| 作品名 | 墓標なき墓場 |
| 初 出 | 1962年1月、光風社より書下ろし刊行。 |
| 粗 筋 |
昭和33年、夏。北海道。未明の北の海に殿村水産所属の運搬船、天陵丸が沈んだ。乗組員6人は全員死亡。その朝、花崎港に入港した一隻のサンマ船が、岸壁に衝突した。海難事故と不審なサンマ船の衝突事故に疑問を抱いた不二新報釧路支局長江上武也は独自の取材を進めた。単なる事故か、それとも事件か……。だが、何者かの策謀によって江上は釧路を逐われる。それから3年。かつての関係者が次々と疑惑の死を遂げる釧路の街に、江上は帰ってきた――。日本ハードボイルドの黎明期を駆け抜けた幻の作家・高城高。霧にけぶる北の港町を舞台に描き上げた唯一の長編が、いまよみがえる! (粗筋紹介より引用) |
| 感 想 |
日本のハードボイルド小説の嚆矢であり、日本ハードボイルド三羽烏の一人でもあった(残り二人は大藪春彦と河野典正)高城高の、当時唯一であった長編ハードボイルド。単行本で出版された後は、全集が出るまで一度も復刊されなかった。 解説の新保博久が記している通り、高城高の短編に多く見られる「現在のプロローグから過去に遡り、現在に戻ったところからまた物語が続く時間的構成」である。作者自身は「短編と違って出来はよくありません。私は短編が好きなのですが、作家として立つには長編が書けなければなりませんが、どうもその方の才能はないと感じてしました」と期している。 新保博久が「物語も描写も過剰な説明を排して簡潔、しかし素っ気ないわけではなく、一種の詩情をたたえているのが一番の美点」と高城作品について述べているが、これまた解説で記している通り、あまりにも簡潔なので、なぜ江上が真相に辿り着いたのかわからないうちに、いつの間にか犯人と対峙している。江上と妻の八重子が語り合わなくてもお互いをわかっているのはいいのだが、それを作者と読者の間に求められてもちょっと困ってしまうというか。 釧路の寒さを直接描くことなく、景色と人の描写で季節を感じさせる筆の巧さはさすがである。ただあまりにも言葉を削り過ぎている。できれば江上の再生について、もう少し心情を描いてもよかったのではないか。最もそれを排したのが作者の求めるハードボイルドと言ってしまえばそれまでかもしれないが。 もう一、二作ぐらい、この時代の作者の長編を読んでみたかった。そうすればまた作者の評価も変わって来ただろうし、筆を折ることがなかったかもしれない。 |
| 備 考 | 処女長編。 |