作 者 |
森村誠一(もりむら・せいいち) 1933年、埼玉県生まれ。青山学院大学英米文学科を卒業。ホテル勤務ののち67年に『大都会』を刊行。69年『高層の死角』で江戸川乱歩賞を受賞。『人間の証明』に登場した個性的な棟居刑事が近年大活躍。 (作者紹介より引用)
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作品名 | 『腐蝕の構造』 |
初 出 |
1972年、毎日新聞社より刊行。
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粗 筋 |
北アルプス上空で「操縦不能」の通信を最後に旅客機が消息を絶つ。久美子の夫・雨宮征男も乗っていたはずだが、何故か彼の遺体は発見されなかった。彼が開発した濃縮ウラン製造法が関係しているのか? さまざまな妨害を受けながらも、久美子は絶望的な調査を続けるのだった。 (粗筋紹介より引用)
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感 想 |
協会賞を取ったという意味では森村の代表作かも知れないが、他の作品と比べると長すぎるという印象が強い。松本清張以降の社会派推理小説を今も書き続ける貴重な作家である森村が、ある意味社会派推理小説の王道を歩くと宣言したような作品ではある。ただ、力が入りすぎているという印象は否めない。ホテルや山といった、初期作品によく取り上げた題材も入っているし、密室状態での殺人などといったトリック、それにフーダニットなどといった本格ミステリの趣向も盛り込みすぎ。贅沢という見方もあるだろうが、やはりこれは「あれもこれも入れている」という感がある作品である。力作とは言えるが、傑作とは言えない。森村だったら他にも傑作は色々あるし、そちらを読んだ上で本作を読んでみるのもいいかも知れない。
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備 考 |
第26回(1973年)受賞。
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