ヒトはなぜヒトを殺すのか? 快楽殺人、バラバラ殺人、ロリコン殺人、スワップ殺人等々の犯罪に肉薄し、さらに大久保清事件の捜査概要や供述調書、獄中手記を通じて大量殺人の深層を洞察する。(カバー表表紙より)
犯罪ノンフィクションものでは第一人者といえる作者が、様々な事件における印象を独自の視点から書き記したもの。タイトルこそ“殺人評論”となっているが、評論という程堅苦しいものではない。逆に事件を咀嚼して、読みやすくしている。収録された事件も主に性的感情を動機としたものが中心となっている。
第一のパートでは新聞や週刊誌の報道で知り得た事実から、作者の印象をまとめたもの。
第二のパートでは精神医学者の鑑定も援用している。
第三のパートは、大久保清に関する資料だけで成り立っている。「事実の意味が現代ではものすごく多様化してきた。大久保清の事件を素材に事実の三つの形を提示したい」という目的がここにある。誰しもが「真実」を求めて事件を追うが、一体何が「真実」なのか、誰にもわからなくなっているというのが現実ではないだろうが。たった一つの答というものが存在しない時代。ここにあるのは、一つの実験である。
ただ、第一、二のパートと第三のパートでトーンがだいぶ異なるため、本の内容にばらつきが生じてしまっているのも事実であり、やや残念である。
目次は以下。
I
岐阜・教え子焼き殺し事件
函館・夫による妻のバラバラ殺人
名古屋・実父による保険金殺人事件
新潟・ラブホテル殺人事件
北海道・えい児九人連続殺人事件
神戸・メッタ刺し殺人事件
下関・無差別殺人事件
II
渋谷・淫楽殺人事件
少年マニアの死体愛好事件
名古屋・連続ロリコン猥褻事件
外務省高官によってホモにされた男の妻殺し
茨城・スワップ殺人事件
III 強姦魔・大久保清
はじめに
第1部 『大久保清事件捜査概要』
第2部 供述調書
第3部 大久保清心理状態鑑定書
第4部 大久保清の獄中手記『訣別の章』
あとがき
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