作 者 |
鮎川哲也(あゆかわ・てつや) 1914年東京生まれ。昭和31年『黒いトランク』が長篇募集に応じ入選し、本格的にデビューした。徹底して本格推理にこだわって創作活動を続ける。その一方でアンソロジーの編集や新人の発掘にも情熱を傾注する。(作家紹介より引用) 2001年、第1回本格ミステリ大賞特別賞受賞。2002年没。同年、第6回日本ミステリー文学大賞特別賞受賞。 |
作品名 | 『憎悪の化石』 |
初 出 |
昭和35年11月、講談社より刊行。純文畑の作家と推理小説の専門作家とに長編の書き下ろしをさせて、共作シリーズをやろうという企画の第一回発売。三浦朱門『地図の中の顔』とともに出版された。この企画は途中で打ち止めとなった。純文学作家側の執筆は三浦のみに終わった。
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粗 筋 |
婚約中の女性が動機不明の自殺を遂げる。一方、熱海で殺された男の遺留品から、この男性と女性は不穏な関係にあったことが判明した。男はあちこちで恐喝をはたらいていたのだ。12人の被害者達に嫌疑がかかるが全員のアリバイが成立。鬼貫と丹那がまたもやこの難事件を引き継ぐ。(粗筋紹介より引用) 鮎川哲也長編推理小説全集第2巻(立風書房)に掲載された「創作ノート」も収録。『りら荘事件』と『憎悪の化石』について書かれている。 |
感 想 |
『黒い白鳥』とともに鮎川の代表作ともいわれている作品。作品そのものの骨格は『黒い白鳥』と変わらない、時刻表を用いたアリバイトリックもの。事件の謎を解くのが鬼貫と丹那であることも同じ。動機の絡め方に違いがあるものの、読んだことのない人から見たら大同小異であると言われるのかもしれない。読んだ人からすると、同工異曲なんだよと言い返しそうだが。 読者からしたら同情してしまいたくなる動機は『黒い白鳥』とそれほど変わらない。殺される人物にはそれなりの理由がある、というのが作者の主義だったのかもしれない。 『黒い白鳥』を面白いと思う人なら、この作品も十分楽しめるだろう。逆に面白いと思わなかった人からしたら、読んでも無駄であるかもしれない。私は面白いと思わなかったが。 タイトルの付け方はどちらもうまい。その点については感心する。 |
備 考 |
第13回(1960年)受賞。
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