知識が肥大し、論理の欠如した世紀末に生きる私たちは、いつも毒物や獰猛なウイルスに囲まれて暮らしているのである。
これは、日本人の毒物に対する無防備さに、警鐘を鳴らす書である。
と同時に、その手口、被害状況、緊急対応策をも記した、世紀末に生き残るための書である。(まえがき「世紀末に生き残る」より抜粋)
国民自衛研究会は、以下のメンバーで組織されている。加藤康夫、成田正、松田美智子、森伊知郎、黒木純一郎。不勉強で申し訳ないが、松田美智子以外のメンバーの略歴は知らない。
本書は以下の章で構成されている。
・第一章 青酸系毒物
・第二章 農薬系毒物
・第三章 化学系毒物
・第四章 ガス系毒物
・第五章 自然毒物
・第六章 身近にある毒物
毒物、特に厚生省と薬品メーカーの利益優先の指導により、簡単に手に入る毒物なども紹介されており、日本社会に警鐘を鳴らしていると言えるが、逆に犯罪者に毒殺手段を教えている感もあるように見えるのは気のせいだろうか。もっとも、この手の本を作るためには仕方のないことかも知れない。
中身は至極真面目な本である。毒物を使用した事件の紹介。使用された毒物の特徴。毒物の化学的な組成、成分。万が一呑み込んだときなどの対処方法。それに毒薬に関する本、文献などの紹介と、この手のカタログ本にしては物凄く固く、勉強になる本である。先にも書いたが、既に他の国では禁止されている薬品が日本では未だに堂々と売られているなどと、現代日本社会、そして国民へ警鐘を鳴らしているという点でも、他のカタログ本と違うところである。
“国民自衛研究会”という名前が仰々しいが、お薦めの本である。ただし、巻末の「毒薬小説リスト」だけはお粗末。
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