作品名 | エロス もう一つの過去 |
初 出 | 1971年、『週刊読売』連載。1971年11月、河出書房新社より単行本刊行。 |
粗 筋 |
ある大女流歌手の歌手生活三十七年記念リサイタルの<現在>と、その時点から三十七年前の昭和八年、東北から十八歳の少女が上京してくる<過去>。その過去に、あり得たかもしれない<もう一つの過去>の介入が、やがてドンデン返しとして、<現在>の意外性を浮き彫りにする。「もしもあのとき……していたら」という仮定法を適用して、二つの過去をパラレルに移動させた傑作長篇。 (粗筋紹介より引用) |
感 想 | 現在と過去が交互に語られるうちに、パラレルであるもう一つの過去が織り込まれていく。古典的な手法を用いながらも、戦前から戦時中を綿密に描写しながら、ドンデン返しにつなげていく。まあ、見事としか言い様がない。「もしも」の手法を用いながら読者を驚かせるその手法はやはりすごい。時間にこだわった広瀬正しいらしい作品。ただ、タイトルだけはもうちょっとわかりやすいものにした方がよかったのではないか。 |
備 考 | 1971年下半期、第66回直木賞候補作。 |