ナツメ社の図解雑学シリーズといえば、自然科学や社会科学などを図解でわかりやすく説明したシリーズで人気がある。そのナツメ社が新たに歴史・地理・文化・思想・宗教などの様々なテーマでシリーズ本を出した。今回の1冊はそんな新シリーズの1冊。
細江達郎は現在岩手県立大学教授。日本犯罪心理学会理事、日本応用心理学会会長、臨床心理士、応用心理士。心理学の日常生活への応用に関心があり、研究の手法は犯罪研究も含めフィールドワーク中心である。
「犯罪心理学」というと犯罪者の「心の闇」を解明するものだと考えていた。しかし、実際は違った。様々な本を読めば分かるとおり、犯罪は日常的な、普通の人の心の延長線上にあるものであった。
人は犯罪者に、自分と違う「異常性」を求める。そうすることによって、自分は違うのだという安心感を求める。筆者は、そうではないと易しく教えてくれる。確かに殺人こそ犯さないものの、スピード違反や拾ったお金をそのままポケットに入れた経験など、軽微な犯罪は誰でもやっていることだろう。「犯罪」という観点からみたら、どちらも同じなのである。
犯罪には必ず加害者と被害者がいる。犯罪は、被害者に対する加害者の不整合・不具合・非適応なネガティブな影響として発生する。加害者だけで犯罪は成り立たない。そのことを我々はもっと考えるべきである。
この著書は、犯罪心理学について、我々が陥りやすい間違いも含め、丁寧に教えてくれる。図解のため、「心理学なんて難しい」という人にとってもわかりやすいはずだ。もし犯罪者の影を追いかけるのであれば、犯罪心理学にふれないわけにはいかない。その入門書として、最適な本である。
ちなみに目次は以下。
序 章 「犯罪心理学」の心理学
第1章 犯罪研究の歴史
第2章 犯罪とは何か
第3章 犯罪行動が発生する過程
第4章 発達成長と非行・犯罪
第5章 犯罪防止の心理学
第6章 様々な犯罪
第7章 犯罪心理学のトピックス
第8章 犯罪者の矯正の心理学
終 章 犯罪心理学のこれから
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