作 者 |
中島河太郎(なかじま・かわたろう) 1917年鹿児島市生まれ。都立高校教諭をへて現在は和洋女子大学教授。終戦直後より推理小説評論を手掛けてきた。その書誌的研究の成果により昭和30年第一回江戸川乱歩賞を受賞した。著書編書多数。(作家紹介より引用) ミステリー文学資料館初代館長。1999年、第2回日本ミステリー文学大賞受賞。同年没。 |
作品名 | 『推理小説展望』 |
初 出 | 『推理小説展望』(東都書房 世界推理小説体系別巻)1965年1月刊行。 |
粗 筋 |
緻密な考証と公平な視点によって、推理小説をその期限から詳説。松本清張の登場によりジャンルとして画期的な展開を示した、昭和30年代の情勢を的確に検証し、次代の推理小説界を展望していく。刺激的かつ網羅的なこの大冊はファン必携の推理小説の本質を知る研究書である。(粗筋紹介より引用)
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目 次 |
第一部 推理小説講座 第一章 探偵小説の定義 第二章 探偵小説の発生 第三章 本格と変革 第四章 推理小説と探偵小説 第五章 推理小説の歴史 第六章 日本推理小説界展望 第二部 海外推理作家事典 附録 推理小説年表 |
感 想 |
講談社の子会社であった東都書房から1962〜1964年に出版されていた「世界推理小説体系」全24巻の別巻として出された一冊。内容は目次を見ればわかるとおり、第一部が推理小説講座、第二部が海外推理作家事典となっている。 第一部は、推理小説の基本的知識をまとめたもの。ページ数が少ないことは残念だが、多くの出典を付してまとめた文章は、今読んでもそれなりに参考となるだろう。といってもせいぜい第四章ぐらいまでだが。第五章はあまりにも駆け足すぎた。作者による推理小説史は後にライフワークといえる『日本推理小説史』全三巻(東京創元社)にまとめられるから、そちらを読んだ方がよい。第六章は昭和31年〜39年の推理小説界を駆け足で語ったもの。こんなことがあったんだな、程度には読めるだろう。正直、「展望」と付けるほどの内容であったかどうかは疑問であるが。 第二部の事典は、海外推理小説作家140人以上を五十音順に並べてプロフィール等をまとめたもの。第1回江戸川乱歩賞受賞作である『探偵小説事典』や後に出た『ミステリ・ハンドブック』(講談社 現代推理小説大系別巻)でも似たようなことをやっているが、こういうことができるのはそれだけの情報を手元に収拾し、かつその内容が周囲から評価されていたからであろう。1965年にまとめられたものだから、データとしては古いものも多いが、逆に今ではあまり取り上げられることのない作家などのプロフィールも収録されているため、併用本として十分使用に耐えうるできとなっている。 評論で乱歩賞・協会賞を唯一ダブル受賞した中島河太郎。しかし評論は時事的なものもあって、なかなか読むことができなかった。全集のおかげでこうして復刊されたことに感謝したい。 |
備 考 |
第19回(1966年)受賞。
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