日本推理作家協会賞受賞作全集第13巻
『海の牙』水上勉



【初版】1995年11月15日
【定価】640円(税込み)
【解説】山村正夫
【底本】不明(記載なし)

【収録作品】
作 者
水上勉(みずかみ・つとむ)
 1919年、福井県生まれ。松本清張作品に刺激されて昭和34年から推理小説を発表する。『雁の寺』で36年直木賞を受賞。『飢餓海峡』をへて『五番町夕霧楼』『越前竹人形』で文壇的地位を確立。近作に『骨壺』。(作者紹介より引用)
 2004年没。
作品名
『海の牙』
初 出
 1959年12月、『別冊文藝春秋』に「不知火海沿岸」(120枚)のタイトルで発表。雑誌発表文を書き換え、約300枚を書き足して1960年4月、河出書房新社より刊行。
粗 筋
 熊本県水潟市に発生した恐るべき「水潟病」。原因は工場排水中の有機水銀と推定されたが、調査に訪れた東京の保健所員結城が行方不明に。大学教授とその助手と称する怪しい二人組と、結城の妻郁子の不審な行動……。探偵好きの医師が刑事とともに調べはじめる。問題作を再び。(粗筋紹介より引用)
感 想
 都市名や病気名こそ仮名だが、「水俣病」の事を指しているのは読めば誰でもわかる。この作品は、水俣病を告発した初めての小説らしい。形こそ推理小説となっているし、連続殺人事件も起きるが、この作品の主題が「水俣病」にあることは一目瞭然である。推理小説という形を取ることにより、社会的な問題を一般に広く知らしめることができることを実践した社会派推理小説である。
備 考
 第14回(1961年)受賞。

【日本推理作家協会賞受賞作全集(双葉文庫)】に戻る