『別冊宝島368 身の毛もよだつ殺人読本』(宝島社)


発行:1998.3.3



 酷薄で凶暴で、恐ろしく直情的にして狡猾、被虐的かと思えば加虐的。内気で、友達がいなくて、自ら築き上げた妄想の世界に暮らす男たち。人間存在にひそむ闇を凝縮した存在。非人間的で、そしてあまりにも人間的な男たち――。そして「殺し」の癖がある。
 彼らはなぜ人を殺め、何を見、感じ、思い、どのように行動したのか? 「殺し」に淫した男たちの、あやまりに人間的な素顔に迫る。

(INTRODUCTION そして「殺し」の癖がある より抜粋)


【目次】
PROLOGUE
 殺人鬼が夢見る世界 ジェラルド・シェイファー/ソンドラ・ロンドン
PART1 「殺し」という愉悦
 テッド・パンディー▼IQ一六〇のエリート殺人鬼
 バンディ神話はいかにして創られたか  柳下毅一郎
 ピーター・キュルテン▼デュッセルドルフの怪物
 首を絞め、血を啜るドイツの怪物  真木貞夫
 アルバート・ディザルボ▼ボストンの絞殺魔
 飾り結びは殺し向きの手で  真木貞夫
 ピーター・サトクリフ▼ヨークシャーの切り裂き魔
 ナイフという名のペニスが、人体を破戒する  真木貞夫
 ウィリアム・ハイレンズ▼「殺人者」を飼う十七歳
 お願いだから、誰か僕を捕まえてくれ  真木貞夫
 日高広明▼売春婦四人を殺害したタクシー運転手
 冥土までワンメーター、一人につき五万円  嘉納三明
 マーダー・フリーク座談会
 元ネタは殺人鬼  平山夢明×柳下毅一郎×ジーコ内山

PART2 お前を食べたい。犯したい。
 アンドレイ・チカティロ▼ロストフの森の切り裂き魔
 寒く赤い国に潜む切り裂き魔  真木貞夫
 アルバート・フィッシュ▼倒錯性欲カニバル・キラー
 身体に錆びた針を埋め込んだ男  真木貞夫
 ジェフリー・ダーマー▼アメリカ未曾有のカニバル・キラー
 死体だけが友だち、死体だけが裏切らない  真木貞夫
 ダグラス・クラーク&キャロル・バンディ▼サンセット大通りの殺人鬼
 忌まわしきドライブ・デート  真木貞夫
 アドルフォ・コンスタンゾ▼ブードゥー教の魔人
 性器と脳髄と心臓を、生きたまま悪霊に捧げよ  真木貞夫

PART3 すべてはセックスのために
 大米龍雲▼大正の女犯坊
 拙僧は尼僧を犯す容貌怪異な破戒僧なり  高梨正樹
 小平義雄▼戦後を生きたセックス殺人犯
 挿入の瞬間、首を切り落とされてもかまわない!  高梨正樹
 吹上佐太郎▼明治・大正の少女連続殺人犯
 エロトメニアは復讐するように少女を殺す  前坂俊之

PART4 「怒り」が暴発するとき
 都井睦雄▼津山三十三人殺傷事件
 今宵、この村を根絶やしにする  前坂俊之
 チャーリー・スタークウェザー▼怒れるティーンエイジャー
 これから、二人で、世間をぶち壊しに  真木貞夫
 リチャード・スペック▼マドンナ・コンプレックス殺人鬼
 「聖女」と「悪女」に取り憑かれた男  真木貞夫
 ハワード・ウンルー▼アメリカ初の大量乱射殺人犯
 血まみれのマザーズ・ボーイ  真木貞夫
 塚田明(仮名)▼混血少年による連続強盗強姦事件
 母さんはどうして僕を捨てたんだ!  相前兼一
 殺人電波映画『セブン』熱血分析
 「聖職者」は人を殺して救済する  平山夢明

PART5 邪魔ならば消せ!
 栗田源蔵▼死刑判決を二度受けた強盗強姦殺人鬼
 死刑囚は今夜も小便を漏らす  香渡有穂
 鎌田安利▼連続女性バラバラ殺人事件
 名を隠し、騙り、過去を捨て去った男  馬場太郎

EPILOGUE
 破滅へと至る病「過剰優越」と「ナルシズム」
 知性は暴走する  平山夢明



 副題に「血と精液にまみれた殺人鬼たち」とある。
 人肉食、屍体嗜好、小児性愛、加虐嗜好(サディズム)被虐嗜好(マゾヒズム)――「殺し」に淫した男たちが、刺し、殴り、なぶり、抉り、くびり、犯し、ねぶり、噛み、嚥下する!
と表紙に書かれている。各ページの脇には小さな文字で、連続殺人に関する豆知識や発言等が掲載されている。
 様々な嗜好を持ったアメリカや日本などの殺人鬼を紹介している。内容はいずれもタイトル通り「身の毛もよだつ」殺人ばかりであり、気の弱い人なら夜に眠れなくなること間違い無しである。
 人はなぜここまで残酷になれるのか。それともこれは、人が持つ本能の一つであるのか。彼らに赦しは、癒しは必要なのだろうか。簡単に答が出るものではないだろうが、少なくとも「異常」というひとことで切り捨ててはいけない話なのだと思う。
 事実関係に誤り(小平の連続殺害人数は10人ではなく7人である)や見解の相違(ディザルボは本当に絞殺魔だったのか)があるものもあるが、殺人鬼たちを知るにはお手軽な一冊と思われる。

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