作家佐木隆三と毎日新聞西部本社編集局長兼論説委員永守良孝が毎月様々な事件について対談したものを纏めたもの。1999年10月から毎月1回、毎日新聞(西部版)に掲載された対談「マンスリー事件簿」に加筆、注記を加えている。
どちらも事件ウォッチャーとしてベテランであるため、様々な事件に対し、特に偏ることなく論じられており、素直に読むことが出来る。ページ数が限られているせいか、コンパクトに纏まりすぎていて、逆に物足りない面がある。オウム麻原裁判における弁護士引き延ばし戦術、警察不祥事、増加する通り魔や少年犯罪、少年実名報道、そして少年法改正など。この二人だったらもっと突っ込んだ話が出きるだろうにと思うと、実に惜しい。“人権派”などと称する輩に比べたら、よっぽど説得力のある意見を議論しているのに、ページ数が少ないため、浅く触れたままで終わってしまっている。勿体ない。それでも我々は、彼らの対論に耳を傾ける必要がある。様々な事件、そして犯人に接してきた彼らだからこその意見がここにある。ただ空論と理想だけで「人権」を訴えたり、「厳罰」を訴えたりする研究家、専門家などの声が空虚なものになってくる。
警察不祥事、少年犯罪、通り魔、保険金殺人、ストーカー……どんどん事件が凶悪化している現代を見ると、本当に21世紀をまともに過ごすことが出来るのか、不安になってくる。様々な組織・体制を一度解体し、組み立て直す必要があると思うが、日本人って民衆が革命を起こしたりすることなく、ただ上意下達を守っているばかりの人種だから、無理だろうと思うと、悲しいものがある。
この対論、現在も連載中である。ぜひとも続けてほしい。できればもっとページを割いて対論してほしい。そう思わせる好著である。
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