作品名 | 鏡の国のアリス |
初 出 | 1972年6月15日、河出書房新社より書き下ろし刊行。 |
粗 筋 | 美容整形医である私のところに、木崎浩一という青年が性転換したいと相談してきた。その理由を語る、木崎の奇妙な経験。半年前、風呂屋の男湯につかって目を開けたら、周りにいたのは女姓ばかりだった。慌てて風呂を出て、風呂屋の親父とともに外へ出ると、左右が逆転していてアパートは消えていた。そしていずれも鏡文字になっていた。木崎は、左右が逆転した左利きの世界に来ていることがわかった。 |
感 想 | ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』と同じく、鏡の世界に入りこんだ青年の悪戦苦闘を描いた物語。木崎が居候する学者、朝比奈の説明がくどいのが難点だが、日常世界で鏡の国に来たらどうなるかという展開はありきたりのようで面白い。へんてこりんと言えばへんてこりんな話でもあるのだが。ただ、結末に至る展開はつまらない。恋愛譚ではなく、もっとSFチックに描けなかったのだろうか。 |
備 考 | 1973年、星雲賞日本長編部門受賞。 |
作品名 | フォボスとディモス |
初 出 | 未発表遺作。1977年8月26日、『広瀬正・小説全集4』(河出書房新社)収録。 |
粗 筋 | 火星往復から3年ぶりに帰ってきた尾崎健一大尉とユミは、始めて結ばれた。次の日の朝、上司である山脇大佐から、健一とそっくりの人物が、同じ形のロケットで帰ってきたとの報告があった。どちらかが、火星人のスパイらしい。 |
感 想 | 何とも言い難い作品。『鏡の国のアリス』と同じ本に収録されたのも分かる気がするが。 |
備 考 |
作品名 | 遊覧バスは何を見た |
初 出 | 『小説宝石』1971年12月号掲載。 |
粗 筋 | 1925年12月20日、東北から来た若い夫婦の妻が遊覧バスに酔い、横町にある達吉の店の前で途中下車した。妻を介抱する達吉たち。12年後、夫婦は子供を連れて達吉の店を訪れた。 |
感 想 | 二つの家の交流と、戦前から戦後に至る移り変わりを書いた小品。どことなくセンチメンタル。 |
備 考 |
作品名 | おねえさんはあそこに |
初 出 | 1963年1月、『宇宙塵』63号掲載。 |
粗 筋 | ハルオは小さなお父さんとお姉さんに育てられていた。ハルオはお父さんが作った家の中から、一歩も外へ出ることがなかった。 |
感 想 | 小品としか言い様がない作品。初期のSFならではかな。 |
備 考 |