近藤昭二『捜査一課 謎の殺人事件簿』
(二見書房 二見WaiWai文庫)


発行:1997.11.25



 事件には謎がつきものである。事件の真実・真相はたいていの場合、被害者と犯人しか知らない。ときには犯人も無我夢中、いわゆる「心神喪失」の状態で犯行が終始することもあり、当の犯人にすらわからないこともある。警察、検察官、裁判官も事件の真相を明らかにしようとするが、すべての真相を明らかにすることは容易ではない。
 本書は未だに謎が残る八つの事件について、真相は一体なんなのか、読者に語りかけるために、事件の始めから犯人逮捕、さらには裁判判決、ときには再審無罪判決までを簡単に記したものである。
 紹介される事件は以下。

 ・カクタホテル変死事件(1967年)
 ・鈴ヶ森の女将殺し(1915年)
 ・築地八宝亭一家惨殺事件(1952年)
 ・徳島ラジオ商殺害事件(1953年)
 ・荒川放水路バラバラ殺人事件(1952年)
 ・小平事件(1946年)
 ・横須賀線爆破事件(1968年)
 ・「ピス健」事件(1925年)

 文庫の性質上、そしてページの制約から、事件の紹介は簡単なものになっており、事件の奥底まで突っ込んだものではない。その分、読者が想像を巡らしやすい構成になっており、そういう意味で作者の意図は成功しているとはいえる。ただ、簡単な紹介に終わっているため、事件の本質を知りたいという意味では不満が残る。
 こういう本から事件の本質を調べることに興味を持ってくれればそれでよい、そんな本である。

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