作 者 |
陳舜臣(ちん・しゅんしん) 1924年、神戸市生まれ。1943年大阪外事専門学校インド語学科を卒業。61年に『枯草の根』で江戸川乱歩賞。その後の長篇も本格的構成を取りながらエキゾティズムに溢れ、69年に『青玉獅子香炉』で直木賞。 (作者紹介より引用)
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作品名 | 『孔雀の道』 |
初 出 |
『神戸新聞』など「七社会」系の地方紙に昭和43年5月から連載。昭和44年、講談社から刊行。
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粗 筋 |
英国人の父と日本人の母とのあいだに生まれた日英混血女性ローズ・ギルモアは、13年ぶりに日本の地を踏んだ。5歳のとき神戸で起こった母の焼死事件の真相を知ろうとしたが、関係者の反応は不可解なものだった。やがて、亡き父を巻き込んだ戦前のスパイ事件の影が浮かび上がる。 (粗筋紹介より引用)
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感 想 |
混血女性であるローズが、日本へ帰国する際の貨客船に同乗していた元高校教師の中垣照道と仲良くなり、二人で過去の事件の謎を追いかける。二人が恋仲になるのは、ありふれたパターンかも知れない。現在に起きた事件の真相に過去の事件が絡んでいるというのもありふれているかも知れない。解説であるように、ローズが日本と西欧の文化や生活習慣の違いを自問自答する趣向が当時としては目新しかったかも知れないが、今読む分にはそれほど注目すべき点でもない。しかしそういう過去の作品であるという点を抜きにしても、充分面白い作品であるというのは、巧みな構成と豊かな物語性を兼ね備えた作品であるからだろう。 まったく異なるタイプの2作品ではあるが、『玉嶺よふたたび』も『孔雀の道』もどちらも傑作。この両作品に協会賞を与えた判断も良かった。 |
備 考 |
第23回(1970年)受賞。
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