表表紙にある「ミレニアム版・日本の黒い霧」とあるように、昭和後期、平成の未解決事件を紹介している。グリコ・森永事件や赤報隊事件のような警視庁広域重要指定事件の犯罪から、金大中拉致事件、中川一郎怪死事件、共産党議長宅盗難疑惑など政治の暗黒史に触れた事件、住銀名古屋支店長射殺事件などの闇経済に絡む事件、八王子スーパー強盗殺人事件のような迷宮事件、そして疑惑の政界裏面史と、かなり深く突っ込んだ内容になっている。とはいえ、さすがの宝島社でもやばすぎるのか、突っ込みきれないネタが多いのは残念である。特に政界、財界が絡んだ事件は物証が非常に乏しく、なおかつ証言を取りにくい(某政治家の秘書、運転手が謎の自殺を遂げたりするケースもある)ため、どうしても憶測でしか書くことが許されず、説得力に乏しい。
暴力団・右翼も含め、警察・検察局は危ない世界に首を突っ込むようなことは先ずしない。あくまで今の日本という国の秩序さえ保たれればよいのだ。だからこそ、一般人を取り締まる。
日本の警察の検挙率は優秀であるが、だからといってすべての事件を解決してきたわけではない。それがグリコ・森永事件などを代表とする迷宮入り事件である。警察という体制そのものにひずみが出始めた、最初の事件ではないだろうか。今こそ、警察機構を変革させるときである。我々はもはや迷宮入り事件など見たくない。悪いことをしたものは罰せられる。そういう社会を望んでいるわけである。21世紀は、このようなアンダーワールドの世界がなくなることを望みたい。
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