タイトル通り、世界中の極悪人のエピソードを集めた本。
第一部は凶悪事件を引き起こした犯人・事件を1,2ページで紹介。抜粋程度でしか書かれていないが、それなりにまとまっている。疑問点なども挙げており、たとえば高橋お伝の事件は、世間でいわれている犯行のほとんどは無罪で、残り1件も過失致死罪ではないかと書いている。
第二部、第三部は世界史・日本史上の歴史的人物の極悪ぶりを書いたもの。もっとも、歴史上に残る人物は、ほとんどが一度は悪に手を染めているわけであり、ここに書かれた人物は悪がたまたま表に出ただけでしかないと思う。主家乗っ取りなどは当時は当たり前のことであった。権力闘争に敗れれば、敗者は常に悪人である。
第四部は、歴史上に残る犯罪者……というか、残虐非道な行為を行った有名人を取り上げている。もちろん、ごく一部だが。
明治大正昭和における社会欄の極悪人、独裁者、好色色魔、犯罪者、毒婦、黒幕、裏切り者、反逆者。いずれも立場を変えれば正義なのである。鼠小僧次郎吉は、お上から見たら盗人であるが、庶民から見たら義賊のヒーローである(実際は違ったが)。由比正雪は徳川幕府から見たら反逆者であるが、成功すれば当時の浪人逼迫事情を救った英雄と呼ばれていたかも知れない。新選組は暗殺集団であったかも知れないが、江戸幕府から見たら正義であり、忠実な僕であった。正義と極悪は紙一重である。
一人一人に割かれているページは少ない。だから、事件や人物を深く知りたいという向きには少々物足りない。しかし、彼らの概要を知るには充分であるし、極悪人カタログとしては適当な分量だろう。“この世の悪漢たちの人生を読めば、人間の心奥が見えてくる”は大げさだが。
目次は下。
第一部 事件、その極悪なる背景
愛人刺殺事件=高橋お伝
鬼熊殺人事件=岩淵熊次郎
愛人の局部切り取り事件=阿部定
寿産院事件=石川ミユキ
女性連続殺人事件=小平義雄
バー・メッカ殺人事件=正田昭
スチュワーデス殺人事件=ベルギー人神父
幼児誘拐殺人事=小原保
連続殺人事件=西口彰
連続女性誘拐殺人事件=大久保清
豊田商事会長刺殺事件
<何が彼らをそうさせたのか……最悪事件報告書>
悪魔ばらいバラバラ殺人事件
札幌ホテル偽装自殺事件
愛犬家連続殺人事件
女子高生コンクリート詰め殺人事件
美容師バラバラ殺人事件
スナックママ連続殺人事件
首なし女性焼死体事件
<タイプ別殺人事件……悪夢の凶器事典>
自動車/硫酸/排気ガス/注射/ストッキング/接吻/ウイスキー/マッサージ/夢/ネズミ捕り/転落/ボート
第二部 極悪人たちの世界秘史
<独裁>
殷の紂王=残忍きわまる炮烙の刑
秦の始皇帝=書を焼き、学者を生き埋めにした
後漢の董卓=略奪と無頼の野獣ぶり
皇帝ネロ=極悪非道の代名詞となった
ヒトラー総統=大量虐殺と侵略の鬼
■怪僧・道鏡=日本三大悪人といわれた絶倫王
<黒幕>
蘇我入鹿=飛鳥時代の逆臣
田沼意次=日本歴史の三大悪!?
まむしの斉藤道三=油屋から国盗りで城主に
岩倉具視=維新の悪公家
<伝説>
盗跖=世界一の大泥棒
熊坂長範=牛若丸に討たれて名を売った
日本左衛門=華麗なる!?盗賊の謎
鼠小僧次郎吉=江戸の怪盗は義賊にあらず
■明智光秀=主殺しの極悪人、三日天下
<無法>
河内山宋春=男一匹、大名を恐喝した
新選組=幕末を駆けぬけた殺人集団
ビリィ・ザ・キッド=薄笑いを浮かべて射殺する男
アル・カポネ=梅毒で死んだ暗黒街の帝王
第三部 色と野望の極悪人
<反逆>
朱全忠=狡知で帝位に昇りつめた
由比正雪=徳川幕府の転覆を図った
宇喜多直家=主家・肉親も裏切った謀殺の将
■小早川秀秋=裏切りの極悪人として歴史に名を刻んだ
吉良上野介=天下に悪名を売った
<悪女>
日野富子=応仁の乱の原因を作った
北条政子=女の嫉妬心と執念に生きた
絵島=大奥スキャンダルのヒロイン
江青=中国を大混乱に陥れた女帝
呂后=威夫人を人豚にして便所に投げこんだ
<色魔>
アンリ四世=権力と女漁りに精を出した
怪僧ラスプーチン=聖を説き性を説いた
アレクサンドル・デュマ=三十人以上の愛人を擁した
ヴィクトル・ユゴー=女千人斬りの大文豪
■徳川家斉=側室十六人、愛人四十人の性生活
第四部 地獄に落ちた極悪絵図
<殺人鬼>
エリザベート・バートリー=若い女の地で肌を磨いた
ヴラッド伯爵=血生臭いドラキュラの生涯
ジル・ド・レ=降魔術の犠牲者数知れず
モンテスパン夫人=女の恨みを毒殺ではらした
切り裂きジャック=謎のばらばら殺人事件
■ボルジア家の人=残忍狡猾の限りをつくした
西洋極悪刑罰拷問絵図
日本極悪刑罰拷問絵図
極悪座談会「世界一の極悪人は誰だ」
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