和子が亡くなったことが触れられている。
 第六章では、出版後に荒木から内容が異なるから訴訟をするが、それが嫌なら違約金を寄越せという手紙がしつこく届いた話が書かれている。
 第十八章では、安田のその後が書かれている。
 著書のファンなら、裏話や後日談を楽しむのがいいかもしれない。


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